特定建設業の財産要件を更新前に確かめる方法|決算変更届の貸借対照表の見る場所
特定建設業の許可の更新を控えた会社が、財産要件(欠損比率・流動比率・資本金・自己資本)を、手元の決算変更届の貸借対照表で事前に計算するための手順です。基準の数字は建設業法と国土交通省の資料で確認し、更新のときに財産要件がどう扱われるかも整理します。
建設業法・施行規則・許可事務ガイドラインで確認特定建設業の許可は、5年ごとの更新で失効を防ぎます。一方、特定の財産要件は、決算で欠損が出たり、減資や配当で純資産が減ったりすると外れることがあります。更新の申請書を作る前に、直前の決算の貸借対照表で4つの数字を自分で計算しておくと、更新の見通しが早く立ちます。基準の内容そのものは『建設業許可の財産的基礎』で整理しているため、この記事では「決算変更届のどこを見て、更新でどう扱われるか」に絞ります。
特定の財産要件:4つの数字
建設業法第15条第3号は、特定建設業の許可を受ける者に、発注者との請負契約(請負代金が政令で定める金額以上のもの)を履行するに足りる財産的基礎を求めています。国土交通省の許可事務ガイドラインは、次のすべてを満たす者を、倒産することが明白である場合を除き、この基準を満たすものとして取り扱うとしています。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 欠損比率 | 欠損の額が資本金の額の20%を超えていない |
| 流動比率 | 流動資産÷流動負債が75%以上 |
| 資本金 | 2,000万円以上 |
| 自己資本 | 4,000万円以上 |
4つのうち1つでも外れると基準を満たしません。一般建設業のように「500万円の自己資本、またはほかの方法のどれか1つ」で代えることはできません。
決算変更届の貸借対照表のどこを見るか
毎事業年度終了後に出す決算変更届には、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表を付けます(建設業法施行規則第10条第1項第1号。株式会社以外の法人は別記様式第15号から第17号の2、小会社を除く株式会社は第17号の3まで)。このうち貸借対照表(様式第15号)だけで、4つの数字がそろいます。ガイドラインが示す用語の定義と、貸借対照表の見る場所を対応させると次のとおりです。
| 確かめる数字 | ガイドラインの定義 | 貸借対照表で見る場所 |
|---|---|---|
| 資本金 | 法人は、株式会社の払込資本金、持分会社等の出資金額 | 純資産の部の資本金 |
| 自己資本 | 法人は、貸借対照表の純資産合計の額 | 純資産の部の合計 |
| 流動比率 | 流動資産を流動負債で除した数値を百分率で表したもの | 流動資産の合計と、流動負債の合計 |
| 欠損の額 | 繰越利益剰余金が負の場合に、その額が資本剰余金・利益準備金・任意積立金の合計を上回る額 | 純資産の部の繰越利益剰余金、資本剰余金、利益準備金、任意積立金 |
勘定科目の並びや名称は会社の様式で異なります。表の「見る場所」は定義からの対応づけです。迷う科目は、顧問の税理士・公認会計士か許可行政庁の窓口で確かめてください。
計算の手順と見落としやすい点
- 直前の決算の貸借対照表を用意します。ガイドラインは、既存の企業の判断は申請時の直前の決算期の財務諸表で行うとしています。
- 資本金が2,000万円以上か、純資産合計が4,000万円以上かを見ます。
- 流動資産合計を流動負債合計で割り、100を掛けます。75%以上かを見ます。
- 繰越利益剰余金がマイナスのときだけ、欠損の額を求めます。マイナスの額から、資本剰余金・利益準備金・任意積立金の合計を引いた額が、欠損の額です(合計のほうが大きければ、欠損はありません)。それが資本金の20%以内かを見ます。
見落としやすい点が3つあります。
- 欠損は「繰越利益剰余金のマイナスそのもの」ではありません。資本剰余金などで埋められる分を引いた額で判断します。
- 経審の指標とは別物です。経審のY点の指標に流動比率はなく、X2の自己資本額は点数の算出に使います。許可の合否の基準に経審の点を当てはめないでください(違いは『建設業許可の財産的基礎』の比較表にまとめています)。
- 決算変更届の期限は別にあります。事業年度終了後4か月以内の提出です。数字を確かめるための決算変更届が未提出だと、更新の準備の前提がそろいません。期限は『建設業の決算変更届とは』で確認してください。
更新では財産要件はどう扱われるか
更新の申請書に付ける書類
建設業法施行規則第4条第6項は、許可の更新を申請する者は、同条第1項の第6号から第11号と第13号から第16号の書類の提出を省略できるとしています(ただし一部は記載事項に変更がない場合に限る)。この省略の対象には、財務諸表や納税の書面が含まれます。つまり、更新の申請書に貸借対照表を付け直さなくても出せる仕組みです。ここから「更新では財産要件を見られない」と読むのは誤りです。
要件を満たしているかの確認
建設省(当時)の建設業課長通知(平成12年6月1日 建設省経建発第111号)は、特定建設業者の許可の更新について、許可を更新する場合には許可要件を満たしていることを確認する、と書いています。この通知は経営再建中の業者の事務の取扱いを定めたものですが、前提として、更新の際にも特定の財産要件の審査があることが読み取れます。通知の日付は古いため、現在の運用は許可行政庁の最新の手引きや窓口で確かめてください。
許可の「後」に基準を外れたとき
ガイドラインは、第15条第3号の基準に適合するかは許可を行う際に判断するもので、許可をした後にこの基準を適合しないこととなっても直ちに当該許可の効力に影響を及ぼすものではない、としています。これは、5年の途中で決算が悪化しても、すぐに許可が消えるわけではないという意味です。ただし、その次の更新の審査では、改めて直前の決算で確認されます。
外れていたとき、外れそうなとき
前述の建設業課長通知は、申請日の直前の決算では要件を満たさなくても、許可の更新の日までに要件を満たすことになる場合などの扱いを示しています。たとえば、減資を行った場合、債務免除を受けた場合、不動産処分や増資などの財務状況の改善で要件を満たす場合は、定められた書類(登記簿謄本、債権者の同意書、会計処理について弁護士・公認会計士などが格段の異議を述べていないことを示す文書など)で確認するとしています。また、更新の日の直前の決算期で要件を満たす見込みなら、その決算の財務諸表を提出して確認するまで、更新が留保されます。
この扱いは、経営再建中の業者を想定した通知の内容です。どの会社でも使える手続きではなく、自社が当てはまるかは許可行政庁の担当窓口に事前に問い合わせる前提で読んでください。
確認の順番は次のとおりです。
- 直前の決算で、4つの数字を計算する。
- 外れていれば、更新の申請期限(有効期間満了の30日前まで。施行規則第5条)から逆算して、窓口に早めに問い合わせる。
- 一般建設業への切り替えを検討する場合は、『般・特新規の手続き』の「特定から一般へ戻すとき」を確認する。
- 更新全体の流れは『建設業許可の更新』で確認する。
確認した一次資料
- 建設業法(e-Gov法令検索)第15条第3号(特定建設業の財産的基礎)
- 建設業法施行規則(e-Gov法令検索)第4条第6項(更新の添付書類の省略)、第5条(更新の申請期限)、第10条(決算変更届の添付書類)
- 国土交通省 建設業許可事務ガイドラインについて第15条第3号関係(特定の4つの基準、欠損・流動比率・資本金・自己資本の定義、許可後に基準を外れた場合の扱い)
- 建設省経建発第111号(平成12年6月1日)経営再建中の建設業者に係る建設業法上の事務の取扱いについて特定建設業の財産的基礎の要件の審査、許可の更新の留保
確認日:2026年10月24日。基準や運用は変わることがあるため、申請の前に、許可行政庁の最新の手引きで確かめてください。
まとめ
- 特定の財産要件は、欠損比率20%以内、流動比率75%以上、資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上のすべて。
- 決算変更届の貸借対照表(様式第15号)だけで4つの数字がそろう。欠損は、繰越利益剰余金のマイナスから資本剰余金などを引いた額で見る。
- 更新の申請書は財務諸表の添付を省略できるが、財産要件を見られないという意味ではない。
- 許可後に基準を外れても直ちに許可の効力には影響しないが、次の更新では直前の決算で確認される。
- 外れていたら、申請期限から逆算して早めに窓口へ問い合わせる。減資・債務免除などでの扱いは経営再建中の業者向けの通知で、古い日付のため現行の運用を窓口で確かめる。
この記事は法令と国土交通省の資料の整理です。税務・会計の処理や個別の許可の可否は、許可行政庁の窓口や顧問の専門家に確認してください。正式な評点は審査結果が優先します。評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。
よくある質問
- 特定建設業の財産要件は何ですか?
- 国土交通省の許可事務ガイドラインは、欠損の額が資本金の20%を超えていないこと、流動比率が75%以上であること、資本金が2,000万円以上で自己資本が4,000万円以上であることのすべてを満たす者を、倒産することが明白である場合を除き、基準を満たすものとして取り扱うとしています。
- 財産要件は決算変更届のどこで確かめますか?
- 貸借対照表(様式第15号)で確かめます。資本金は純資産の部の資本金、自己資本は純資産合計、流動比率は流動資産合計÷流動負債合計、欠損は繰越利益剰余金のマイナスが資本剰余金・利益準備金・任意積立金の合計を上回る額です。
- 更新の申請書に貸借対照表を付けなくてよいなら、財産要件は見られませんか?
- 見られないとは言えません。施行規則第4条第6項は更新の添付書類の一部を省略できるとするだけで、建設省の課長通知(平成12年6月1日 経建発第111号)は、許可を更新する場合には許可要件を満たしていることを確認するとしています。現在の運用は許可行政庁の手引きで確かめてください。
- 許可を取った後に財産要件を外れたら、許可は失効しますか?
- ガイドラインは、基準は許可を行う際に判断するもので、許可後に適合しなくなっても直ちに許可の効力には影響しないとしています。ただし次の更新の審査では、直前の決算で改めて確認されます。
- 直前の決算で外れていたら、更新はできませんか?
- 前述の課長通知は、減資、債務免除、財務状況の改善などで更新の日までに要件を満たす場合の確認書類や、更新の留保の扱いを示しています。経営再建中の業者を想定した通知で日付も古いため、自社が当てはまるかは許可行政庁の窓口に早めに問い合わせてください。
公開日: 2026-10-24
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