ガイド

工事の引渡し後の契約不適合責任|民法の通知期間と公共工事標準約款の請求期間

工事を引き渡した後に不具合を指摘されたとき、請負側の事務担当が確認する点を整理します。民法の1年の通知期間、公共工事標準請負契約約款の請求期間(原則2年・設備機器は原則1年)、住宅新築の10年の違いと、契約書で確かめる欄を書きます。

民法第636条・第637条/公共工事標準請負契約約款 第45条・第57条
編集:建設経営ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営者情報

完成検査に通って引渡しが終わっても、請負側の責任がそこで終わるわけではありません。引渡し後に「契約の内容に合っていない」と言われたとき、いつまで、何を求められるのかは、民法の定めと、契約書に付く約款の定めで変わります。この記事は、公共工事標準請負契約約款と民法の条文を基準にしています。個別の契約では、その契約書の約款が優先します。

契約不適合責任とは何か

引き渡された工事の目的物が、種類や品質について契約の内容に合っていないことを「契約不適合」といいます。契約不適合があるとき、請負人が負う責任が契約不適合責任です。以前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものに当たります。

公共工事標準請負契約約款の第45条は、発注者が受注者に求められることとして、次の2つを定めています。

  • 履行の追完:目的物の修補、または代替物の引渡し。ただし、追完に過分の費用がかかるときは請求できません。受注者は、発注者に不相当な負担を課さないときは、発注者が請求した方法と異なる方法で追完することもできます。
  • 代金の減額:発注者が相当の期間を定めて追完を催告し、その期間内に追完がないとき、不適合の程度に応じて請求できます。追完が不能のときなど4つの場合は、催告なしで直ちに請求できます。

約款の第57条は、この2つに加えて損害賠償の請求と契約の解除も「請求等」として扱い、その期間を定めています(次の節以降)。

民法の定め:知った時から1年以内の通知

民法第637条第1項は、注文者が不適合を知った時から1年以内にそのことを請負人に通知しないと、注文者は履行の追完・報酬の減額・損害賠償・契約の解除を請求できなくなる、と定めています。

項目民法の定め
数える起点「引渡しから」ではなく、注文者が不適合を知った時
期間1年以内に請負人へ通知する
期間が適用されない場合引渡しの時に、請負人が不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかったとき(第637条第2項)
注文者の材料・指図によるとき注文者が用意した材料の性質や、与えた指図によって生じた不適合は、請求できない。ただし、請負人がその材料や指図が不適当だと知りながら告げなかったときは別(第636条)

このため、民法のとおりに考えると、引渡しから何年経っても、不適合に気づいてから1年以内の通知があれば請求の余地が残ります(債権の消滅時効は別に働きます)。契約書の約款で期間を決めているのは、この不確かさを避けるためです。

公共工事標準請負契約約款の定め

公共工事標準請負契約約款の第57条(契約不適合責任期間等)は、請求できる期間を契約で決める形にしています。条文の期間の欄は「○年」で、注記に記入する年数の原則が書かれています。

項内容
第1項引渡しを受けた日から○年以内でなければ、追完・損害賠償・代金の減額・契約の解除の請求等ができない。○には原則として2を記入する
第2項設備機器本体等の契約不適合は、引渡しの時に発注者が検査して直ちに追完を請求しなければ受注者は責任を負わない。ただし、その検査で一般的な注意の下では見つけられなかったものは、引渡しを受けた日から○年が経過する日まで請求できる。○には原則として1を記入する
第3項請求等は、不適合の内容、請求する損害額の算定の根拠など、請求の根拠を示して、責任を問う意思を明確に告げる方法で行う
第4項期間内に不適合を知って受注者に通知した場合に、通知から1年が経過する日までに第3項の方法で請求等をしたときは、期間内に請求したものとみなす
第5項請求等をした場合、その不適合について、民法の消滅時効の範囲で、ほかの必要な請求等もできる
第6項不適合が受注者の故意または重大な過失で生じたときは、第1項から第5項までは適用せず、受注者の責任は民法の定めによる
第7項民法第637条第1項(知った時から1年以内の通知)は、この契約不適合責任期間には適用しない
第8項発注者が引渡しの際に不適合があることを知ったときは、直ちに受注者に通知しなければ、その不適合の請求等はできない。ただし、受注者がその不適合を知っていたときは別
第10項不適合が支給材料の性質や、発注者・監督員の指図によって生じたときは、請求等はできない。ただし、受注者がその材料や指図が不適当だと知りながら通知しなかったときは別
注意:期間の年数は、標準約款の注記が示す原則です。実際の契約では、発注者が年数を別に決めていることがあります。条の番号も、発注者独自の約款では違うことがあります。自分の契約書の約款で、期間の欄の数字を確かめてください。

請負側にとって実務上大きいのは、第4項と第6項です。期間内に通知を受けていれば、請求そのものが期間の後に来ても有効になることがあります。故意または重大な過失の場合は、約款の期間の制限が外れ、民法の定めに戻ります。

住宅の新築は10年

契約が、住宅の品質確保の促進等に関する法律第94条第1項の住宅新築請負契約である場合、住宅のうち構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の瑕疵(構造耐力や雨水の浸入に影響のないものを除く)については、引き渡した時から10年間、請負人が責任を負います。この定めに反する特約で注文者に不利なものは無効です(同条第2項)。公共工事標準請負契約約款の第57条第9項も、この場合は請求等ができる期間を10年とし、第1項から第8項までの規定は適用しないとしています。

この10年は住宅の新築工事の、対象の部分に限った定めです。ふつうの土木工事や非住宅の建築工事に、この10年がそのまま当てはまるわけではありません。

民間工事は契約書の約款で確かめる

民間の発注者との工事では、契約書に付く約款(民間の標準約款や発注者独自の約款)に期間の定めがあれば、その定めが基になります。定めがない部分は民法によります。この記事では、民間工事の約款の条文までは確認していません。民間工事の契約では、引渡しの日から数える期間、設備機器の扱い、保証書の有無を、契約書の該当条で確かめてください。

請負側の事務担当の確認の順番

  1. 契約書の期間の欄:公共工事なら約款の第57条に当たる条で、期間の年数と、設備機器の期間を確かめます。年数が標準の原則と同じとは限りません。
  2. 引渡しの日の記録:期間は引渡しを受けた日から数えます。引渡しの日を、完成検査の記録や引渡書とあわせて保管します。引渡しまでの事務は『完成検査・引渡し・請求の順番』で確認できます。
  3. 設備機器の保証:設備機器本体等には、メーカー保証と約款の期間が別にあります。約款の注記は、メーカー保証の期間を考えて年数を決めるとしています。保証書は引渡書類とそろえて保管します。
  4. 通知を受けたときの記録:発注者からの通知の日、不適合の内容、請求の方法を残します。約款では、通知から1年以内に根拠を示した請求があれば期間内として扱われるため、通知の日が後の判断を分けます。
  5. 支給材料・指図の記録:支給材料や発注者・監督員の指図が原因の不適合は、受注者が不適当と知りながら通知しなかった場合を除き、請求できません。不適当と思った時点で通知した記録が、受注者を守ります。
  6. 判断に迷うとき:故意・重大な過失が問われる場合、住宅新築の10年に当たるか迷う場合は、契約書と保証・保険の書類を持って、顧問の専門家に確認する対象になります。

確認した一次資料

確認日:2026年10月17日。住宅の品質確保の促進等に関する法律第94条は、e-Gov法令の条文で確認しています。民間建設工事の標準約款、各発注者独自の約款、履行保証や保証保険の内容、消滅時効の細かい扱いは確認していません。

次に知りたいこと

まとめ

  • 民法は、注文者が不適合を知った時から1年以内の通知を求める。引渡しからの年数ではない。
  • 公共工事標準請負契約約款は、引渡しを受けた日から原則2年(設備機器本体等は原則1年)の請求期間を定め、民法のこの1年の規定は適用しない。
  • 期間内の通知から1年以内に根拠を示して請求すれば、期間内の請求として扱われる。
  • 住宅の新築の構造耐力・雨水の部分は10年。それ以外の工事に当てはまるとは限らない。
  • 請負側は、契約書の期間の欄、引渡しの日、設備の保証書、通知の記録をそろえて残す。

この記事は公開情報の整理で、個別の申請に対する判断や、申請・届出の代行・個別の相談は行いません。具体的な取扱いは、各発注者の案内と契約書で確認してください。正式な評点は審査結果が優先します。評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。

よくある質問

契約不適合責任はいつまで問われますか?
民法第637条は、注文者が不適合を知った時から1年以内に請負人へ通知しないと、追完・報酬の減額・損害賠償・解除を請求できなくなると定めています。公共工事標準請負契約約款の第57条は、引渡しを受けた日から○年以内(標準約款の注記は原則2年)という期間を契約で決める形にしています。実際の期間は自分の契約書の約款で確認してください。
設備機器の不具合も2年ですか?
標準約款の第57条第2項は、設備機器本体等について、引渡しの時に発注者が検査して直ちに追完を請求しなければ受注者は責任を負わないとし、その検査で一般的な注意の下では見つけられなかったものは、引渡しを受けた日から○年が経過する日まで請求できるとしています。注記の原則は1年です。メーカー保証の期間を考えて年数を決めるとも書かれています。
住宅の新築工事の10年はどんな工事に当てはまりますか?
住宅の品質確保の促進等に関する法律第94条第1項の住宅新築請負契約で、住宅のうち構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の瑕疵が対象です。引き渡した時から10年間、請負人が責任を負います。住宅の新築以外の工事に、この10年がそのまま当てはまるわけではありません。
発注者から不具合の通知を受けたとき、事務担当は何を記録しますか?
通知を受けた日、不適合の内容、請求の方法を残します。標準約款の第57条第4項は、期間内に通知した場合に、通知から1年が経過する日までに根拠を示して請求等をしたときは期間内の請求とみなすとしているため、通知の日が後の判断を分けます。

令和8年新基準・改正前基準を新旧比較で無料試算(無料・登録不要):経審P点シミュレーターを使う

事業者ご自身が入力する概算の試算です。申請の代行・作成支援や個別相談は行っていません。正式な評点は登録経営状況分析機関・審査行政庁の審査結果が優先します。算定方法・出典・免責