ガイド

経審Y点「自己資本比率」の計算|自己資本・総資本と評点への影響

自己資本÷総資本×100で求める、Y評点の8指標のうち寄与度14.6%(8指標中3番目)の指標です。算式・上限下限と、1ポイントの差が評点に与える影響を実測で示します。

国土交通省の通知・手引き
編集:建設経営ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

経審(経営事項審査)のY評点(経営状況)は8つの財務指標から求めます。そのうち「自己資本比率」は、関東地方整備局の手引きが示すY評点への寄与度が14.6%で、8指標中3番目に大きい指標です。手引きの表では「Ⅹ6」と表記されます。この記事では、算式、上限・下限、事業年度が12か月に満たない場合の扱い、評点への影響を国土交通省の通知にもとづいて整理します。

自己資本比率の算式

自己資本比率は、会社の総資本(総資産)のうち、返済不要の自己資本がどれだけを占めるかを示す指標です。通知は算式を次のように定めています。

自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100

通知は、自己資本比率について「基準決算における自己資本の額を、基準決算における総資本の額で除して得た数値(小数点以下5位未満の端数は四捨五入)を百分比で表したものとする」と定めています。ここでいう総資本の額は、総資本売上総利益率(X3)の項で定義されている「貸借対照表における負債純資産合計の額」と同じものです。自己資本・総資本のいずれも基準決算(1期分)の額だけを使い、総資本売上総利益率(X3)のように基準決算と直前の審査基準日の2期平均を取ることはありません。また、この自己資本の定義はP点のX2(自己資本額・平均利益額の評点)や自己資本対固定資産比率(Y5)と同じ条文(純資産合計の額)を参照していますが、X2側は2期平均を使う点が異なります。

出典: 国土交通省「経営事項審査の事務取扱いについて」(通知)「5 経営状況について(告示第一の二関係)」(6)自己資本比率について・(3)総資本売上総利益率についてイ、および関東地方整備局「経営事項審査の手引き」別添資料(令和8年7月改正版)表4より

決算書の金額から求める手順

次の金額を例に、算式へ当てはめます(金額はこの記事の説明用に置いたもので、実在の会社のものではありません)。

自己資本比率の計算例(単位:万円)
項目金額計算
自己資本(純資産合計)5,000万円5,000万円÷8,000万円×100=62.5%
総資本(負債純資産合計)8,000万円
自己資本比率62.5%

総資本は貸借対照表の「負債合計+純資産合計」(=資産合計)をそのまま使います。自己資本対固定資産比率(Y5)と異なり、比較対象は固定資産ではなく総資本(総資産)です。

上限・下限(-68.6%〜68.5%)

通知は、算出した数値に上限と下限を定めています。自己資本比率が68.5%を超える場合は68.5%と、マイナス68.6%に満たない場合はマイナス68.6%とみなされます。

自己資本比率は数値が大きいほど(総資本のうち自己資本の占める割合が高いほど)評点に有利です。自己資本対固定資産比率(Y5)と同じく、数値が大きい方が良い指標です。

この数値はY評点の8指標一覧の「上限値68.5・下限値-68.6」に対応しています。

1ポイントの差が評点に与える影響(実測)

自己資本比率の係数は、経営状況点数(A)の算式で0.0089です。比率が1ポイント大きくなるとAが0.0089大きくなり、Aは167.3倍されてY評点になります(0.0089×167.3≒1.49)。8指標中3番目に大きい寄与度(14.6%)を反映し、自己資本対固定資産比率(Y5、およそ0.18点)より1ポイントあたりの効きが大きい指標です。

次の表は、他の7指標をY点の計算例のまま据え置き、自己資本比率だけを動かしたときの実測です。P点は、モデルケース(完成工事高3億円・技術職員6名など)のYだけを8指標モードに差し替えて求めました。

自己資本比率だけを動かしたときのY評点とP点(エンジン実測)
自己資本比率経営状況点数(A)Y評点モデルケースのP点
-68.6%(下限)-0.85441点667点
-30.0%-0.51498点679点
0.0%-0.24543点688点
30.0%0.03588点697点
68.5%(上限)0.37645点708点

自己資本比率だけで、Y評点は下限側の441点から上限側の645点まで204点、P点は667点から708点まで41点動きます。上限・下限の幅(137.1ポイント)は自己資本対固定資産比率(426.5ポイント)より狭いものの、係数(0.0089)が大きいため、Y評点の振れ幅は自己資本対固定資産比率(78点)よりかなり大きくなります。

上限・下限の外側の値を入れても、評点は上限・下限のところで止まります。エンジンでは-100.0%を入れても-68.6%と同じ441点、100.0%を入れても68.5%と同じ645点です。

この表は算式の感度を示す試算で、正式な評点ではありません。Y評点は登録経営状況分析機関の分析結果通知書の値が優先されます。借入や資金繰りの進め方を助言するものではありません。

事業年度が12か月に満たない場合

通知は、事業年度の変更、商業登記法の規定に基づく組織変更の登記、他の建設業者を吸収合併した場合などの特殊な事由があり、審査対象年の間に開始する事業年度の月数が12か月に満たないときについて、純支払利息比率で使う売上高・純支払利息の額、総資本売上総利益率の売上総利益の額、売上高経常利益率の経常利益の額、営業キャッシュフローの法人税等の額の5項目を、年間平均完成工事高の算定の要領で求めると定めています。この5項目に、自己資本比率で使う自己資本・総資本の額は含まれていません。

この特殊な事由を除き、単に審査対象年の間に開始する事業年度の月数が12か月に満たないときは、純支払利息比率と負債回転期間の2項目は最大値を、それ以外の項目(自己資本比率を含む)は最小値をとるものとして算定すると定められています。自己資本比率は数値が大きい方が評点に有利な指標なので、最小値=下限のマイナス68.6%(もっとも不利な側)で算定されることになります。これは自己資本対固定資産比率(Y5)が最小値をとるのと同じ扱いです。

設立初年度などの個別の当てはめは、審査行政庁の最新の取扱いで確認してください。この記事は通知の規定を紹介するもので、個別の事案の判断や相談は受け付けていません。

まとめ

  1. 自己資本比率は、自己資本(基準決算の純資産合計)÷総資本(基準決算の負債純資産合計)×100。どちらも1期分の額のみで、2期平均は取らない。
  2. 68.5%を超えれば68.5%、マイナス68.6%に満たなければマイナス68.6%とみなされる。数値が大きいほど評点に有利。
  3. 寄与度は手引き表4で14.6%、8指標中3番目。係数0.0089は自己資本対固定資産比率(0.0011)より大きく、実測での1ポイントあたりの効き(およそ1.5点)も大きい。
  4. 事業年度が12か月に満たない場合、事業年度変更等の特殊事由による年間平均算定の対象に自己資本・総資本は含まれない。それ以外の理由で12か月未満のときは、純支払利息比率・負債回転期間と異なり最小値(下限、不利な側)をとる。

Y評点全体の8指標と2段階の計算方法は経審のY点(経営状況)とはで解説しています。同じ財務健全性の指標である自己資本対固定資産比率、負債抵抗力の指標は純支払利息比率で解説しており、自社の数値でP点全体を試算するには経審P点シミュレーターが使えます。

評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。

よくある質問

経審の自己資本比率はどうやって計算しますか?
自己資本÷総資本×100で求めます。自己資本は基準決算における純資産合計の額、総資本は貸借対照表における負債純資産合計の額です(国土交通省の通知)。
自己資本比率の自己資本・総資本は2期平均ですか?
いいえ。どちらも基準決算(1期分)の額だけを使います。総資本売上総利益率(X3)は総資本を基準決算と直前の審査基準日の2期平均で使いますが、自己資本比率の総資本は基準決算の1期分のみで、平均は取りません。
自己資本比率の上限と下限はいくつですか?
上限は68.5%、下限はマイナス68.6%です。68.5%を超える場合は68.5%、マイナス68.6%に満たない場合はマイナス68.6%とみなして評点を計算します(通知(6)、手引き表4)。
自己資本比率は数値が大きい方と小さい方、どちらが評点に有利ですか?
数値が大きいほど評点に有利です。自己資本対固定資産比率と同じく、総資本のうち自己資本が占める割合が大きいほど(財務の安定性が高いほど)評価が高くなります。
自己資本比率が1ポイント違うと、点数はどのくらい変わりますか?
他の7指標をY点の計算例に据え置いた本サイトのエンジン実測では、1ポイントあたりのY評点への影響はおよそ1.5点です。下限マイナス68.6%と上限68.5%の間ではY評点が204点、P点が41点動きます。8指標中3番目に大きい寄与度(14.6%)を反映し、自己資本対固定資産比率(およそ0.18点)より1ポイントあたりの効きが大きい指標です。
事業年度が12か月に満たない場合、自己資本比率はどう扱われますか?
事業年度の変更・組織変更・吸収合併などの特殊な事由による年間平均算定の対象(売上高・純支払利息・売上総利益・経常利益・法人税等の5項目)に、自己資本比率で使う自己資本・総資本は含まれていません。それ以外の理由で12か月に満たない場合は、純支払利息比率・負債回転期間とは異なり最小値(下限マイナス68.6%、不利な側)をとるものとして算定すると通知が定めています。個別の当てはめは審査行政庁の取扱いで確認してください。

令和8年新基準・改正前基準を新旧比較で無料試算(無料・登録不要):経審P点シミュレーターを使う

専門書で詳しく確認したい場合

広告

下記書籍の紹介による報酬の有無は、記事の内容に影響しません。制度の背景や申請実務を書籍でまとめて確認したい方向けです。

本ツールは事業者ご自身が入力・利用する試算です(申請の代行・作成支援は行っていません)。個別のご相談は承っておりません。正式な評点は登録経営状況分析機関・審査行政庁の審査結果が優先します。数値は概算であり、実際の申請前に専門家へご確認ください。算定方法・出典・免責