社会保険の未加入・加入漏れがあるときの影響(許可・経審のW点・入札参加)
健康保険・厚生年金保険・雇用保険に未加入や加入漏れがあるとき、建設業許可、経審のW点、入札参加資格の申請でそれぞれ何が起きるかを、条文・改正資料・手引きに書かれている範囲で場面別に整理します。
許可・経審・入札参加の3場面の区別社会保険の未加入は、以前は経審のW点で各40点の減点でした。令和8年7月1日以降の申請ではこの減点項目が削除されたため、「未加入でもW点は下がらない」と読めてしまいます。しかし、削除の理由は、許可の要件として加入を満たしているはずなので経審で改めて確認する必要が乏しい、というものです。そのため未加入の問題は、経審の点数ではなく建設業許可の基準の側にあると整理できます。この記事は、場面ごとに「何が根拠で、どう扱われるか」を、国土交通省の資料に書かれている範囲だけで並べます。個別の事案の判断や是正の手続は、許可行政庁・年金事務所・労働基準監督署などの窓口で確認してください。
場面別の整理(一覧)
| 場面 | 根拠 | 確認できた扱い |
|---|---|---|
| 建設業許可 | 建設業法施行規則第7条第2号、建設業法第29条第1項第1号 | 健康保険・厚生年金保険・雇用保険の届書を、適用事業所に当たる全ての営業所について提出していることが許可の基準の一部。満たさなくなった場合は許可の取消しの対象 |
| 経審のW点(令和8年7月1日以降の申請) | 国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」 | 雇用保険・健康保険・厚生年金保険の未加入の減点(各−40)は審査項目から削除 |
| 経審の提出書類 | 近畿地方整備局の手引き(令和8年7月版) | 技術職員の常勤性の証明に、健康保険・厚生年金保険の標準報酬決定通知書の写し等を提出する |
| 入札参加資格の申請 | 国土交通省地方整備局等の競争参加資格審査申請書作成の手引き(令和7・8年度版、令和9・10年度版) | 通知書の加入状況が「未加入」だった場合の添付書類、電子申請でのエラー表示が手引きに書かれている |
建設業許可の基準としての社会保険
建設業法第7条第1号は、経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準を許可の要件にしています。その省令である建設業法施行規則第7条は、第1号で常勤役員等の経験などを定めたうえで、第2号で次の3つの全てに該当することを求めています。
- 健康保険法の適用事業所に当たる全ての営業所について、健康保険法施行規則第19条第1項の届書を提出していること。
- 厚生年金保険法の適用事業所に当たる全ての営業所について、厚生年金保険法施行規則第13条第1項の届書を提出していること。
- 雇用保険法の適用事業の事業所に当たる全ての営業所について、雇用保険法施行規則第141条第1項の届書を提出していること。
条文の言い方は「適用事業所に該当する全ての営業所」です。したがって、確認の軸は「会社として加入しているか」だけでなく、「適用事業所に当たる営業所のうち、届書の出ていない営業所がないか」になります。どの営業所が適用事業所に当たるか、また従業員や役員がどの制度の対象になるかは、条文だけでは決まらないため、年金事務所・公共職業安定所などで確認が要ります。
建設業法第29条第1項第1号は、一般建設業の許可を受けた業者が第7条第1号に掲げる基準を満たさなくなった場合に、許可を取り消さなければならないと定めています(特定建設業者も、第7条第1号は同じ扱いです)。加入漏れを見つけたときの届出の順序や是正の手続は、許可行政庁の窓口で確認してください。この記事の資料では、是正手続の具体的な日数や様式は確認していません。
経審のW点:減点項目の削除と、その理由
国土交通省の「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」は、W1に置かれていた次の3項目を「審査項目から削除」としています。令和8年7月1日以降の申請で適用されます。
| 項目 | 削除前の評点 | 令和8年7月1日以降の申請 |
|---|---|---|
| 雇用保険の未加入(W1-1) | −40 | 審査項目から削除 |
| 健康保険の未加入(W1-2) | −40 | 審査項目から削除 |
| 厚生年金保険の未加入(W1-3) | −40 | 審査項目から削除 |
削除の理由として、同じ資料は次の流れを書いています。令和元年度の建設業法等の改正により、令和2年10月1日以降の建設業許可の要件に社会保険(雇用保険・健康保険・厚生年金保険)の加入が追加された。許可の更新期間は5年なので、令和7年10月1日以降に許可を保有する建設業者は加入を満たしていることになる。そのため、経審の段階で改めて加入の有無を確認する必要性が乏しく、申請事務の効率化の観点も踏まえて削除した、という説明です。
近畿地方整備局の手引き(令和8年7月版)の別紙三の記入例にも、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入(旧項番41〜43)が「令和8年7月1日制度改正により削除」と明記されています。削除前と後の点数の差は令和8年改正のW点の変更点、W点の項目全体は経審のW点(社会性等)とはで確認できます。
なお、旧基準のもとで受けた経審の結果通知書は、審査基準日から1年7か月の有効期間の間は使えます(経審の有効期間)。旧基準で未加入の減点を受けた通知書の扱いがその間にどうなるかは、発注者の手引きで確認が要ります(次の章)。
経審の書類:技術職員の加入状況が出てくる場面
W点の項目は消えましたが、経審の提出書類の中には健康保険・厚生年金保険の書類が残っています。近畿地方整備局の手引きのチェックリストは、技術職員の常勤性(審査基準日に常時雇用されていること)の証明として、技術職員名簿に載せた全員(CPD単位取得者名簿・技能者名簿・建設業経理士等名簿に載せた人も同様)について、健康保険・厚生年金保険の標準報酬決定通知書の写しまたは被保険者縦覧照会回答票を求めています。
- 審査基準日の直前の9月に適用される「定時決定」の標準報酬決定通知書を出す。定時決定の対象でない人は、直前の随時改定または資格取得時の通知書を出す。
- 協会けんぽ以外の健康保険組合等に加入している場合は、健康保険または厚生年金保険のどちらか一方の通知書でよい。
- 75歳以上の人、常勤の役員等、厚生年金保険の加入対象外の人は、この書類に代えて手引きが挙げる別の書類を出す。
ここから確認できるのは、「技術職員として数える人は、健康保険・厚生年金保険の書類で常勤性を示すのが原則」という点です。加入漏れのある技術職員がこの書類を出せないとき、手引きが代わりに認める書類は、上記のとおり75歳以上の人、常勤の役員等、厚生年金保険の加入対象外の人など、手引きが例示する人が対象です。それ以外の人の加入漏れについて、手引きに書かれた扱いは確認できませんでした。技術職員の常勤性の考え方は経審の技術職員の常勤性で整理しています。
入札参加資格の申請:未加入の扱い
国土交通省地方整備局等の「建設工事 競争参加資格審査申請書作成の手引き」(令和7・8年度版)には、次の記載があります(78ページ)。
- 総合評定値通知書で雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況が「未加入」であった後に、その保険の加入状況が「加入」または「適用除外」になった場合は、事実を証明する書類を添付書類として提出する。
- 書類の提出がない場合は、申請書は受理できない。
- 証明書類の例として、健康保険・厚生年金保険の領収証書の写し、社会保険料納入証明書の写し、資格取得確認及び標準報酬決定通知書の写し、雇用保険の領収済通知書の写し、適用除外誓約書などが挙げられている。
令和9・10年度版の手引きの電子申請の送信後の確認の項には、「社会保険等の加入状況が『未加入』の場合、エラーとなります。ヘルプデスクにお問い合わせください。」という記載があります。これらは国土交通省の地方整備局等が発注する工事の申請の手引きに書かれた扱いです。都道府県・市町村など他の発注者が、未加入の業者の申請や格付けをどう扱うかは、この記事の資料では確認していません。受付要領は発注者ごとに異なるため、申請する発注者の最新の手引きで確認してください。
入札参加資格の受付の流れは一元受付の申請手順、随時受付は入札参加資格の随時受付で扱っています。
この記事で確認していないこと
- 是正の具体的な手順:加入漏れを見つけたときの許可行政庁への相談、遡っての加入、届出の順序や日数は、確認した資料に書かれていません。
- 従業員ごとの加入義務:パート・役員・一人親方などがどの保険の対象になるかは、各制度の窓口の判断です。
- 国土交通省以外の発注者の扱い:都道府県・市町村・公社などの取扱いは、それぞれの手引きの確認が要ります。
- 旧基準の通知書が有効期間内にあるときの個別の扱い:発注者ごとの運用は確認していません。
確認した一次資料
- 建設業法施行規則(e-Gov法令検索)第7条第2号(健康保険・厚生年金保険・雇用保険の届書の提出)。2026-10-08に確認しました。
- 建設業法(e-Gov法令検索)第7条第1号、第29条第1項第1号(許可の取消し)。2026-10-08に確認しました。
- 国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」社会保険加入に関する評価項目(W1-1〜W1-3)の削除と理由(6ページ)。2026-10-08に確認しました。
- 近畿地方整備局「経営規模等評価申請・総合評定値請求(経営事項審査)の手引き【本編】」(令和8年7月版)別紙三の記入例(旧項番41〜43の削除)、技術職員の常勤性の証明書類(チェックリスト番号4)。2026-10-08に確認しました。
- 国土交通省「建設工事 競争参加資格審査申請書作成の手引き(令和9・10年度)」電子申請の送信後の確認で、社会保険等の加入状況が「未加入」の場合にエラーとなる旨の記載。2026-10-08に確認しました。
令和7・8年度版の「建設工事 競争参加資格審査申請書作成の手引き」78ページの記載は、保存済みの資料(一次資料・出典一覧)で2026-10-08に確認しました。
まとめ
- 建設業許可の基準(施行規則第7条第2号)が、適用事業所に当たる全ての営業所の健康保険・厚生年金保険・雇用保険の届書の提出を求めている。満たさなくなった場合は取消しの対象(法第29条第1項第1号)。
- 経審のW点の未加入減点(各−40)は、令和8年7月1日以降の申請で削除された。理由は、許可の要件として加入を満たしているはずなので、経審で改めて確認する必要が乏しいため。
- W点から外れても、技術職員の常勤性の証明には健康保険・厚生年金保険の書類が使われる。
- 国土交通省の地方整備局等の手引きには、「未加入」だった場合の添付書類や電子申請のエラーが書かれている。他の発注者の扱いは各手引きで確認する。
経審全体の流れは経審の流れと費用で確認できます。
評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。
よくある質問
- 令和8年7月以降の経審では、社会保険に未加入でもW点は下がりませんか?
- 国土交通省の「経営事項審査の主な改正事項」は、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の未加入の減点項目(W1-1〜W1-3、各−40)を令和8年7月1日以降の申請で審査項目から削除するとしています。ただし加入は建設業許可の基準として残っています。
- なぜ経審から社会保険の減点が削除されたのですか?
- 同資料によると、令和2年10月1日以降の建設業許可の要件に社会保険加入が追加され、許可の更新期間が5年であることから、令和7年10月1日以降に許可を保有する業者は加入を満たしているため、経審で改めて確認する必要性が乏しいと整理されています。
- 社会保険に加入していないと、建設業許可はどうなりますか?
- 建設業法施行規則第7条第2号は、適用事業所に当たる全ての営業所について健康保険・厚生年金保険・雇用保険の届書の提出を求めています。建設業法第29条第1項第1号は、第7条第1号の基準を満たさなくなった場合に許可を取り消さなければならないと定めています。
- 経審の技術職員の書類に、社会保険の書類が必要ですか?
- 近畿地方整備局の手引き(令和8年7月版)は、技術職員の常勤性の証明として健康保険・厚生年金保険の標準報酬決定通知書の写し等を求めています。75歳以上の人や常勤の役員等、厚生年金保険の加入対象外の人は別の書類で代えます。
- 入札参加資格の申請で、社会保険が未加入だとどうなりますか?
- 国土交通省地方整備局等の令和7・8年度版の手引きは、総合評定値通知書で「未加入」だった後に「加入」または「適用除外」となった場合に証明書類の提出を求め、提出がなければ申請書は受理できないとしています。令和9・10年度版は電子申請で「未加入」の場合にエラーとなると記載しています。他の発注者の扱いは各手引きで確認が要ります。
公開日: 2026-10-08
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