経審の経理適正確認書類の確認項目
様式第2号に添える「建設業の経理が適正に行われたことに係る確認項目」を、科目ごとに何を確かめる表なのかで整理します。
監査点2点の確認項目経審のW5「監査の受審状況」で、会計監査人や会計参与に頼らず2点を得る方法が「経理処理の適正を確認した旨の書類」(様式第2号)です。この書類には国土交通省が定めた別添の確認項目が付いており、経理実務責任者はその項目に沿って決算書を確かめたうえで署名します。この記事は、別添の項目が何を求めているかを読み解くための整理です。
様式第2号に書かれていること
様式第2号の本文は、建設業法施行規則第18条の3第3項第2号に基づく確認として、次の2点を確認した旨を述べる形です。
- 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行をしん酌して作られていること
- 別添の会計処理に関する確認項目の対象に係る内容が、適正に処理されていること
つまり確認の対象は決算書の4つの計算書類で、確認の物差しが別添の確認項目です。商号、所属・役職、氏名を記載して提出します。点数の仕組み(適正確認は2点)や対象資格者の条件は経審W5の監査と公認会計士等数にまとめています。
書式と確認項目の原文は、国土交通省の経営事項審査の事務取扱いについて(様式第2号とその別添)で直接確認できます。
最初の「全体」で検証する7科目
確認項目は、まず「全体」として、前期と比べて概ね20%以上増減している科目の内容を検証することを求めています。そのうえで、次の科目は特に詳細に検証し、不適切なものが含まれていないことを確認するとされています。
| 科目の区分 | 原文に挙がる例 |
|---|---|
| 営業債権 | 受取手形、完成工事未収入金等 |
| 棚卸資産 | 未成工事支出金等 |
| 金銭債権 | 貸付金等 |
| 金銭債務 | 借入金等 |
| 売上 | 完成工事高、兼業事業売上高 |
| 原価 | 完成工事原価、兼業事業売上原価 |
| 金融費用 | 支払利息等 |
確認項目の冒頭に、前期比の増減が大きい科目の検証が置かれています。完成工事高と兼業事業売上高の境目は完成工事高と兼業事業売上高の分け方で扱っています。
科目別に何を確かめるか
「全体」のあとは科目ごとに、原文の確認文が並びます。原文は文章が長いため、主な項目を抜粋し、確認の中身を一言で言い換えて並べます。全項目は原文で確認してください。
| 項目 | 確認する中身(要旨) |
|---|---|
| 預貯金 | 残高証明書または預金通帳等で残高を確認している |
| 金銭債権 | 正常な営業の流れから外れた営業債権や、履行が1年以内に来ない債権を、投資その他の資産の部に表示している。受取手形割引額・裏書譲渡額があれば注記している |
| 貸倒損失・貸倒引当金 | 法的に消滅した債権や回収不能な債権は貸倒損失とし、取立不能のおそれがある債権は見込額を貸倒引当金にしている |
| 有価証券 | 売買目的、満期保有目的の債券、子会社・関連会社株式、その他有価証券に区分して評価している |
| 棚卸資産 | 原価法の棚卸資産で、時価が取得原価より著しく低く回復の見込みがないものは時価で評価している |
| 経過勘定等 | 前払費用と前払金、前受収益と前受金、未払費用と未払金、未収収益と未収金をそれぞれ区別している |
| 固定資産 | 減価償却を経営状況で任意に変えず、継続して規則的に行っている。遊休中や投資目的の固定資産、時価のあるゴルフ会員権で、時価が50%以上下落したものは時価で評価している |
| 繰延資産 | 資産計上した繰延資産は当期の償却を適正に行い、税法固有の繰延資産は長期前払費用等に計上している |
| 金銭債務 | 金銭債務を網羅的に計上し、1年以内に支払期限が来ない借入金等は固定負債に表示している |
| 引当金 | 発生原因が当期以前にあり金額を合理的に見積れる費用・損失は引当金にしている。損失が見込まれる工事の工事損失引当金、瑕疵補償契約を結んだ工事の完成工事補償引当金も対象 |
| 退職給付 | 確定給付型の制度なら退職給付引当金を計上し、中小企業退職金共済・特定退職金共済・確定拠出型年金なら毎期の掛金を費用にしている |
| 法人税等・消費税 | 法人税、住民税、事業税を発生基準で損益計算書に計上し、未払分は流動負債に、決算日の未払消費税等は未払金または未払消費税等として表示している |
| 税効果会計 | 繰延税金資産は回収可能性を慎重に検討し、過去3年以上連続して欠損金があれば計上しない。主な内訳を注記している |
| 純資産 | 純資産の部を株主資本と株主資本以外に分け、株主資本は資本金、資本剰余金、利益剰余金に区分している |
| 個別注記表 | 重要な会計方針に係る事項(資産の評価基準および評価方法など)を注記している |
日常の経理の中で見落としやすいのは、「区別する」「区分して表示する」という形の確認です。前払金と前受金のように名前が近い科目を混ぜていないか、1年以内に回収・支払いが来ない債権債務を流動の部に置いていないか、といった表示の確認が並んでいます。
建設業らしい項目(未成工事・工事収益・JV)
一般の会社にはない科目や考え方は、別添の中でも建設業の決算書に特有の項目として書かれています。
| 項目 | 確認する中身(要旨) |
|---|---|
| 未成工事支出金 | 発注者側の特別な事由で施工を中断し代金回収が見込めない工事や、契約上の重要な問題で代金回収が見込めない工事は、その原価を損失に計上し、未成工事支出金から控除している |
| 未成工事受入金 | 引渡前の工事の前受金は未成工事受入金とし、完成工事高に計上していない(工事進行基準で減額処理されたものを除く) |
| 工事収益・工事原価 | 工事完成基準、工事進行基準、部分完成基準などの適正な基準に従い、恣意的に計上していない。引渡の日として合理的な日(作業を結了した日、搬入した日、検収を完了した日、使用収益ができる日など)を決め、継続して計上している |
| 建設業と兼業事業 | 建設業の収益・費用と兼業事業の収益・費用を区分している(兼業事業売上高が軽微な場合を除く) |
| 工事原価の範囲 | 工事原価の範囲と内容を明確に定め、一般管理費や営業外費用と区別している |
| 工事進行基準 | 適用する工事の範囲(工期、請負金額等)を定めて注記し、実行予算等に基づく見積り工事原価と、発生工事原価に基づく合理的な進捗率で収益を計上している |
| JV(共同企業体) | 共同施工方式は自社の出資割合に応じた資産・負債・収益・費用のみを計上し、分担施工方式は自社の施工割合に応じた収益を計上している |
工事進行基準の項目には、収益に見合う分だけ未成工事受入金を減らし、その差額が出る場合は完成工事未収入金を計上する、という科目同士のつながりも書かれています。工事別の原価と入金をどう管理するかは工事台帳の作り方、工事経歴書に載せる範囲は経審の工事経歴書はどこまで書くかで確認できます。
この表の使い方と限界
決算書ができたあと、申請の前に次の順で当てはめると、確認漏れを減らせます。
- 前期比20%以上動いた科目に印を付ける「全体」の項目は、こうした科目の内容を検証するよう求めています。7科目は特に詳細に検証する対象です。
- 科目別の表で自社に当てはまる行を読む手形割引、引当金、有価証券、JVなど、自社に無い取引の行は該当なしとして飛ばせます。
- 建設業に特有の行を決算書と突き合わせる未成工事支出金・未成工事受入金・工事収益の基準が、工事台帳の運用と合っているかを見ます。
- 確認した人が様式第2号に署名する対象資格者の条件と書類は、W5の記事と申請先の案内で確認します。
適正確認書類で得られる監査点は2点で、会計監査人(20点)や会計参与(10点)より小さい点数です。W点全体の中での位置づけはW点の内訳で見られます。
確認項目は、前期比20%以上動いた科目の検証から始まり、建設業に特有の科目の処理まで決算書と突き合わせるための表です。
よくある質問
- 経理処理の適正を確認した旨の書類(様式第2号)では何を確認しますか?
- 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表が企業会計の基準や慣行をしん酌して作られていること、および別添の確認項目の対象が適正に処理されていることを確認します。
- 確認項目の最初にある「全体」では何を検証しますか?
- 前期と比べて概ね20%以上増減している科目の内容を検証します。営業債権、棚卸資産、金銭債権、金銭債務、完成工事高・兼業事業売上高、完成工事原価、金融費用は特に詳細に検証するとされています。
- 未成工事受入金について、確認項目は何を求めていますか?
- 引渡前の工事の前受金を受け取っている場合に、未成工事受入金として処理し、完成工事高に計上していないことを確認します。ただし工事進行基準による完成工事高の計上で減額処理されたものは除かれます。
- JVの収益や資産は、確認項目ではどう扱われますか?
- 共同施工方式は自社の出資割合に応じた資産・負債・収益・費用のみを計上し、分担施工方式は自社の施工割合に応じた収益を計上していることを確認します。JV全体の金額を計上していないことが条件です。
- 確認項目に沿って確認すれば、監査点は何点になりますか?
- 適正確認書類による監査点は2点です。会計監査人は20点、会計参与は10点で、適正確認はそれらより小さい点数です。対象資格者本人が確認して署名することが条件です。
公開日: 2026-11-05
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