契約・書類

工事の請負で揉めたときの窓口|建設工事紛争審査会(あっせん・調停・仲裁)

建設工事紛争審査会が扱う紛争、中央と都道府県の分かれ方、申請先の探し方、申請書類に添える書面を整理しました。

確認日 2026年10月19日
編集:建設経営ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

工事代金が支払われない、完成後の不具合の補修をめぐって話が合わない、追加工事の代金で折り合わない。こうしたとき、事務担当が最初に知っておきたい窓口が、建設業法に基づいて国土交通省と各都道府県に置かれている建設工事紛争審査会です。このページは、その窓口の案内に限ります。紛争の勝ち負けや、請求できる金額の判断は扱いません。

建設工事紛争審査会とは(建設業法第25条)

建設業法第25条は、建設工事の請負契約に関する紛争の解決を図るため、建設工事紛争審査会を設置すると定めています。審査会は、この紛争について「あっせん」「調停」「仲裁」を行う権限を持ちます。審査会は、国土交通省に置く中央建設工事紛争審査会(中央審査会)と、各都道府県に置く都道府県建設工事紛争審査会(都道府県審査会)の2種類です。

国土交通省のページは、審査会を、法律・建築・土木などの専門家の委員の知見を活かして、紛争の簡易・迅速・妥当な解決を図る公的機関と説明しています。裁判所の外で紛争を扱う仕組み(裁判外紛争処理)にあたる準司法的機関です。建設業者に行政上の指導監督をする機関や、技術的な鑑定をする機関ではありません。

建設業者が審査会に申請して申請人になった場合や、相手方になった場合でも、建設業の許可や公共工事の入札などで不利益を受けることはないと、同じページに書かれています。

審査会が扱う紛争と、扱えない紛争

審査会が扱うのは「建設工事の請負契約に関する紛争」です。当事者の一方または双方が建設業者で、工事の不具合や請負代金の未払いなど、工事請負契約の解釈や実施をめぐる紛争が対象です。契約の直接の当事者どうしの紛争であることも条件です。

国土交通省のページが示す、扱える紛争と扱えない紛争の例
区分例
扱える注文者と元請負人の間、元請負人と下請負人の間、一次下請負人と二次下請負人の間など、契約の直接の当事者の間の紛争
扱える(紛争の種類)契約の解除、工事の不具合、工事代金の支払い、下請代金の支払いに関する紛争
扱えない直接の契約関係にない元請と孫請の間の紛争、近隣住民と請負人の間の工事騒音の紛争
扱えない不動産の売買契約、専ら建物の設計監理契約、雇用契約に関する紛争

発注者との間の追加変更工事の代金の請求や、下請代金の未払いは、国土交通省のページが代表的な例として挙げています。設計変更の協議の進め方は設計変更と工期延長の協議で整理しています。

あっせん・調停・仲裁の3つの手続

審査会の手続は、あっせん、調停、仲裁の3種類です。申請する人が、事件の内容、解決の難しさ、緊急性などを考えて、どの手続にするかを選びます。いずれの手続も、原則として非公開です。

  • あっせん・調停:建設業法第25条の11は、当事者の双方または一方からの申請があったときに、審査会があっせんまたは調停を行うと定めています。調停は3人の調停委員が行います。審査会は、必要があると認めるときに当事者の出頭を求めて意見を聞き、調停案を作って受諾を勧告できます(第25条の13)。
  • 仲裁:仲裁を申請するには、当事者の間で仲裁合意書が作られていることが必要です。国土交通省のページが、この条件を明記しています。

申請書が提出されると、法律・建築・土木などの専門家の中から担当委員が指名されます。担当委員は双方の主張を聞き、原則として双方が出した証拠をもとに解決を図ります。双方と担当委員がそろう「審理」は、各審査会の所在地で開かれます。中央審査会では原則として国土交通省本省(東京都千代田区霞が関)が会場で、月1回程度(1回あたり1〜2時間程度)のペースとされています。何回の審理が必要かは、手続の種類や事件の難しさで、事件ごとに違います。

各手続の細かな違い(進め方の流れや結果の効力)は、国土交通省のページと、各審査会の手引で確認してください。

中央か都道府県か:申請先の探し方

申請先は、当事者である建設業者の許可の区分で決まります。建設業法第25条の9の定めは次のとおりです。

管轄の分かれ方(建設業法第25条の9)
審査会管轄する場合
中央審査会当事者の双方が国土交通大臣の許可を受けた建設業者のとき/双方が建設業者で、許可をした行政庁が違うとき/一方のみが建設業者で、国土交通大臣の許可を受けているとき
都道府県審査会当事者の双方がその都道府県の知事の許可を受けた建設業者のとき/一方のみが建設業者で、その都道府県の知事の許可を受けているとき/双方が許可を受けない者で、工事現場がその都道府県内にあるとき/一方のみが許可を受けない者で、工事現場がその都道府県内にあるとき(中央審査会の管轄にあたる場合を除く)

当事者の双方が合意すれば、管轄にかかわらず、どの審査会にも申請できます(第25条の9第3項)。この場合は、申請書に管轄合意書を添えると、国土交通省のページに書かれています。

どの審査会が管轄するか分からないときは、まず中央審査会に問い合わせます。国土交通省のページは、管轄の説明を受けられると案内しています。中央審査会の事務局は、国土交通省不動産・建設経済局建設業課の紛争調整官室で、電話は03-5253-8111(内線24764)と掲載されています。各都道府県の審査会の事務局(担当部局)と電話番号は、国土交通省の「全国の建設工事紛争審査会(事務局)一覧」にまとまっています。

自社の許可が国土交通大臣許可か都道府県知事許可かは、許可通知書の記載で確かめます。相手方の許可は、企業情報検索システムで取引先の許可を確かめる手順で、許可番号や許可行政庁を調べられます。

申請書類と、手元に揃えておく書面

国土交通省のページによると、申請は、申請書、添付書類、証拠書類、申請手数料、通信運搬費を、管轄する審査会の事務局に提出して行います。郵送でも申請できますが、書類に不備があると受理できないことがあるため、できる限り事務局に直接提出するよう案内されています。

申請書類の区分(国土交通省のページ)
区分内容
申請書中央審査会の「申請書・答弁書作成の手引」の記載例を参考に作る。記載項目は建設業法で決められている
添付書類当事者が法人のときは登記事項証明書。手続をほかの人に任せるときは委任状。仲裁のときは仲裁合意書。合意で管轄を定めたときは管轄合意書
証拠書類契約書、注文書、請書、契約約款、設計図、建築確認通知書、現場写真などの写し。工事請負契約書は最も基本的な証拠で、必ず提出する

書類の部数は、申請書と証拠書類が正本1部と副本4部(あっせんは副本2部)、添付書類が正本1部です。

揉めてから探すと見つからないのが証拠書類です。事務担当としては、次のような書面を、工事ごとにまとめて保管しておくと、いざというときに慌てずに済みます。上の表にある書類は国土交通省のページが挙げたもので、それ以外はこのページの整理です。審査会が指定する書類ではないため、実際に何が必要かは、管轄する審査会の事務局に確かめてください。

  • 契約書類(審査会のページが挙げる書類):工事請負契約書、注文書、請書、契約約款、設計図、建築確認通知書。契約書の記載事項は請負契約書の記載事項で整理しています。
  • 現場の記録(審査会のページが挙げる書類):現場写真。写真の撮り方と整理の基準は工事写真の管理基準にあります。
  • 変更の経緯(このページの整理):追加や変更を依頼された書面、見積書、変更に合意した書面、メールや打合せ記録の日付。口頭だけで進めた内容は、後から確かめにくくなります。
  • 支払いの経緯(このページの整理):請求書、検収の通知、入金の記録。流れは完成検査・引渡し・請求の順序で整理しています。

費用の考え方

国土交通省のページは、手続に必要な費用として、申請手数料、通信運搬費、その他の費用を挙げ、原則として両当事者がそれぞれ自分の出費分を負担するとしています。

  • 申請手数料:あっせん、調停、仲裁ごとに、請求する事項の価額に応じて決まります。中央審査会では収入印紙、都道府県審査会では収入証紙(現金による審査会もあります)で納めます。あっせん・調停で第1回の審理の前に申請を取り下げた場合や、仲裁で審理が開かれずに終了の決定がされた場合は、2分の1相当額が還付されます。
  • 通信運搬費:事務局が書類を送る費用で、現金で予納し、手続の終了後に精算されます。

手数料の金額は、請求する事項の価額に応じた算出表で決まります。このページには金額を載せません。国土交通省の「紛争処理に要する費用」のページと、申請先の審査会で確かめてください。

揉めたとき、事務担当が最初にすること

  1. 契約書と約款を取り出す:契約書、注文書、請書、約款をそろえ、揉めている点がどの条項に関わるかを見ます。約款の条項の位置は公共工事標準請負契約約款の確認条項にまとめています。
  2. 経緯の書面と写真を時系列に並べる:日付のある書面を、依頼、変更、完成、請求、支払いの順に並べます。
  3. 相手方の許可の区分を確かめる:自社と相手方が、国土交通大臣許可か都道府県知事許可か、許可を受けていないかを確認します。申請先を考える材料になります。
  4. 管轄する審査会の事務局に問い合わせる:申請方法は管轄する審査会の事務局に問い合わせるよう、国土交通省のページが案内しています。管轄が分からなければ中央審査会に問い合わせます。
  5. 法律上の判断は専門家に確かめる:請求できるかどうか、どの手続が合うかは、事案ごとに違います。弁護士などの専門家に確かめてください。

引渡し後に不具合を指摘されたときの通知期間や請求期間は工事の引渡し後の契約不適合責任の記事で整理しています。この記事は、当事者どうしで話し合いが進まないときの審査会という窓口に限った案内です。

確認した一次資料

まとめ

  • 工事の請負契約をめぐる紛争の窓口は、建設業法第25条に基づく建設工事紛争審査会で、あっせん・調停・仲裁を行います。
  • 契約の直接の当事者の間の紛争が対象です。元請と孫請の間や、近隣住民との紛争は扱えません。
  • 申請先は、当事者の許可の区分で中央審査会か都道府県審査会かが決まります。分からなければ、まず中央審査会に問い合わせます。
  • 証拠書類は、契約書、注文書、請書、約款、設計図、現場写真などの写しです。揉める前から工事ごとに保管しておきます。
  • 手数料は請求する事項の価額に応じて決まります。金額は国土交通省のページと申請先で確かめます。

この記事は建設工事紛争審査会の窓口の案内で、個別の紛争の見通しや法律上の判断は扱いません。手続の詳細は、国土交通省のページと、管轄する審査会の事務局で確認してください。

よくある質問

建設工事紛争審査会はどんな紛争を扱いますか?
建設工事の請負契約に関する紛争のうち、契約の直接の当事者の間の紛争です。工事の不具合、請負代金や下請代金の未払い、契約の解除などが例に挙がっています。直接の契約関係にない元請と孫請の間の紛争や、近隣住民との紛争は扱えません。
審査会の手続にはどんな種類がありますか?
あっせん、調停、仲裁の3種類です。申請する人が選び、仲裁を申請するには当事者の間で仲裁合意書が作られている必要があります。いずれも原則として非公開です。
中央審査会と都道府県審査会はどう分かれますか?
当事者の建設業者の許可の区分で決まります。たとえば双方が国土交通大臣の許可を受けた建設業者なら中央審査会、双方が同じ都道府県の知事の許可を受けた建設業者ならその都道府県の審査会です。管轄が分からないときは、まず中央審査会に問い合わせるよう国土交通省のページが案内しています。
申請のときに添える証拠書類は何ですか?
国土交通省のページは、契約書、注文書、請書、契約約款、設計図、建築確認通知書、現場写真などの写しを挙げ、工事請負契約書は必ず提出するとしています。

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