入札・契約

公共工事標準請負契約約款の読み方|契約前に見る条項(工期・変更・支払い・契約不適合・解除)

契約書に付く約款のうち、契約前に位置を確かめておきたい条項を、条番号つきで一覧にしました。

公共工事標準請負契約約款(令和7年12月2日改正まで反映)
編集:建設経営ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

公共工事の契約書には、国土交通省の中央建設業審議会が定めた「公共工事標準請負契約約款」をもとにした約款が付くのが一般的です。約款は全文が長く、契約の直前に通読するのは大変です。このページでは、工期、設計の変更、代金の変更、検査と支払い、契約不適合、解除について、約款のどの条が何を定めているかを整理します。

標準約款は雛形で、数字の空欄は発注者が埋める

標準約款は、発注者が自分の約款を作るときの手本です。各発注者の実際の約款は、条の番号や文言が違うことがあります。契約書に付いた約款が、実際に効力を持つ条件です。

標準約款には「○日以内」「十分の○」のように、数字が空欄になっている箇所が多くあります。たとえば工期の変更を協議する期間は、協議開始の日から「○日以内」と書かれ、注には工期と請負代金額を考えて十分に協議できる日数を入れるよう書かれています。実際の日数は、契約書案の約款で確かめます。

約款第1条第5項は、約款に定める催告、請求、通知、報告、申出、承諾および解除は、書面で行うと定めています。口頭の連絡だけでは、約款上の手続きにならない場合があります。

契約前に見る条項の一覧

標準約款で契約前に位置を確かめたい条項
確かめたいこと条定めていること
契約の保証第4条契約保証金、保証証券、履行保証保険などの保証を付けること
権利の譲渡第5条発注者の承諾なしに、契約から生じる権利や義務を第三者に譲渡できないこと
設計図書と現場が合わないとき第18条図面と仕様書の不一致や、現場の条件の違いを発見したときの通知、確認の請求と調査
発注者による設計の変更第19条発注者が設計図書の変更を通知して変更できること
工事の中止第20条発注者が工事を一時中止させる場合と、増加費用の負担
工期の延長・短縮第22条・第23条・第24条受注者の請求による延長、発注者の請求による短縮、変更の決め方
請負代金額の変更第25条協議して定めること。協議が整わないときは発注者が定める
賃金や物価の変動第26条契約から12か月を経過した後の請負代金額の変更の請求
天災などによる損害第30条工事目的物の引渡し前の不可抗力による損害の負担
完成の検査と引渡し第32条完成の通知、発注者の検査、引渡し
代金の支払い第33条検査に合格した後の請求と、請求から40日以内の支払い
前払金・部分払第35条・第38条前金払、中間前金払、出来形部分の部分払
支払いが遅れたとき第44条前払金等の不払に対する工事の一時中止
引渡し後の不具合第45条契約不適合責任(修補、代替物の引渡し、代金の減額)
契約の解除第46条・第47条・第51条発注者の任意解除、発注者の催告による解除、受注者の催告による解除
紛争になったとき第59条・第60条あっせんまたは調停、仲裁

条の番号は、令和7年12月2日の改正まで反映した標準約款のものです。以前の版や、発注者独自の約款とは番号が違うことがあります。たとえば、以前の約款で「かし担保」と呼ばれた条項は、現行の標準約款では「契約不適合責任」(第45条)になっています。

工期に関わる条項(第20条〜第24条)

受注者は、天候の不良や、関連工事の調整への協力など、自分の責めに帰すことができない事由で工期内に完成できないとき、理由を明示した書面で、発注者に工期の延長を請求できます(第22条第1項)。発注者は、必要があると認めるときは工期を延長しなければならず、延長が発注者の責めによる場合は、請負代金額の変更や費用の負担も必要になります(同条第2項)。

工事用地が確保できない、天災等で工事を施工できないなどのときは、発注者は工事を一時中止させなければなりません(第20条第1項)。必要と認められるときは、工期や請負代金額の変更、工事現場の維持などに伴う増加費用の負担も定められています(同条第3項)。

工期の変更は、発注者と受注者が協議して定めます。協議開始の日から約款に書かれた日数以内に整わないときは、発注者が定めて通知します(第24条第1項)。協議が整わなかったことなどを理由に、発注者が受注者を不利益に扱ってはならないとも書かれています(同条第3項)。

発注者が工期を延長または短縮するときは、従事する者の労働時間などの労働条件が適正に確保されるよう考えなければなりません(第21条)。

設計と代金の変更(第18条・第19条・第25条・第26条)

第18条は、図面と仕様書が一致しない、設計図書と現場の条件が合わないなどの事実を施工中に発見したとき、受注者が直ちに監督員へ通知し、確認を請求しなければならないと定めています。確認の請求を受けた監督員は、受注者の立会いの上で直ちに調査します。その結果、設計図書の訂正や変更が必要と認められれば、発注者が必要な訂正や変更を行い、必要に応じて工期や請負代金額を変更します(第18条第4項・第5項)。

第19条は、発注者が必要と認めるときに設計図書を変更できる条項です。変更に伴って必要があると認められるときは、工期や請負代金額を変更し、受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担します。変更の決め方は別の条にあり、工期は第24条、代金は第25条で、どちらも発注者と受注者の協議で定めます。

物価の変動への対応は第26条です。契約を結んだ日から12か月を過ぎた後に、賃金水準や物価水準の変動で請負代金額が不適当になったと認めたときは、相手方に請負代金額の変更を請求できます。変動前の残工事代金額と変動後の残工事代金額の差額のうち、変動前の残工事代金額の1000分の15を超える額について、変更に応じなければなりません(第26条第1項・第2項)。請求の流れはスライド条項の請求の流れ、設計変更の協議は設計変更と工期延長の協議で整理しています。

天災などの不可抗力で、引渡し前の工事目的物などに損害が出たときの負担は第30条です。受注者は損害の状況の確認を受けた後に費用の負担を請求でき(第30条第3項)、発注者は、損害の額と取片付け費用の合計額のうち、請負代金額の100分の1を超える額を負担します(同条第4項)。言い換えると、請負代金額の100分の1までは受注者の負担です。ただし、災害応急対策または災害復旧に関する工事の損害は、発注者が損害合計額を負担します。

検査と支払い(第32条・第33条)

受注者は、工事を完成したときに発注者へ通知します。発注者は、通知を受けた日から14日以内に、受注者の立会いの上で検査を完了し、結果を受注者に通知しなければなりません(第32条第1項・第2項)。検査に合格しないときは、受注者が直ちに修補して、あらためて検査を受けます(同条第6項)。

受注者は、検査に合格した後に請負代金の支払いを請求できます。発注者は、請求を受けた日から40日以内に支払わなければなりません(第33条第1項・第2項)。発注者の責めで検査が遅れたときは、その遅れた日数が40日から差し引かれます(同条第3項)。

完成から入金までの全体の流れは完成検査・引渡し・請求の順序、前払金や部分払は公共工事の代金の支払いで扱っています。前払金や部分払などの支払い(第35条・第38条、第39条で準用する第33条)を発注者が遅らせ、受注者が相当の期間を定めて請求してもなお支払いがなければ、工事の全部または一部を一時中止できる条項もあります(第44条第1項)。中止するときは、理由を明示した書面で直ちに発注者へ通知します。

契約不適合責任と解除(第45条〜第47条・第51条)

引き渡された工事目的物が、種類または品質について契約の内容に合わないとき、発注者は、受注者に修補または代替物の引渡しによる履行の追完を請求できます。追完に過分の費用がかかるときは請求できません(第45条第1項)。

発注者が定めた方法と違う方法でも、発注者に不相当な負担を課さないなら、受注者は違う方法で追完できます(同条第2項)。相当の期間を定めた追完の催告に応じないときは、発注者は不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます(同条第3項)。追完が不能なときなど、催告なしで減額を請求できる場合も、同項に4つ書かれています。

契約の解除は、発注者から出す場合と受注者から出す場合があります。

  • 発注者の任意解除(第46条):工事が完成するまでの間、必要があるときに発注者が解除できます。受注者に損害を及ぼしたときは、損害を賠償します。
  • 発注者の催告による解除(第47条):受注者が一定の事由に当たるとき、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ解除できます。債務の不履行が契約や取引の社会通念に照らして軽微なときは解除できません。
  • 受注者の催告による解除(第51条):発注者が契約に違反したときに、受注者が催告したうえで解除できる条項です。

約款の中で、受注者が契約から生じる権利を第三者に譲渡できるかは第5条です。請負代金債権を担保にする場合は代金債権の譲渡・担保と発注者の承諾を、契約書に書く事項は請負契約書の記載事項を参照してください。

契約書案を受け取ったら確かめること

  • 約款の版:契約書に付いた約款が標準約款のどの版に基づくか。条の番号が上の表と同じか。
  • 空欄だった数字:協議開始の日数、保証の額の割合、前払金の割合、部分払の回数がいくつになっているか。
  • 設計図書の特約:約款は「設計図書に特別の定めがある場合を除き」という形の条項が多くあります。特記仕様書や現場説明書の特約が約款に優先する箇所がないか。
  • 書面で出す手続き:工期延長の請求、確認の請求、物価変動の請求の宛先と様式。監督員を置く工事では、設計図書に定めるものを除き、監督員を経由して出す扱いになります(第9条第5項)。
  • 支払いの条件:検査の日数と、請求から支払いまでの日数が約款どおりか。

契約に関わる判断が必要なときは、発注者の契約担当、または弁護士などの専門家に確かめてください。入札参加資格と経審の全体像はインターネット一元受付の審査・認定の流れ、契約時の保証は契約保証の種類と免除の条件で確認できます。

確認した一次資料

まとめ

  • 標準約款は雛形で、日数や割合の空欄は発注者が契約ごとに決めます。契約書に付いた約款で確かめます。
  • 工期は第20条〜第24条、設計と代金の変更は第18条・第19条・第25条・第26条にあります。
  • 完成の検査は通知から14日以内(第32条)、代金の支払いは請求から40日以内(第33条)です。
  • 引渡し後の不具合は契約不適合責任(第45条)、解除は第46条・第47条・第51条です。

この記事は標準約款の条項の整理で、個別の契約の解釈や法律相談は行いません。契約の条件は、契約書と発注者の案内で確認してください。

よくある質問

公共工事の請負契約で、工期の延長を請求できるのはどんなときですか?
標準約款の第22条第1項は、天候の不良や関連工事の調整への協力など、受注者の責めに帰すことができない事由で工期内に完成できないとき、理由を明示した書面で発注者に工期の延長を請求できると定めています。
完成検査と代金の支払いは、何日以内ですか?
標準約款の第32条第2項は、完成の通知を受けた日から14日以内に発注者が検査を完了すると定め、第33条第2項は、検査合格後の請求から40日以内に請負代金を支払うと定めています。
標準約款の「かし担保」は、今はどの条ですか?
現行の標準約款では「契約不適合責任」として第45条にあります。引き渡された工事目的物が契約の内容に適合しないとき、発注者は修補や代替物の引渡しによる追完を請求でき、相当の期間を定めた催告に応じないときは代金の減額も請求できます。
標準約款の「○日以内」の日数は、約款に書いてありますか?
標準約款では、協議開始の日数や保証の額の割合などが「○」の空欄になっていて、発注者が契約ごとに決めます。実際の日数は契約書に付いた約款で確かめます。
約款に定める請求や通知は、口頭でもよいですか?
標準約款の第1条第5項は、約款に定める催告、請求、通知、報告、申出、承諾および解除は書面で行うと定めています。監督員を置く工事では、設計図書に定めるものを除き、監督員を経由して行います(第9条第5項)。

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