経審の退職金・企業年金加算(W1)|建設業のモデル退職金相場を規模別に比較
加算1項目のP点への影響を実測し、建設業のモデル退職金水準を中小企業・大企業の一次データで比較します。
東京都産業労働局・中央労働委員会の一次データ経審W1の「退職一時金制度若しくは企業年金制度導入の有無」は、対象7類型のいずれかを導入していれば「有」となる15点のyes/no項目です。制度の対象範囲は退職一時金・企業年金加点の7類型で解説済みのため、この記事ではこの1項目がP点に与える影響を実測し、建設業のモデル退職金が実際にどの水準かを公的統計で確認します。
建設業退職金共済制度(建退共)とは別項目のため、建退共の加入状況に関わらずこの項目単独でP点が動きます。
加算1項目のP点への影響(実測)
本サイトのモデルケース(建退共・法定外労災補償制度は「有」のまま固定)で、退職一時金制度若しくは企業年金制度導入の有無だけを「有」から「無」に変えて計算エンジンで実測しました。
| 制度導入 | 総合評定値P |
|---|---|
| 有(モデルケース) | 719点 |
| 無 | 700点 |
条件はモデルケース共通(経審P点の計算方法参照)。建退共・法定外労災補償制度は「有」のまま固定し、この1項目だけを分離。本サイトの計算エンジンで実測。
この1項目だけでP点は719点から700点(19点差)に下がります。W1は他の細目とあわせて評点化されるため、自社の他の細目構成によって差の大きさは変わります。
東京都内中小企業のモデル退職金(建設業)
東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」第8表-2は、都内の従業員10〜299人の中小企業を対象に、学校卒業後すぐに入社し標準的に昇進したと仮定する「モデル退職金」を学歴別に集計しています。定年退職時の建設業の数値は次のとおりです。
| 学歴 | 退職金額 | 支給率(月数) | 記入企業数 |
|---|---|---|---|
| 高校卒 | 991.4万円 | 21.0か月 | 10社 |
| 短大・高専卒 | 931.2万円 | 18.3か月 | 9社 |
| 大学卒 | 929.6万円 | 18.9か月 | 9社 |
出典: 東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」第8表-2 モデル退職金(建設業)。単位は原資料の千円表示を万円に換算(例: 9,914千円→991.4万円)。
同じ第8表の調査産業計(全産業平均)と比べると、建設業は大学卒で約220万円低くなっています(建設929.6万円に対し調査産業計は1,149.5万円)。一方、高校卒は建設991.4万円に対し調査産業計974.1万円と、建設業の方がわずかに高くなっています。
調査産業計の定年退職時モデル退職金: 高校卒974.1万円(23.5か月・105社)、短大・高専卒992.0万円(23.5か月・89社)、大学卒1,149.5万円(24.9か月・121社)。出典は建設業と同じ東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」第8表-1。
大企業の退職金実績(建設業)
中央労働委員会「令和5年賃金事情等総合調査」は、資本金5億円以上かつ労働者1,000人以上の大企業(調査対象380社、集計194社)を対象とした別の調査です。第12表は、実際に定年退職した人の退職金額を産業・学歴別に退職者数で加重平均した実績値で、モデル退職金(理論値)とは算出方法が異なります。
同表は勤続年数別に複数の区分を集計しており、以下は学校卒業後すぐに入社し、転職せずに定年まで勤め上げた「満勤勤続」区分の数値です(勤続35年等の区分は別の値になります)。令和4年度1年間の建設業の数値は次のとおりです。
| 学歴 | 平均退職金額 | 集計社数 |
|---|---|---|
| 大学卒 | 2,280.6万円 | 6社 |
| 短大・高専卒 | 2,190.8万円 | 2社 |
| 高校卒 | 2,183.2万円 | 3社 |
出典: 中央労働委員会「令和5年賃金事情等総合調査」(政府統計の総合窓口 e-Stat掲載)第12表 産業、勤続年数、学歴別定年退職者の平均退職金額(男性)のうち満勤勤続区分。単位は原資料の千円表示を万円に換算。
調査産業計(全産業平均、同じく満勤勤続区分)は大学卒2,139.6万円(57社)、短大・高専卒2,015.9万円(26社)、高校卒2,019.9万円(46社)。
規模差とモデル退職金・実績平均の違い
東京都内中小企業のモデル退職金(高校卒定年991.4万円)と、資本金5億円以上の大企業の満勤勤続者の実績平均退職金(高校卒定年2,183.2万円)を並べると約1,192万円の差があります。
ただし前者は標準的な昇進を仮定した理論値、後者は転職せず勤め上げた人に限った実際の退職者数による加重平均という算出方法の違いがあるため、単純な比較はできません。企業規模による水準差の目安として参考にしてください。
制度の有無だけでなく実際の相場水準を確認したい場合は、建設業の退職金相場を確認するページでも業種別の退職金データを掲載しています。
確認・記入時の注意点
経審で「有」と記入できるかどうかは、審査基準日時点で対象7類型のいずれかを導入しているかで決まり、退職金の支給水準や相場そのものは審査項目ではありません。制度の対象範囲・必要書類は退職一時金・企業年金加点の7類型、建退共は建退共の加点ガイドで確認してください。
まとめ
- 退職一時金・企業年金制度導入の有無は15点のyes/no項目。この1項目だけでモデルケースのP点は719点から700点(19点差)に下がる(本サイト計算エンジンの実測)。
- 東京都内中小企業(10〜299人)の建設業モデル退職金・定年退職時: 高校卒991.4万円、短大・高専卒931.2万円、大学卒929.6万円(東京都産業労働局調べ)。
- 資本金5億円以上の大企業の建設業・満勤勤続者の定年退職時平均退職金(実績): 大学卒2,280.6万円、短大・高専卒2,190.8万円、高校卒2,183.2万円(中央労働委員会調べ、集計2〜6社のため参考値)。
- 算出方法(モデル退職金 vs 実績平均)が異なるため単純比較はできないが、企業規模による水準差の目安として参考にできる。
- 制度の対象範囲・必要書類は退職一時金・企業年金加点の7類型で確認できる。
- 他の加点項目を含めた点数の上げ方は経審の点数を上げる方法で確認できる。
- 自社の数値でP点全体を試算する場合は経審P点シミュレーターを利用できる(試算は概算で、正式な評点は審査結果が優先される)。
評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。
よくある質問
- 退職一時金・企業年金加算はいくら加点されますか?
- 審査基準日に対象7類型のいずれかを導入していれば15点(yes/no)の加点です。本サイトの実測では、この1項目の有無だけでモデルケースのP点が719点から700点へ、19点変わります。
- 建設業のモデル退職金の相場はどれくらいですか?
- 東京都産業労働局の調査では、都内中小企業(10〜299人)の建設業・定年退職時モデル退職金は高校卒991.4万円、短大・高専卒931.2万円、大学卒929.6万円です。
- 大企業と中小企業で退職金額に差はありますか?
- あります。中央労働委員会の調査では資本金5億円以上の大企業の建設業・満勤勤続者の定年退職時平均退職金は高校卒で2,183.2万円と、中小企業のモデル退職金より高い水準です。ただし算出方法が異なるため単純比較はできません。
- 退職金の水準は経審の点数に影響しますか?
- 影響しません。経審が確認するのは対象制度を導入しているかどうかの有無だけで、支給額の多寡や相場水準そのものは加点の判断材料ではありません。
- 建退共と退職一時金・企業年金加算は同じ項目ですか?
- 別項目です。建退共は特定業種退職金共済契約の加入・履行を、退職一時金・企業年金加算は就業規則や中退共など7類型の導入有無を、それぞれ独立に15点で評価します。
公開日: 2026-09-25
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専門書で詳しく確認したい場合
広告下記書籍の紹介による報酬の有無は、記事の内容に影響しません。制度の背景や申請実務を書籍でまとめて確認したい方向けです。
本ツールは事業者ご自身が入力・利用する試算です(申請の代行・作成支援は行っていません)。個別のご相談は承っておりません。正式な評点は登録経営状況分析機関・審査行政庁の審査結果が優先します。数値は概算であり、実際の申請前に専門家へご確認ください。算定方法・出典・免責
