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赤字・債務超過の決算で経審を受けるか見送るか|Y点・X2・許可の確認順(実測つき)

決算が赤字の年は、経審の結果がどこまで下がるのかを確かめてから、受けるかどうかを決められます。売上高経常利益率・営業キャッシュフロー・利益剰余金・X2の平均利益額が、それぞれ何点まで動くかを、通知と当サイトの実測で整理します。

国土交通省の通知・ガイドライン
編集:建設経営ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

経営事項審査(経審)は、公共性のある施設や工作物の建設工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が、受けなければならない審査です(建設業法第27条の23第1項)。赤字の決算でも受けること自体はできます。迷うのは「点数がどこまで下がるか」と「受けない期間をどう扱うか」の2点です。この記事は、赤字・債務超過の年に確かめる項目を、影響の大きい順にまとめたものです。受審の可否や経営の判断そのものは、自社の状況で決める事項で、この記事は個別の相談を受け付けていません。

まず確かめる2つの前提

1つ目は、公共工事を直接請け負う予定があるかどうかです。経審が義務になるのは、建設業法第27条の23第1項が定める、公共性のある施設・工作物の工事を発注者から直接請け負おうとする場合です。民間工事だけを受注する会社には、この条文による受審義務はありません。

2つ目は、見送ったときの空白期間です。経審の結果で公共工事を請け負える期間は、審査基準日から1年7か月です(有効期間の逆算で整理しています)。受けないままだと、有効期間が切れてから次の結果が出るまで、公共工事を直接請け負える結果がない期間が生じます。審査基準日は決算日で、受審する結果にはその決算の数字が使われます(審査基準日の考え方)。

出典: 建設業法(e-Gov法令検索)第27条の23第1項。取得日2026-10-11。

Y評点で赤字が効く3指標と下限

Y評点(経営状況)は8指標から求めます。このうち、赤字の決算が直接動かすのは、売上高経常利益率・営業キャッシュフロー・利益剰余金の3指標です。通知は3指標とも下限を定めており、下限より悪い数字は下限のところで止まります。

赤字で動くY評点の指標のうち、実測のある2指標の下限と、1指標だけを動かしたときの幅(このサイトの計算機で試算)
指標下限Y評点の幅モデルケースのP点の幅
売上高経常利益率-8.5%534点〜598点(64点)686点〜699点(13点)
利益剰余金-3.0(-3億円)578点〜874点(296点)695点〜754点(59点)

幅は、他の指標を各記事の計算例のまま据え置き、その指標だけを下限から上限まで動かした値です。実際の会社では複数の指標が同時に動くので、幅を足し合わせた数字にはなりません。※正式な評点ではありません。

3つ目の営業キャッシュフローは、審査対象年と前審査対象年の平均値に上限15.0・下限マイナス10.0が定められています(単位は億円。1期の赤字が、もう1期の数字で平均されます)。

表から読めるのは、赤字1年分が直接かかる売上高経常利益率は、下限に届いても64点(Y評点)にとどまるということです。差が大きいのは、赤字の累積で下がる利益剰余金のほうです。1期の赤字は経常利益率に出ますが、利益剰余金には赤字が何期も積み重なります。

X2は2期平均で、0円未満は0円

X2は、自己資本額の点数と平均利益額の点数の平均です。平均利益額は、営業利益に減価償却実施額を加えた額の、審査対象事業年度とその前年度の2期平均で、通知は平均が0円に満たない場合は0円とみなすと定めています。自己資本額も同じく、0円に満たなければ0円です。

  • 赤字の年があっても、もう1期の利益で相殺されます。近畿地方整備局の手引きの記入例では、営業利益がマイナス4,871千円の期と11,986千円の期の平均で、利払前税引前償却前利益の平均がプラスになります(平均利益額の記事)。
  • 2期とも大きな赤字で平均がマイナスになっても、X2の平均利益額の点数は0円の点数で止まり、さらに下がることはありません。
  • X2の重みは5指標の中で最小(0.15)です。自己資本額・平均利益額を0円から50億円まで動かしても、P点の差は58〜70点にとどまります(X2の解説)。

つまりX2は、赤字の年でも下がり方に底がある指標です。赤字で大きく動くのはY評点のほうで、赤字の影響を見るときはY評点から先に確かめます。

債務超過になると何が変わるか

純資産の合計がマイナスの債務超過では、自己資本額がX2で0円とみなされる一方、Y評点の自己資本対固定資産比率と自己資本比率はマイナスのまま計算されます。債務超過の会社の経審評点の実測(モデル会社)では、自己資本0円から-6,000万円までのP点は656点から622点へ34点下がり、その下がり幅はすべてY評点(498点から329点)から来ています。X2は493点のまま動きません。

この数字は、他の指標を据え置いたモデル会社の試算で、正式な評点ではありません。Y評点は登録経営状況分析機関の分析結果通知書の値が優先されます。

許可の財産的基礎は別の物差し

経審の点数とは別に、建設業の許可にも財産的基礎の要件があります。国土交通省の建設業許可事務ガイドラインは、特定建設業の許可(法第15条第3号関係)について、倒産することが明白な場合を除き、次のすべてを満たす者はこの基準を満たすものとして取り扱うとしています。

  • 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
  • 流動比率が75%以上であること。
  • 資本金の額が2,000万円以上、かつ自己資本の額が4,000万円以上であること。

一般建設業の許可(法第7条第4号関係)では、自己資本の額が500万円以上などが目安で、許可申請直前の5年間、許可を受けて継続して営業した実績がある者も、この基準に適合するものとして取り扱われます。ガイドラインは、基準に適合するかどうかは許可を行う際に判断するもので、許可後に適合しなくなっても直ちに許可の効力に影響しないと記しています。

赤字・債務超過の決算が許可の更新や、特定建設業への切り替えにどう効くかは、許可行政庁の取扱いで決まります。詳しくは建設業許可の財産的基礎で整理しています。

出典: 国土交通省「建設業許可事務ガイドラインについて」【第7条第4号関係】【第15条第3号関係】。

判断の確認順

赤字・債務超過の決算で、経審を受ける前に確かめる順番
順確かめること見る場所
1公共工事を直接請け負う予定と、入札参加資格の受付時期に結果が必要か発注者・自治体の公告
2直前の結果の有効期間が、いつまで残っているか有効期間の逆算
3自社の決算書の数字で、Y評点の8指標とX2がどこまで動くかP点シミュレーター
4等級や入札参加資格の点数区分に対して、動いた後の点数が足りるか入札ランクの目安
5特定建設業の許可を持つ場合、財産的基礎の目安を満たすか許可行政庁・ガイドライン

3と4は、点数だけでなく「発注者が使う区分の境目」に着目する確認です。自治体の入札参加資格は、経審の総合評定値に独自の点数を足して等級を決める例があり、赤字でY評点が下がっても、等級の境目を超えるかどうかは自治体ごとに異なります。

まとめ

  1. 経審の受審義務は、公共工事を発注者から直接請け負おうとする場合に生じる。見送ると、結果が使えない空白期間が生じうる。
  2. 赤字の年にまず動くのはY評点で、売上高経常利益率・営業キャッシュフロー・利益剰余金の3指標。下限があり、下限より悪い数字は下限で止まる。
  3. X2は2期平均で、赤字の期は黒字の期と相殺され、平均が0円未満でも0円で止まる。
  4. 債務超過では、X2は0円のまま動かず、下がり幅はY評点から来る。
  5. 許可の財産的基礎は経審とは別の基準で、特定建設業は欠損比率・流動比率・資本金・自己資本の4つを見る。

自社の数字での試算は経審P点シミュレーターで行えます。Y評点の8指標はY点(経営状況)とはで確認できます。

評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。

よくある質問

赤字の決算でも経審は受けられますか?
受けられます。経審は決算の内容を点数にする審査で、赤字だから受けられないという定めはありません。公共工事を発注者から直接請け負おうとする場合は、建設業法第27条の23第1項により受審が必要です。
赤字でX2の平均利益額はマイナスになりますか?
なりません。平均利益額は営業利益と減価償却実施額の2期平均で、平均が0円に満たない場合は0円とみなされます。1期だけの赤字は、もう1期の利益で相殺されます。
売上高経常利益率の下限は何%ですか?
マイナス8.5%です。それより悪い数字でもマイナス8.5%とみなされ、他の指標を据え置いた試算ではY評点が534点で止まります。
債務超過になるとP点はどこまで下がりますか?
モデル会社の実測では、自己資本0円のP点656点が、マイナス6,000万円で622点まで34点下がりました。X2は動かず、下がり幅はY評点から来ています。
特定建設業の許可の財産的基礎の目安は何ですか?
国土交通省のガイドラインは、欠損の額が資本金の20%を超えないこと、流動比率75%以上、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上のすべてを満たす者を、倒産することが明白な場合を除き基準を満たすものとして扱うとしています。

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