個人事業から法人成りした建設業者の経審|営業年数・完成工事高・技術職員の引き継ぎ条件
個人事業から法人にしたとき、個人の営業年数・完成工事高・技術職員を、法人の経審にそのまま使えるのか。引き継げる項目と引き継げない項目、4つの条件、許可が切れていた場合の扱いを、国交省の事務取扱通知と大阪府の手引き(令和8年)で確認できた範囲で整理します。
国交省の事務取扱通知・大阪府の経営事項審査の手引き(令和8年)法人成りで法人を新しく作っても、経審の実績は自動では引き継がれません。国交省の通知は、個人から法人へ建設業を承継した場合に限り、年間平均完成工事高の算定と営業年数の起算点で個人の実績を使えると定めています。大阪府の手引きは、このとき引き継げる項目を完成工事高・元請完成工事高、平均利益額、営業年数、技術職員の4つとし、自己資本額は引き継げないとしています。この記事は、その条件と確認書類を整理するもので、建設業許可そのものの承継は扱いません。
引き継げる項目と引き継げない項目
大阪府の手引き(第4章第1)は、個人から法人へ建設業を承継する場合に引き継げる項目を次のとおり示しています。
| 項目 | 引き継げるか | 確認できた根拠 |
|---|---|---|
| 完成工事高・元請完成工事高 | 引き継げる | 手引き第4章第1・国交省通知の年間平均完成工事高の算定(Ⅰ1(1)チ③) |
| 平均利益額 | 引き継げる | 手引き第4章第1(完成工事高と同じ要領で算定) |
| 営業年数 | 引き継げる | 手引き第4章第1・国交省通知の営業年数の起算点(Ⅰ3(2)イ③) |
| 技術職員 | 引き継げる(審査基準日以前6か月を超える恒常的雇用関係がある場合に限る。被承継人に雇用された期間を含む) | 手引き第4章第1 |
| 自己資本額 | 引き継げない。承継時は法人の資本金の額になる | 手引き第4章第1 |
通知で原文を確認できたのは、完成工事高の算定と営業年数の起算点です。平均利益額と技術職員の引き継ぎ、自己資本額が引き継げない点は、大阪府の手引きの記載で確認したもので、国交省通知の原文では確認できていません。
引き継ぎの4条件(個人から法人)
国交省通知(Ⅰ1(1)チ③)と大阪府の手引きは、個人から法人が営業の主たる部分を承継した場合の条件を、次のいずれにも該当することとしています。
- 被承継人(個人)が建設業を廃業すること。
- 被承継人が50%以上を出資して設立した法人であること。
- 被承継人の事業年度と承継法人の事業年度が連続すること。
- 承継法人の代表権を有する役員が被承継人であること。
この4条件は、個人から法人への承継の条件です。個人から配偶者または2親等以内の親族が承継する場合は、別に「被承継人の廃業」「事業年度の連続」「承継人が被承継人の業務を補佐した経験を有すること」の3条件が定められています(通知Ⅰ1(1)チ②)。
手引きによると、事業年度の連続は、承継人の新規許可申請書の副本などで確認します。個人と法人の事業年度が連続しているかは、設立日や決算期の決め方に左右されるため、法人設立の前に申請先へ確認してください。
審査基準日はいつになるか
大阪府の手引きは、審査基準日を次のように示しています。
- 承継時に審査を受ける場合は、承継法人の設立日。
- 通常時に審査を受ける場合は、直前の事業年度の終了日。
- 承継時の審査を受けないまま承継後の事業年度の終了日を過ぎた場合は、直前の事業年度の終了日。
設立日を審査基準日とするときの完成工事高は、設立日の直前の2年または3年の被承継人の完成工事高で算定します(設立日は含みません)。平均利益額も同じ要領です。
承継時から2年または3年が経過し、営業年数だけを引き継ぐ場合は、承継の確認書類の一部が不要になります。「営業年数だけは引き続き使える」という点は、手引きのQ2-1-4(4年以上前に承継した場合も、条件を満たしていれば営業年数は承継できる)にもあります。
技術職員の引き継ぎ
手引きの記載で確認できたのは、「審査基準日以前6か月を超える恒常的雇用関係(被承継人に雇用された期間を含む)がある場合に限る」という条件です。個人事業主の下で働いていた期間を、法人での6か月に通算できるという読み方です。
- 提出書類に、承継前の技術職員の恒常的雇用関係を確認できる書面の写しが含まれます。
- 若年技術職員の評価(審査対象年に新規に技術職員となった人数の判定)では、手引きの注意事項が、法人成りして初めて経審を受ける場合は全員を新規の技術職員とみなすとしています。
- 技術職員の資格・名簿の書き方は、法人成りでも変わりません。数え方は『技術職員数値とは』で確認できます。
国交省通知の技術職員の定義も「審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係」を求めています。個人事業の時点で技術者が雇用されていたことを、法人側で書面にできるかが、実務上の分かれ目になります。
許可が切れていた場合と、許可の承継との違い
- 許可切れの期間:手引きのQ&Aは、個人事業を廃業する前に許可が切れ、その後に法人化した場合でも、廃業以外の条件が確認でき、個人がいつまで許可を持っていたかが確認できれば承継できるとしています。ただし、許可切れの期間は営業年数に加算できません。国交省通知も、許可または登録を受けずに営業していた期間は営業年数から控除すると定めています(Ⅰ3(2)イ②)。
- 許可の承継と経審の承継は別の手続き:手引きのQ&Aは、建設業の許可で地位を承継しても、経審の要件を満たさない限り前年度までの経審は承継できないとしています。許可側の承継の認可は、関東地方整備局の資料に事業譲渡(個人から法人への法人成りを含む)の認可申請として示されていますが、この記事では扱いません。
- 書類の代用不可:個人の廃業届の副本は、新規許可申請時の「営業の沿革」では代えられないと手引きに明記されています。
営業年数の起算の基本は『営業年数の数え方』に、設立初年度の決算が未到来の場合は『新規設立で決算が未到来のときの経審』にあります。この記事は、その手前の「個人の実績を法人に使えるか」だけを扱います。
確認欄
- 個人事業の建設業を廃業し、廃業届の副本を保管しているか。
- 法人への出資比率が、被承継人(個人)で50%以上か。
- 法人の代表権を有する役員に、個人事業主本人が入っているか。
- 個人と法人の事業年度が連続するよう、設立日・決算期を決めたか。
- 個人の工事経歴書・貸借対照表・損益計算書など、承継前の資料を保管しているか。
- 承継前の技術者の雇用関係を、書面で確認できるか。
- 許可が切れていた期間がないか。ある場合、営業年数から控除される点を理解しているか。
- 申請先(都道府県または地方整備局)の最新の手引きで、提出書類を確認したか。
確認した一次資料
- 国土交通省 経営事項審査の事務取扱通知(令和8年改正反映版)年間平均完成工事高の算定(Ⅰ1(1)チ②③)、営業年数の起算点(Ⅰ3(2)イ①〜③)
- 大阪府 経営事項審査の手引き(令和8年)第4章第1(建設業の承継に係る手続き)、よく頂く質問Q1-13・Q1-14・Q2-1-1〜Q2-1-5。府の運用であり、他の申請先では異なる場合がある
- 関東地方整備局「事業承継等の事前認可制度」許可の承継の認可申請(事業譲渡に個人から法人への法人成りを含む)。許可側の資料で、経審の引き継ぎ条件ではない
技術職員・平均利益額の引き継ぎと、提出書類の細目は、大阪府の手引きの記載です。他の都道府県・地方整備局で同じ書類とは限らないため、申請先の最新の手引きを確認してください。
まとめ
- 法人成りしても経審の実績は自動で引き継がれない。個人から法人への承継は、4条件をすべて満たす場合に限る。
- 4条件は、個人の廃業、個人が50%以上出資した法人、事業年度の連続、代表権を持つ役員が個人本人であること。
- 大阪府の手引きでは、完成工事高・元請完成工事高、平均利益額、営業年数、技術職員を引き継げる。自己資本額は引き継げない。
- 技術職員は、被承継人に雇用された期間を含めて6か月を超える恒常的雇用関係があれば引き継げる。
- 許可切れの期間は営業年数に加算できない。許可の承継と経審の承継は別の手続き。
この記事は制度の説明で、個別の申請内容の判断は行いません。正式な評点は審査結果が優先します。評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。
よくある質問
- 法人成りしたら、個人事業の経審の実績は引き継げますか?
- 自動では引き継げません。国交省の通知は、個人から法人が営業の主たる部分を承継し、被承継人の廃業・50%以上の出資・事業年度の連続・代表権を有する役員が被承継人であること、のすべてに該当する場合に、完成工事高の算定と営業年数の起算点で個人の実績を使えるとしています。
- 法人成りで引き継げる項目は何ですか?
- 大阪府の手引きでは、完成工事高・元請完成工事高、平均利益額、営業年数、技術職員です。自己資本額は引き継げず、承継時は法人の資本金の額になります。
- 個人事業のときの技術職員の雇用期間は通算できますか?
- 大阪府の手引きは、審査基準日以前6か月を超える恒常的雇用関係(被承継人に雇用された期間を含む)がある場合に限り、技術職員を引き継げるとしています。
- 個人の許可が切れていた期間は営業年数に入りますか?
- 入りません。手引きのQ&Aは、承継の条件が確認できれば承継は可能だが、許可切れの期間は営業年数に加算できないとしています。
- 建設業許可を承継すれば、経審も当然に承継できますか?
- できません。手引きのQ&Aは、経審に設定された要件を満たさない限り承継できないとしています。
公開日: 2026-10-07
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広告下記書籍の紹介による報酬の有無は、記事の内容に影響しません。制度の背景や申請実務を書籍でまとめて確認したい方向けです。
本ツールは事業者ご自身が入力・利用する試算です(申請の代行・作成支援は行っていません)。個別のご相談は承っておりません。正式な評点は登録経営状況分析機関・審査行政庁の審査結果が優先します。数値は概算であり、実際の申請前に専門家へご確認ください。算定方法・出典・免責

