指名停止を受けたときの入札参加と経審の扱い(国土交通省の措置要領の整理)
指名停止は発注機関ごとの措置で、経審の法令遵守の点数とは別です。国土交通省の措置要領と経審の手引きの記載から、何が止まり何が止まらないかを整理します。
国土交通省・措置要領指名停止を受けると、その発注機関の工事で指名されなくなります。では、経営事項審査(経審)の点数や、入札参加資格そのものはどうなるのでしょうか。この記事は、国土交通省の「工事請負契約に係る指名停止等の措置要領」(地方整備局向け、最終改正 令和2年12月25日)と、経審の手引きの記載から、確認できた範囲だけを整理します。自治体の指名停止の基準は機関ごとに異なり、この記事では書きません。個別の措置は、各発注機関の通知と公表が優先します。
指名停止とは何か(営業停止処分との違い)
名前が似ていても、次の2つは別の制度です。
| 項目 | 指名停止 | 営業停止処分・指示処分 |
|---|---|---|
| 根拠 | 発注機関の措置要領 | 建設業法第28条 |
| 誰が決めるか | 発注機関(国土交通省の要領では地方整備局長など) | 国土交通大臣または都道府県知事(許可行政庁) |
| 止まる範囲 | その機関の工事で指名されなくなる | 建設業法上の営業の停止・指示 |
措置要領が定める停止の範囲
国土交通省の措置要領(地方整備局向け)は、措置要件に該当した有資格業者について、情状に応じた期間を定めて指名停止を行うとしています。主な定めは次のとおりです。
- 指名が止まる:地方整備局の契約担当官等は、停止中の有資格業者を指名してはならず、すでに指名している場合は取り消します(第1)。
- 下請負人・共同企業体にも及ぶ:責を負うべき下請負人は元請の期間の範囲内で、共同企業体の構成員は共同企業体の期間の範囲内で、併せて停止されます。停止中の業者を構成員に含む共同企業体も、その期間の範囲内で停止されます(第2)。
- 対象区域を限る場合:安全管理に関する一部の措置要件(別表第1第6号・第8号)では、不適切な程度に応じて区域を限定した停止ができます(第5)。
- 通知と報告:停止、期間の変更、解除は、有資格業者へ通知されます(第6)。国土交通大臣への報告も定められています(第9)。
- 停止に至らない場合:書面または口頭で警告・注意の喚起をすることがあります(第10)。
措置要件の例として、別表第1には「虚偽記載」(競争参加資格確認申請書などに虚偽の記載をした場合、認定日から1か月以上6か月以内)が、別表第2には談合関係の要件が置かれています。建設業法違反行為の要件(別表第2第13号)は、認定日から1か月以上9か月以内です。
期間の決まり方
| 場面 | 期間の扱い |
|---|---|
| 1つの事案で複数の要件に該当 | 各要件の短期・長期のうち最も長いものを採る |
| 停止の満了後1年以内などに再び該当 | 短期を2倍(当初が1か月未満なら1.5倍)にする。別表第2の一部の要件では満了後3年以内も対象 |
| 情状酌量すべき特別の事由 | 短期の2分の1まで短縮できる |
| 極めて悪質・重大な結果 | 長期の2倍(上限36か月)まで延長できる |
| 停止中に責を負わないことが明らかになった | 停止を解除する |
この表は国土交通省の地方整備局向けの要領の内容です。自治体や他の機関の期間は、それぞれの要領で確認してください。
経審の点数への影響
経審のW点には、法令遵守の状況として、営業停止処分や指示処分の有無を見る項目があります。指名停止との関係は、次のように手引きに書かれています。
- 近畿地方整備局の手引きの記入欄の注意書きは、「行政指導」(勧告等)や発注者による「指名停止措置」は対象外としています。
- 大阪府の経審の手引きのQ&Aは、「1か月の指名停止を受けたが、法令遵守の状況の処分に該当するか」という問いに、審査対象年度に建設業法第28条の指示処分や営業停止処分を受けている場合に減点するため、1か月の指名停止を受けたことだけで減点になることはない、と答えています。
つまり、経審の法令遵守の減点は、許可行政庁による第28条の処分が対象で、指名停止だけでは減点の理由にならないというのが、確認できた手引きの記載です。ただし、指名停止の原因になった事実が建設業法違反で、許可行政庁が指示処分や営業停止処分を行った場合は、処分のほうが減点の対象になります。W点の全体は『W点(社会性等)の記事』で確認できます。
入札参加資格・他の発注機関との関係
国土交通省の措置要領が停止するのは、地方整備局が行う工事の指名です。資格を持つ業者を指名の対象から外す措置として書かれており、確認した範囲では、資格の認定そのものを取り消す定めは見当たりませんでした。
他の発注機関で同時に参加できなくなるかは、機関ごとの要領で決まります。大阪府の手引きは、虚偽の申請があった場合の入札参加停止・指名停止について「発注機関により異なります」と書いています。資格を持つ機関それぞれの通知と要領を確認してください。入札参加資格の仕組みは『入札参加資格の変更届』『P点と入札ランク』にあります。
指名停止を受けたときの確認順
- 通知書で、措置要件、期間の始期と終期、対象区域を確認する。
- 共同企業体や下請の関係先にも停止が及んでいないかを確認する。
- 他の発注機関の入札参加資格を持つ場合は、各機関の要領と公表の有無を確認する。
- 原因が建設業法違反の場合は、許可行政庁の第28条の処分があるかを確認する。処分があれば経審の法令遵守の項目に関わる。
- 期間が終わるまで、該当機関の案件への応札や指名の見込みを組み直す。
確認した一次資料
- 国土交通省「工事請負契約に係る指名停止等の措置要領」(最終改正 令和2年12月25日)指名の停止、下請負人・共同企業体、期間の特例、通知・報告、別表の措置要件
- 大阪府「経営事項審査の手引き」(令和8年)Q&A「1か月の指名停止」と法令遵守の状況、入札参加停止は発注機関により異なること
- 近畿地方整備局「経営規模等評価申請・総合評定値請求(経営事項審査)の手引き」(令和8年7月版)営業停止処分の有無の記入欄の注意書き(指名停止措置は対象外)
まとめ
- 指名停止は発注機関の措置、営業停止処分は許可行政庁が行う建設業法第28条の処分で、別の制度。
- 国土交通省の要領では、停止中の業者は指名されず、下請負人や共同企業体の構成員にも及ぶことがある。
- 期間は要件ごとに幅があり、再発で短期が2倍、特別の事由で2分の1まで短縮、悪質な場合は長期の2倍(上限36か月)まで延ばせる。
- 確認できた手引きでは、指名停止だけで経審の法令遵守の項目が減点されることはない。他の機関への波及は機関ごとの要領で確認する。
評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。
よくある質問
- 指名停止を受けると、経審の点数は下がりますか?
- 近畿地方整備局の手引きは、営業停止処分の記入欄で発注者による指名停止措置は対象外としています。大阪府の手引きのQ&Aも、1か月の指名停止だけで法令遵守の状況が減点になることはないと答えています。減点の対象は建設業法第28条の指示処分・営業停止処分です。
- 指名停止の期間はどう決まりますか?
- 国土交通省の措置要領では、要件ごとに期間の幅があります(虚偽記載は1か月以上6か月以内など)。再び該当すると短期が2倍、特別の事由で2分の1まで短縮、悪質な場合は長期の2倍(上限36か月)まで延長できます。
- 下請や共同企業体の構成員も指名停止になりますか?
- 措置要領は、責を負うべき下請負人は元請の期間の範囲内で、共同企業体の構成員は共同企業体の期間の範囲内で、併せて停止するとしています。
- 指名停止と営業停止処分は同じですか?
- 別の制度です。指名停止は発注機関の措置要領による措置、営業停止処分は許可行政庁が建設業法第28条に基づいて行う処分です。
公開日: 2026-10-08
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