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完成工事高と兼業事業売上高の分け方(建設工事の境界と決算書の科目)

決算書の売上を完成工事高と兼業事業売上高のどちらに入れるかで、経審のX1・Z2と経営状況分析(Y)の入力が変わります。科目の定義、建設工事に当たらない業務の例、区分経理の確認項目、誤計上が見つかったときの手続を、国土交通省の告示・事務取扱い・手引きで整理します。

完成工事高と兼業売上の振り分け
編集:建設経営ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

建設業の損益計算書では、売上高が「完成工事高」と「兼業事業売上高」の2つの科目に分かれます。建設工事の完成を請け負った売上は前者、建設業以外の事業の売上は後者です。境界の判断は決算書を作る段階で決まり、経審では完成工事高の金額がそのままX1などの元になります。この記事は、告示と手引きに書かれた範囲だけを整理します。個別の取引がどちらに当たるかは、審査行政庁の窓口で確認してください。

2つの科目の定義(告示の原文)

建設業法施行規則の財務諸表(別記様式第十五号・第十六号)で使う勘定科目は、国土交通大臣の告示で分類されています。損益計算書の売上高に関する定義は次のとおりです。

勘定科目の分類(告示)にある売上高の定義
科目告示の定義(要旨)
完成工事高工事が完成し、その引渡しが完了したものの最終総請負高(請負高の全部または一部が確定しないものは見積計上による請負高)と、長期の未成工事を工事進行基準で収益に計上する場合の期中出来高相当額
兼業事業売上高建設業以外の事業(兼業事業)を併せて営む場合の、その事業の売上高

「建設業」の範囲は建設業法第2条で決まります。同条第1項は建設工事を「土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるもの」と定め、同条第2項は建設業を建設工事の完成を請け負う営業としています。つまり、別表第一の工事の完成を請け負った売上は完成工事高、それ以外の事業の売上は兼業事業売上高という順番で考えます。業種の区分は経審の業種区分の考え方で扱っています。

告示の定義だけでは、除草や点検のような個別の業務がどちらに当たるかは分かりません。個別の例は、次の節の経審の手引きに書かれています。

建設工事に当たらない業務の例

経審の手引きは、建設工事に当たらない業務の例を挙げています。

手引きが挙げる「建設工事の完成を請け負う営業に当たらない」業務
資料書かれている内容
近畿地方整備局 経営事項審査マニュアル(令和8年7月版)除草(剪定)業務、調査、点検、部品の交換、物品の販売等は、建設工事の完成を請け負う営業に該当しないため、原則として完成工事高に計上できない。
茨城県 申請の手引き(令和7年8月改訂)資材や機械の販売、運搬、除草・草刈り、保守・管理は兼業売上に計上する。保守・管理(点検や部品の交換等)は委託契約の場合が多いとの注記がある。

2つの資料で共通するのは、除草、点検・保守、部品の交換、物品や資材の販売です。茨城県だけが運搬を挙げ、近畿地方整備局だけが調査を挙げています。2つの資料に載っていない業務は、ここから一般化できません。保守・管理の売上は、契約の内容によって扱いが分かれる可能性があるため、契約書を持って審査行政庁に確認してください。

手引きの例は網羅ではありません:設計や測量など、上の表にない業務の扱いは今回確認した資料からは分かりません。迷う契約は、契約書の内容を持って審査行政庁に確認してください。

振り分けが経審のどこに効くか

国土交通省の経営事項審査の事務取扱い(令和8年7月施行・全文)に書かれた、完成工事高と売上高の使われ方は次のとおりです。

  • X1・Z2:許可を受けた建設業の種類別の年間平均完成工事高、年間平均元請完成工事高が、完成工事高から算定されます。兼業事業売上高はここに入りません。算式はX1(完成工事高)、Z2(元請完成工事高)で扱っています。
  • 経営状況(Y)の純支払利息比率:売上高の額は、審査対象事業年度の完成工事高と兼業事業売上高の合計の額とされています。2つの科目の合計なので、この比率の分母は振り分けでは変わりません。Yの指標はY点(経営状況)で整理しています。

そのため、兼業事業売上高から完成工事高へ金額を動かす(またはその逆)と、X1とZ2の元になる金額が直接変わります。工事経歴書の完成工事高の記載範囲は完成工事高の記載範囲で確認できます。評点の変わり方は経審P点シミュレーターで、完成工事高を変えて概算できます(概算であり、正式な評点は審査結果が優先されます)。

区分経理の確認項目

事務取扱いの経営状況分析の確認項目には、次の趣旨の項目があります。「建設業に係る収益・費用と建設業以外の兼業事業の収益・費用を区分して計上している。ただし、兼業事業売上高が軽微な場合を除く。」

つまり、兼業事業がある会社は、収益だけでなく費用も建設業と兼業で分けて経理することが前提です。兼業事業売上原価は、告示で「兼業事業売上高として計上したものに対応する売上原価」と定義されています。売上だけを分けて原価を分けていないと、この確認項目に合いません。

誤って完成工事高に入れていたとき

近畿地方整備局のマニュアルは、審査で建設工事の定義に当たらない案件が完成工事高に計上されていると分かったときの手続を、次のように書いています。

  1. その案件を完成工事高から除外し、工事経歴書を訂正する。
  2. これに伴い、決算変更届を訂正する。
  3. 経営状況分析(Y)を再受審する。

振り分けの誤りは、1つの科目の修正では終わらず、書類3か所に波及します。訂正と受け直しの違いは決算の修正と経審・決算変更届の訂正、虚偽記載の罰則は経審の申請書等への虚偽記載の罰則で確認できます。

この記事で確認していないこと

  • 財務諸表様式そのものの記載要領:勘定科目の定義は告示で確認しました。様式の記載要領の個別規定は読んでいません。
  • 設計・測量・清掃などの扱い:近畿地方整備局・茨城県の資料に載っていないため、断定しません。
  • 他の整備局・都道府県の例示:手引きの例示は地域で異なる可能性があります。
個別の判断について:この記事は告示と手引きの情報提供で、個別の取引の会計処理や申請についての判断・代行・助言ではありません。科目の振り分けは、審査行政庁の窓口で確認してください。

確認した一次資料

まとめ

  1. 完成工事高は建設工事の完成を請け負った売上、兼業事業売上高は建設業以外の事業の売上で、定義は国土交通省の告示にある。
  2. 除草、点検・保守、部品の交換、物品や資材の販売は、手引きが完成工事高に計上できない例として挙げている。
  3. X1・Z2は完成工事高が元になる。純支払利息比率の売上高は2つの科目の合計。
  4. 兼業事業がある会社は、収益と費用を建設業と兼業で区分して計上する前提になっている。
  5. 誤計上が見つかると、工事経歴書・決算変更届の訂正とYの再受審に波及する。

経審全体の流れは経審の流れと費用で確認できます。

評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。

よくある質問

完成工事高と兼業事業売上高の違いは何ですか?
国土交通省の勘定科目の分類(告示)では、兼業事業売上高は建設業以外の事業を併せて営む場合のその事業の売上高です。完成工事高は、工事が完成して引渡しが完了したものの最終総請負高などと定義されています。
除草や点検・保守の売上は完成工事高に入れられますか?
近畿地方整備局のマニュアルは、除草(剪定)業務、調査、点検、部品の交換、物品の販売等は建設工事の完成を請け負う営業に当たらず、原則として完成工事高に計上できないとしています。茨城県の手引きも、除草・草刈り、保守・管理は兼業売上に計上するとしています。
兼業事業売上高は経審のどこに使われますか?
X1・Z2は完成工事高が元になるため、兼業事業売上高は含まれません。経営状況分析の純支払利息比率の売上高は、完成工事高と兼業事業売上高の合計です(事務取扱い)。
完成工事高に入れてはいけない案件が見つかったらどうなりますか?
近畿地方整備局のマニュアルによると、その案件を完成工事高から除外して工事経歴書を訂正し、決算変更届を訂正し、経営状況分析(Y)を再受審する手続が必要になります。

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