建設工事の請負契約書の記載事項|建設業法第19条の15項目と追加工事の書面
建設工事の請負契約書に書く事項を、建設業法第19条の条文に沿って整理します。契約書を作らない・追加工事を口約束で進めるといけない理由と、書面を残す先も説明します。
建設業法・同法施行規則(e-Gov法令検索)工事を受注するたびに、請負契約書の項目が足りているかを確かめる場面があります。この記事は、建設業法が契約書に書くよう求める事項を条文の順に並べ、追加工事や設計変更のときに書面を交わす決まりと、契約書を後で使う場面をまとめます。契約書の雛形は載せません。
契約書を交わす義務(第19条第1項)
建設業法第19条第1項は、建設工事の請負契約の当事者に、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付することを求めています。発注者と元請だけでなく、元請と下請の間の契約も「請負契約の当事者」です。第18条は、契約は対等な立場の合意に基づいて公正に結び、信義に従って誠実に履行するという原則を定めています。
条文が定める記載事項の一覧
第19条第1項の各号を、使い道を添えて表にします。使い道の欄は、この記事の整理による見方で、条文の文言ではありません。
| 号 | 条文が定める事項 | 実務での確認の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 工事内容 | 工事名・場所・範囲が見積書と合っているか |
| 2 | 請負代金の額 | 税込みか税抜きか、見積書の金額と一致しているか |
| 3 | 工事着手の時期、工事完成の時期 | 工期の始まりと終わりの日付 |
| 4 | 工事を施工しない日または時間帯の定めをするときは、その内容 | 定めをする場合だけ。休工日や作業時間の制限 |
| 5 | 前金払または出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期と方法 | 定めをする場合だけ。前払金・部分払いの有無 |
| 6 | 設計変更、工事着手の延期、工事の中止の申出があった場合の、工期の変更・請負代金の額の変更・損害の負担とその額の算定方法 | 追加工事のときの金額の決め方 |
| 7 | 天災その他不可抗力による工期の変更・損害の負担とその額の算定方法 | 台風や地震で止まったときの扱い |
| 8 | 価格等の変動・変更に基づく工事内容の変更・請負代金の額の変更とその額の算定方法 | 資材価格が動いたときの協議の方法 |
| 9 | 工事の施工により第三者が損害を受けた場合の賠償金の負担 | 近隣への損害の負担先 |
| 10 | 注文者が資材を提供し、または建設機械などを貸与するときは、その内容と方法 | 支給材・貸与機械がある場合だけ |
| 11 | 注文者が完成を確認する検査の時期と方法、引渡しの時期 | 検査日と引渡日の関係 |
| 12 | 工事完成後の請負代金の支払の時期と方法 | 支払日・支払方法。公共工事の資金繰りは公共工事の代金の払われ方の記事で確認できます |
| 13 | 目的物が種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合の担保責任、または保証保険契約の締結などの措置の定めをするときは、その内容 | 定めをする場合だけ。契約不適合への責任 |
| 14 | 履行の遅滞その他の債務不履行の場合の、遅延利息・違約金その他の損害金 | 遅れたときのペナルティ |
| 15 | 契約に関する紛争の解決方法 | 協議・調停などの定め |
| 16 | その他国土交通省令で定める事項 | 省令の内容は建設業法施行規則で確かめます |
第4号・第5号・第10号・第13号は、条文が「定めをするときは」「提供・貸与するときは」と書いているため、該当する取り決めがあるときに書く事項です。それ以外の号は、契約の締結に際して書く事項として並んでいます。
追加工事・設計変更は書面で残す(第19条第2項)
第19条第2項は、請負契約の内容のうち第1項に掲げる事項に当たるものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付することを求めています。工期や代金の額を変える追加工事・設計変更は、これに当たります。着工後に現場で口頭の合意だけで進めると、あとで金額や工期の食い違いを書面で示せません。
- 変更の前後で残すもの:変更の内容、変更後の工期、変更後の代金の額を書面に書きます。
- 算定方法の定め:第6号は、設計変更などの申出があった場合の工期・代金・損害負担の算定方法を、最初の契約書に書く事項としています。変更が起きる前に決めておくと、追加分の金額の根拠になります。
電子契約でもよいか(第19条第3項)
第19条第3項は、第1項と第2項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使う方法その他の情報通信の技術を利用する方法で、書面に準ずるものとして国土交通省令で定める措置を講じることができるとしています。措置を講じた者は書面の措置をしたものとみなされます。相手方の承諾が要る点と、省令が定める方法に当たる必要がある点は、条文のとおりです。具体的な方法は施行規則第13条の4で確かめてください。
書面を作らない・条件が悪いと起きること
条文から読み取れる結果を、根拠の条とあわせて整理します。個別の処分の可否は、許可を受けた行政庁が判断します。
| 場面 | 根拠 | 条文が定めること |
|---|---|---|
| 書面を交わさない、記載が欠けている | 第28条 | 許可を受けた建設業者がこの法律の規定に違反した場合、国土交通大臣または都道府県知事は必要な指示ができます。指示に従わないときは、1年以内の期間を定めて営業の全部または一部の停止を命じることができます。 |
| 原価に満たない請負代金 | 第19条の3 | 注文者は取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金とする契約を結んではなりません。建設業者も、国土交通省令が定める正当な理由がある場合を除き、原価に満たない金額での契約を結んではなりません。 |
| 著しく短い工期 | 第19条の5 | 注文者も建設業者も、通常必要と認められる期間に比べて著しく短い期間を工期とする契約を結んではなりません。 |
| 見積りの期間と条件の提示 | 第20条第3項 | 注文者は、契約を結ぶまで(入札は入札を行うまで)に、第19条第1項各号(第2号を除く)の事項についてできる限り具体的な内容を提示し、見積りに必要な期間として政令で定める期間を設けなければなりません。 |
契約の書面が無いと、金額・工期・支払日・追加分の扱いを後から示す根拠が弱くなります。条文が書面の交付を義務にしているのはそのためです。
契約書を後で使う場面
- 経営事項審査の確認書類:工事請負契約書は、完成工事高などの確認書類として使います。必要な組み合わせと選び方は経審の確認書類のチェックシートで確かめられます。
- 帳簿に添付する書類:施行規則第26条第2項は、建設業法第40条の3の帳簿に、第19条第1項と第2項の規定による書面またはその写しを添付することを求めています。
- コリンズの工事カルテ:公共工事の受注後の登録で、契約金額や工期などを契約書から写します。登録の対象かどうかはコリンズ登録が必要な工事・不要な工事、入力項目はコリンズ受注登録の入力項目の記事で確かめられます。
読むときの注意
- 様式は載せません:この記事は条文の整理で、契約書の雛形ではありません。標準的な約款は、国や発注者が公開する資料を使います。
- 公共工事の約款:公共工事では発注者が定める約款が使われます。記載事項の細かい扱いは、発注者の契約書で確かめます。
- 省令の事項:第16号の事項は、施行規則の最新の条文で確かめます。
- 個別の判断:具体的な契約が条文に合うかは、許可を受けた行政庁や契約に詳しい専門家に確認してください。当サイトは個別の助言をしません。
次に知りたいこと
- 経審の確認書類:『経審の確認書類のチェックシート』
- コリンズ登録の対象:『コリンズ登録が必要な工事・不要な工事』
- 契約書の項目の写し先:『コリンズ受注登録の入力項目』
確認した一次資料
- 建設業法 第18条・第19条(請負契約の内容)・第19条の3・第19条の5・第20条・第28条記載事項、変更の書面、電子的措置、原価割れ・短工期の禁止、指示・営業停止
- 建設業法施行規則 第26条(帳簿の添付書類)契約書の書面またはその写しを帳簿に添付すること
上の法令2件は、同じ法令の条文ページ(e-Gov法令検索)へのリンクです。条番号で該当の条を開いてください。
まとめ
- 請負契約は、第19条第1項の事項を書面に書き、署名または記名押印をして相互に交付する(元請と下請の間も同じ)。
- 記載事項は工事内容・代金・工期から紛争解決方法まで15号と、省令が定める事項。定めをするときだけ書く号もある。
- 追加工事や設計変更で第1項の事項が変わるときは、変更の内容も書面で交わす(第19条第2項)。
- 電子契約は、相手方の承諾と省令が定める方法に当たることが条件(第19条第3項)。
- 契約書は経審の確認書類、帳簿の添付書類、コリンズの登録元として後で使う。
この記事は公式資料の整理です。個別の契約が条文に合うかは、許可を受けた行政庁や専門家に確認してください。当サイトの試算は本人利用の概算で、正式な評点は審査結果が優先します。
よくある質問
- 建設工事の請負契約書には何を書きますか?
- 建設業法第19条第1項が、工事内容、請負代金の額、着手と完成の時期、支払の時期と方法、設計変更や不可抗力のときの扱い、検査と引渡しの時期、紛争の解決方法など16号の事項を定めています。第16号は国土交通省令で定める事項です。
- 追加工事も書面が必要ですか?
- はい。同条第2項は、第1項の事項に当たる契約内容を変更するときは、変更の内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付することを求めています。
- 請負契約書は電子契約でもよいですか?
- 同条第3項により、相手方の承諾を得て、書面に準ずるものとして国土交通省令で定める情報通信の技術を利用した措置を講じれば、書面の措置をしたものとみなされます。
- 契約書を作らないとどうなりますか?
- 建設業法第28条により、許可を受けた建設業者がこの法律の規定に違反した場合、国土交通大臣または都道府県知事は必要な指示ができ、指示に従わないときは1年以内の営業停止を命じることができます。
公開日: 2026-10-15
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