決算の修正・訂正があったとき、提出済みの決算変更届と経審はどこまで直せるか
修正申告や完成工事高の誤りが分かったときに、決算変更届の訂正、経審の受け直し、再審査の申立てのどれが使えるかを、近畿地方整備局と大阪府の手引きで整理します。
訂正の届出・受け直し・再審査の使い分け決算の数字や工事経歴書の誤りに後から気づいたとき、直す手続は「決算変更届の訂正」「経審の受け直し(取下げ)」「再審査の申立て」の3つに分かれます。どれが使えるかは、誤りの原因と結果通知書を受け取ってからの経過で決まります。この記事は、近畿地方整備局と大阪府が公開している手引きに書かれている範囲だけを整理します。他の都道府県・地方整備局の運用は、同じとは限りません。
誤りの種類で手続を分ける
最初に「誤りが見つかった時点」と「誤りの原因」を分けると、使える手続が絞れます。
| 状況 | 候補になる手続 | 根拠の手引き |
|---|---|---|
| 提出済みの決算変更届の記載(財務諸表・工事経歴書など)に誤りがあった | 建設業に係る訂正の届出書(大阪府の様式)による訂正 | 大阪府 手引き(令和8年) |
| 審査で、完成工事高に計上できない案件が見つかった | 工事経歴書の訂正、決算変更届の訂正、経営状況分析(Y)の再受審 | 近畿地方整備局 手引き |
| 結果通知書の後に、申請者側の申請誤りに気づいた | 条件を満たせば1回だけ受け直し(取下げ) | 大阪府 手引き |
| 結果通知書の内容が、申請内容と食い違っている(行政庁側の誤り) | 通知書を受け取った日から30日以内の再審査の申立て | 近畿地方整備局・大阪府 手引き |
決算変更届の訂正:工事経歴書が変わるときはセット
近畿地方整備局の手引きは、経営規模等評価(X・Z・W)の審査で工事経歴書の記載内容の訂正が生じた場合、決算変更届の訂正の届出もあわせて必要になると説明しています。また、完成工事高の合計額と元請工事に係る完成工事高の合計額は、決算変更届に添付する「直前3年の各事業年度における工事施工金額」に計上した値と一致させる必要があるとされています。
完成工事高に計上できない案件が審査で見つかった場合の手順も、同じ手引きに書かれています。除草(剪定)業務、調査、点検、部品の交換、物品の販売などは建設工事の完成を請け負う営業に該当しないため、原則として完成工事高に計上できません。審査で見つかると、次の手続が必要です。
- その案件を完成工事高から除外し、工事経歴書を訂正する。
- これに伴い、決算変更届を訂正する。
- 経営状況分析(Y)を再受審する。
手引きは、工事経歴書・決算変更届・経営状況分析の3か所に手続が及ぶと書いており、訂正は1か所では終わりません。この計上の線引きは完成工事高(X1)の記事で整理しています。
大阪府の手引きには、「建設業に係る訂正の届出書」という様式があります。記載例には、決算変更届の第15号(短期借入金と長期借入金の仕訳の誤り)と第2号(完成工事高を金額順に書くべきところを施工期日順に書いていた)の訂正が挙げられています。記載上の注意として、訂正前の様式に訂正箇所を朱書きの二重線で消し、訂正後の文字を余白に記入して添付すること、届出は冊子ごとに2部作成することが書かれています。
同じ様式の注意書きには、消費税込みで作成していた財務諸表を消費税抜きで作り直した場合や、個人事業の承継・合併などで完成工事高等を引き継ぐ場合は、訂正の届出書ではなく経営事項審査申請書に添付すると書かれています。「数字を直す」ことが、すべてこの様式で処理されるわけではありません。
経審の受け直し:大阪府が認める2つの場合と条件
大阪府の手引きは、経営事項審査の受け直しを、結果通知書の不正使用防止の観点から原則として認めていないとしています。そのうえで、次の場合に限り受け直しができると書かれています。再度、手数料の納付が必要で、再審査申請ではない点も明記されています。
| 場合 | 条件 |
|---|---|
| 申請内容の誤り(技術職員の担当業種を誤った、防災協定を締結しているのに「無」で申請した、4業種のところ3業種しか申請しなかった、など) | 次の2つを両方満たすこと。①受け取った結果通知書を入札・契約に関して官公庁に提示・提出していない。②通知書の発行日から1か月以内で、かつ次の決算期が到来していない。1回が限度。 |
| 業種追加により許可業種数が増えた | 直近の審査基準日で受審した後の業種追加で、次の決算期までに限る。 |
受け直すと、すでに行った申請は取下げになります。取下げには、取下げ願、受け取った結果通知書、申請書の副本が必要で、申請書の正本・手数料・結果通知書は返還されないと書かれています。取下げの前に、経営事項審査の担当職員へ相談するよう案内されています。
再審査の申立て:対象になるのは行政庁側の誤りだけ
近畿地方整備局の手引きによると、行政庁側の誤りで結果通知書の内容が申請内容と異なる場合は、通知書を受け取った日から30日以内に再審査を申し立てられます。申請者の記入漏れ、記入誤り、確認書類の不足による内容の認否、経営状況分析のやり直しなどは「行政庁側に責のない案件」として対象外です。登録経営状況分析機関が行った経営状況分析は、行政庁によるものではないため対象外とも書かれています。
大阪府の手引きも同じ趣旨で、再審査の申立ては経営規模等評価の内容に限り、申請者の責任に帰するものは申し立てられないとしています。
近畿地方整備局の手引きには、もう一つ別の理由もあります。国土交通大臣が定める経営規模等評価の評価方法が改正された場合は、改正の日から120日以内に再審査を申し立てられます。この場合の手数料は不要と書かれています。令和8年7月の改正に関する扱いは再審査と競争参加資格の再認定の違いで整理しています。
結果通知書の食い違いを自分で確かめる手順は経営規模等評価結果通知書の見方にあります。自社の決算を直した結果、評点が変わるかどうかは、経審P点シミュレーターで訂正前後の数字を入れて概算できます(概算であり、正式な評点は審査結果が優先されます)。
修正申告があったとき:提出書類と監査加点への注意
税務署への修正申告は、経審の書類にも影響します。手引きに書かれている範囲は次のとおりです。
- 近畿地方整備局:消費税確定申告書・納税証明書の提出書類のチェック項目に、修正申告を行った場合は修正申告に係る書類もあわせて提出すること、と書かれています。
- 大阪府(提出書類):消費税の確定申告書の課税標準額が完成工事高より小さい場合などは、理由の説明書(代表者印が必要)と修正申告書の写し等を提出する、と書かれています。また、社会保険の随時改定や、修正申告で所得額・納税額が変わった場合は、前期に提出した場合でも変更内容が確認できる書類の提出が必要とされています。
- 大阪府(監査の受審による加点):公認会計士等が確認した書類で加点を受けている場合、受審対象の計算書類・財務諸表に虚偽があれば行政処分を受けることになる、と書かれています。税務調査で修正申告等が発生した場合、計算書類・財務諸表の内容に虚偽があったと判断されることがあるため注意するよう案内されています。
「修正申告をしたこと」と「決算変更届を訂正する必要があるか」は別の問題です。手引きは、修正申告が決算変更届の訂正を必ず要すると書いてはいません。修正で財務諸表の数字が変わったかどうかを確認し、変わっていれば訂正の要否を行政庁へ問い合わせる順番になります。
虚偽記載の罰則との関係は経審の申請書等への虚偽記載の罰則、決算変更届を出さなかった場合は決算変更届を出さないとどうなるで条文を確認できます。
この記事で確認していないこと
次の点は、確認した手引きに書かれていないため、断定しません。
- 期限後の決算変更届の訂正に、提出期限のような決まりがあるか:確認した範囲では、訂正の期限は見つかりませんでした。
- 決算書の数字の誤りで、すでに受けた経審をどう扱うか:受け直しの対象になるかどうかは、行政庁の判断です。
- 近畿地方整備局・大阪府以外の取扱い:国土交通大臣許可を含め、他の整備局・都道府県の様式や運用は確認していません。
確認した一次資料
- 近畿地方整備局「経営規模等評価申請・総合評定値請求(経営事項審査)の手引き【本編】」(令和8年7月版)再審査の申立て(7ページ・結果通知書の項)、完成工事高の定義と訂正の手順(9ページ)、工事経歴書と決算変更届の訂正(工事経歴書の記載の項)、修正申告に係る書類(チェックリスト番号1)。2026-10-08に確認しました。
- 大阪府「経営事項審査の手引き」(令和8年)提出書類(消費税・修正申告、35ページ)、受け直し・取下げ・再審査の申立て(63ページ)、建設業に係る訂正の届出書(103ページ)、Q&A(監査の受審と修正申告)。2026-10-08に確認しました。大阪府知事許可の取扱いです。
まとめ
- 決算変更届の記載に誤りがあれば、訂正の届出で直す。大阪府には専用の様式があり、朱書きの二重線で訂正して2部提出する(他地域は要確認)。
- 工事経歴書の訂正が生じたら決算変更届の訂正も必要になり、完成工事高に計上できない案件が見つかった場合は経営状況分析(Y)の再受審も必要になる(近畿地方整備局)。
- 大阪府の受け直しは、通知書を官公庁に提示しておらず、発行から1か月以内で次の決算期前、という条件を満たすときに1回だけ。
- 再審査の申立ては行政庁側の誤りが対象で、通知書の受領から30日以内。申請者側の誤りは対象外。
- 修正申告があったときは、修正申告に係る書類の提出が求められる。監査の受審で加点を受けている場合は、財務諸表の虚偽の判断にも注意する。
経審全体の流れは経審の流れと費用、決算変更届の必要書類は決算変更届の必要書類で確認できます。
評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。
よくある質問
- 提出済みの決算変更届に誤りがあったときはどうしますか?
- 大阪府の手引き(令和8年)には「建設業に係る訂正の届出書」の様式があり、訂正前の様式に朱書きの二重線で訂正して2部提出すると書かれています。他の都道府県の様式や部数は提出先の案内で確認してください。
- 経審の工事経歴書を訂正すると、決算変更届も直す必要がありますか?
- 近畿地方整備局の手引きは、経営規模等評価の審査で工事経歴書の記載内容の訂正が生じた場合、決算変更届の訂正の届出もあわせて必要になると説明しています。
- 経審の結果通知書を受け取った後に申請の誤りに気づいたら、受け直せますか?
- 大阪府の手引きは原則として受け直しを認めておらず、通知書を官公庁に提示・提出しておらず、発行から1か月以内で次の決算期が到来していないなどの条件を満たすときに限り1回だけ認めています。再度手数料が必要です。
- 再審査の申立ては自社の記入誤りにも使えますか?
- 使えません。近畿地方整備局・大阪府の手引きによると、再審査の申立ては行政庁側の誤りで結果通知書が申請内容と異なる場合に、受領から30日以内に行うもので、申請者の記入漏れ・記入誤り・書類不足は対象外です。
- 修正申告をしたとき、経審で追加の書類は必要ですか?
- 近畿地方整備局の手引きは、修正申告を行った場合は修正申告に係る書類もあわせて提出するとしています。大阪府の手引きは、所得額や納税額が変わった場合、前期に提出済みでも変更内容が確認できる書類が必要としています。
公開日: 2026-10-08
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本ツールは事業者ご自身が入力・利用する試算です(申請の代行・作成支援は行っていません)。個別のご相談は承っておりません。正式な評点は登録経営状況分析機関・審査行政庁の審査結果が優先します。数値は概算であり、実際の申請前に専門家へご確認ください。算定方法・出典・免責
