建設業許可の財産的基礎|一般の500万円・特定の4つの基準と経審の自己資本との違い
許可の財産的基礎は、一般建設業なら3つのうち1つ、特定建設業なら3つすべてを満たす形で定められています。国土交通省のガイドラインから、基準と確認書類を整理し、経審の自己資本額・Y点との違いを示します。
国土交通省・許可事務ガイドライン建設業の許可には、請負契約を履行できるだけの資金力、つまり財産的基礎が要件に入っています。経営事項審査(経審)にも「自己資本額」やY点の自己資本の指標があるため、同じものを見ていると取り違えがちです。この記事は、建設業法と国土交通省の「建設業許可事務ガイドラインについて」から、許可の基準と確認書類、経審との違いを確認できた範囲で整理します。数値の判断や書類の扱いは許可行政庁ごとの手引きが優先します。個別の申請の代行や助言は行いません。
許可の財産的基礎とは(条文)
一般建設業の許可では、建設業法第7条第4号が「請負契約(軽微な建設工事に係るものを除く)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと」を基準にしています。特定建設業の許可では、第15条第3号が「発注者との間の請負契約で、その請負代金の額が政令で定める金額以上であるものを履行するに足りる財産的基礎を有すること」を求めます。この政令の金額は、施行令第5条の4で8,000万円です。
一般は「有しないことが明らかな者でない」という消極的な書き方、特定は「有すること」という積極的な書き方で、特定のほうが重い要件です。国土交通省の「許可の要件」のページも、特定建設業は一般より要件を加重していると説明しています。
一般建設業:3つのうち1つ
国土交通省のガイドラインは、次の①〜③のいずれかに該当する者を、倒産することが明白である場合を除き、基準に適合するものとして取り扱うとしています(第7条第4号関係)。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| ① | 自己資本の額が500万円以上 |
| ② | 500万円以上の資金を調達する能力があると認められる |
| ③ | 許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績がある |
「自己資本」は、法人では貸借対照表の純資産合計の額です。個人では、期首資本金、事業主借勘定、事業主利益の合計から事業主貸勘定を引き、負債の部の利益留保性の引当金・準備金を加えた額とされています。判断は、既存の企業は申請時の直前の決算期の財務諸表、新規設立の企業は創業時の財務諸表で行います。
特定建設業:3つすべて
特定建設業では、次の3つをすべて満たす必要があります(第15条第3号関係)。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 欠損比率 | 欠損の額が資本金の額の20%を超えていない |
| 流動比率 | 流動比率が75%以上(流動資産÷流動負債) |
| 資本金・自己資本 | 資本金が2,000万円以上で、かつ自己資本が4,000万円以上 |
法人の「欠損の額」は、貸借対照表の繰越利益剰余金が負である場合に、その額が資本剰余金・利益準備金・任意積立金の合計を上回る額です。「資本金」は株式会社の払込資本金、持分会社等の出資金額をいいます。一般の金額は融資や過去の営業実績で代えられますが、特定にはそのような代替の定めが、確認したガイドラインの記載にはありません。一般と特定の分かれ目は『一般建設業と特定建設業の分かれ目』で確認できます。
確認される書類
許可申請の添付書類は建設業法施行規則第4条に列挙されています。財産的基礎の判断に関わるものは次のとおりです。
- 直前1年の各事業年度の貸借対照表・損益計算書など:株式会社以外の法人または小会社は様式第15号〜第17号の2、小会社を除く株式会社はこれに附属明細表(様式第17号の3)を加えたもの。個人は様式第18号・第19号の貸借対照表・損益計算書(第4条第1項第8号・第9号)。
- 納税に関する書面:国土交通大臣許可は法人税・所得税の納付すべき額と納付済額を証する書面、都道府県知事許可は事業税について同様の書面(同第14号・第15号)。
- 主要取引金融機関名を記載した書面(様式第20号の3、同第16号)。
- ②で判断する場合の資料:ガイドラインは、担保とすべき不動産等を有していること等により、金融機関等から500万円以上の融資を受けられる能力があるかは、取引金融機関の融資証明書、預金残高証明書等により行う、としています。残高証明書の有効期限や発行日の指定は許可行政庁の手引きで異なるため、申請先の手引きで確認してください。
許可の更新では、規則第4条第6項により、第6号から第11号と第13号から第16号の書類の提出は省略できます。
経審の自己資本額・Y点との違い
同じ「自己資本」という言葉が出ても、許可と経審では見る目的が違います。
| 項目 | 許可の財産的基礎 | 経審 |
|---|---|---|
| 目的 | 許可を出してよいかの要件判定(基準を満たすか否か) | 入札参加のための評点の算出(高いか低いか) |
| 自己資本の扱い | 一般は500万円以上か、特定は4,000万円以上かの判定 | X2の自己資本額は点数に換算される。Y点では自己資本対固定資産比率・自己資本比率として使う |
| 流動比率 | 特定のみ75%以上が要件 | Y点の8指標に流動比率はない |
| 基準日 | 申請時の直前の決算期(新設は創業時) | 審査基準日の決算(X2は平均自己資本額も選べる) |
| 満たさないとき | 許可の基準に適合しない扱い | 点数が低くなるだけで許可の可否とは別 |
経審のX2の自己資本額は、純資産合計の額として扱われ(0円に満たないときは0円とみなす)、許可の自己資本と同じ貸借対照表の数字から出発します。ただし、許可は「基準を満たすか」、経審は「点数が何点か」を見るもので、許可の基準を満たしていても経審の点数が高いとは限りません。経審側の仕組みは『X2:自己資本額と利益額』『Y点(経営状況)』で確認できます。
取り違えを防ぐ確認順
- 申請が一般か特定かを確認する。一般は3つのうち1つ、特定は3つすべて。
- 直前の決算期(新設は創業時)の貸借対照表で、純資産合計(自己資本)、資本金、流動資産・流動負債、繰越利益剰余金を拾う。
- 一般で自己資本が500万円に届かないときは、②の融資証明書・預金残高証明書、または③の5年間の営業実績で判断できるかを、申請先の手引きで確認する。
- 特定は、欠損比率・流動比率・資本金と自己資本の3つを個別に計算する。1つでも外れれば満たさない。
- 経審の自己資本額やY点を、許可の合否の根拠に使わない。逆も同じ。
確認した一次資料
- 国土交通省「建設業許可事務ガイドラインについて」(平成13年4月3日国総建第97号)第7条第4号関係(一般の3基準、自己資本の定義、判断の時点)、第15条第3号関係(特定の3基準、欠損・流動比率・資本金・自己資本の定義)
- 国土交通省「許可の要件」「4.財産的基礎等」の一般・特定の基準
- e-Gov法令検索「建設業法」第7条第4号、第15条第3号
- e-Gov法令検索「建設業法施行規則」第4条(許可申請書の添付書類)
- e-Gov法令検索「建設業法施行令」第5条の4(特定建設業の財産的基礎に係る金額8,000万円)
まとめ
- 一般建設業の財産的基礎は、自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力、直前5年間の許可を受けた営業実績のいずれか1つ。
- 特定建設業は、欠損比率20%以内、流動比率75%以上、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上のすべてが必要。
- 判断は、既存企業は申請時の直前の決算期、新設企業は創業時の財務諸表で行う。資金調達能力は融資証明書・預金残高証明書等で確認される。
- 経審の自己資本額・Y点は点数の算出で、許可の合否の基準とは別。流動比率はY点の指標に含まれない。
評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。
よくある質問
- 一般建設業の財産的基礎は何で判断されますか?
- 国土交通省のガイドラインでは、自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力、許可申請直前5年間の許可を受けた営業実績のいずれか1つに該当すれば、倒産が明白な場合を除き基準に適合するものとして取り扱います。
- 特定建設業の財産的基礎の基準は何ですか?
- 欠損の額が資本金の20%以内、流動比率75%以上、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上の3つすべてを満たす必要があります。
- 500万円の資金調達能力はどう確認されますか?
- ガイドラインは、取引金融機関の融資証明書、預金残高証明書等により行うとしています。有効期限などの扱いは許可行政庁の手引きで確認してください。
- 許可の自己資本と経審の自己資本額は同じですか?
- 法人では貸借対照表の純資産合計という点は共通ですが、許可は基準を満たすかの判定、経審は点数の算出に使う別の目的です。流動比率は許可の特定要件にありますが、Y点の指標にはありません。
公開日: 2026-10-08
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