受注後の資金繰り

建設会社の資金調達の手段を比較|前払金保証・当座貸越・公庫融資・債権を使う公的制度・ファクタリング

公共工事の入金を待つ間の資金を、前払金保証、銀行の当座貸越、日本政策金融公庫、地域建設業経営強化融資制度、ファクタリングの5つで、速さ・費用・審査・向いている場面の順に並べます。

国土交通省・金融庁・日本政策金融公庫の公表資料
編集:建設経営ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営情報

工事の入金が着工前の前払金、工期の半ばの中間前払金、完成後の残りに分かれるため、完成までの間は自社の資金で立て替える期間ができます。この記事は、その期間の資金を用意する5つの手段を、同じ基準で比べます。ファクタリングは、ほかの手段が間に合わない場合の選択肢として最後に置きます。

手段ごとの位置づけ(一次資料で確認できた範囲)

前払金保証
借入ではなく、発注者が着工時に払う前払金を受け取るための保証。保証料は請負人が保証会社へ払う
地域建設業経営強化融資制度
公共工事の請負代金債権を担保に出来高に応じて融資を受ける制度。保証人・不動産担保なし。令和13年3月末まで延長
日本政策金融公庫
小規模事業者向けの一般貸付は、運転資金で4,800万円まで、返済は5年以内(特に必要な場合7年以内)
ファクタリング
売掛債権を期日前に手数料を引いて買い取らせる取引。法的には債権の売買で、実態によっては貸金業に当たるおそれがある(金融庁)

5つの手段を同じ基準で比べる表

「速さ」「費用」は、一次資料で数字を確認できたものだけを書いています。確認できないものは、各窓口で確かめる項目として空けずに明記しました。

建設会社の資金調達の手段の比較(2026-10-12確認)
手段速さ費用審査の重さ向いている場面
前払金保証保証証書を預けて請求し、請求から14日以内に支払い(国の工事の例)保証料(請負人が保証会社へ支払う。料率は保証約款で定まる)保証会社との保証契約が必要。前払金は専用口座で使途を監査される着工時の資材・労務の資金を、発注者の前払金で賄うとき
銀行の当座貸越金融機関との契約で決まる(一次資料なし。各行に確認)金融機関との契約で決まる(一次資料なし。各行に確認)金融機関の審査による入金日と支払日のずれが小さく、繰り返し発生するとき
日本政策金融公庫公庫の審査による(公表資料に日数なし)利率は返済期間と担保の有無で異なる担保・保証人は相談のうえ決まる。経営者保証免除の特例もある設備や運転資金をまとまった期間で借りたいとき
地域建設業経営強化融資制度発注者の債権譲渡の承諾が必要。融資実行までの日数は窓口(建設業振興基金)に確認保証人・不動産担保なし。利息などは取扱機関に確認工事の出来高に応じた融資。請負金額から前払金等を引いた範囲内公共工事の受注後、出来高に応じて資金を前倒しで得たいとき
ファクタリング契約によって異なる。入金までの短縮を目的に使われる売掛債権の額面と買取代金の差(手数料)売掛先の信用などを見る。内容は事業者ごとに異なるほかの手段が間に合わないときの選択肢

入金までの資金が足りない場合 PR

元請・発注者からの入金を待つ間の資金が足りないときに、売掛金を先に現金化する方法があります。手数料がかかるため、ほかの手段と比べて判断してください。

前払金保証:着工時の資金を受け取る前提

前払金保証は、借入ではありません。発注者が着工資金として払う前払金について、請負人が工事を続けられなくなったときに発注者が払い過ぎた額を、保証事業会社が弁済する仕組みです。発注者が前払金を払うには、請負人と保証事業会社の間で保証契約を結んでいることが必要です(国土交通省建設業課の資料)。

前払金は専用の口座に入り、下請代金や資材費などの請求に応じて払い出されます。保証事業会社は、前払金が当該工事に適正に使われているかを監査します。使い道が決まった資金であり、運転資金を自由に使う手段ではありません。割合と支払時期は公共工事の代金の支払時期で整理しています。

銀行の当座貸越

当座貸越は、金融機関との契約で定めた限度額の範囲で、預金口座の残高を超えて払い出せる仕組みです。極度額、金利、担保、更新の条件は金融機関ごとの契約で決まるため、この記事では数字を載せません。入金と支払のずれが繰り返し起きる会社は、受注が決まる前に、各行へ極度額と更新条件を確認しておく手段です。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫の国民生活事業(小規模事業者・個人事業主向け)の一般貸付は、ほとんどの業種の中小企業が使えます。融資限度額は運転資金・設備資金とも4,800万円で、返済期間は運転資金が5年以内(特に必要な場合7年以内、据置期間1年以内)です。利率は返済期間と担保の有無で変わり、担保・保証人は相談のうえで決まります。経営者保証免除特例制度などを併用できる場合があります。

中小企業事業(より大きな規模の事業者向け)は、この記事で扱う5手段の比較には含めていません。自社がどちらの対象かは、公庫の窓口で確認してください。

債権を使う公的な制度:地域建設業経営強化融資制度

国土交通省が平成20年11月4日から実施している制度です。中小・中堅建設企業が、公共工事の発注者に対して持つ工事請負代金債権を担保に、事業協同組合等または一定の民間事業者から出来高に応じて融資を受けられます。保証事業会社の保証により、出来高を超える部分についても金融機関から融資を受けられます。

  • 特徴は、請負金額から前払金等を差し引いた金額の範囲内で融資を受けられること。保証人・不動産担保なしで融資を受けられるとされています。
  • 利用には、公共工事等の発注者が工事請負代金債権の譲渡を承諾していることが必要です。
  • 制度は令和8年1月30日に、令和13年3月31日まで延長されました(国土交通省のページ)。
  • 問い合わせ先と各種様式は、一般財団法人建設業振興基金のサイトにあります。

金利助成は平成27年9月30日までの融資実行分で終わっています。現在の金利や手数料は取扱機関ごとに異なるため、この記事では載せません。

ファクタリングの2社間・3社間と注意点

金融庁は、ファクタリングを「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス」で、法的には債権の売買(債権譲渡)契約だと説明しています。取引に関わる当事者が、売主と買い取る会社の2者なら2社間、売掛先も加わるなら3社間と呼ぶのが一般的です。どちらを選ぶかで、売掛先への通知や承諾の有無、手数料の水準が変わります。手数料の水準は、行政の公表資料では確認できなかったため、この記事には数字を載せません。

金融庁は次の点を注意しています。

  • ファクタリングを装い、貸金業の登録がないまま債権を担保に貸し付ける業者がいる。
  • 契約書に債権譲渡契約(売買契約)と書かれていても、売掛先から回収できなかったときに売主が債権を買い戻す、または売主自身の資金で支払う定めがあると、貸金業に当たるおそれがある。
  • 買取代金が債権額に比べて著しく低い場合は、偽装ファクタリングの疑いがある。
  • 貸金業に当たるかは、ノンリコースの記載など形式だけでなく、経済的な実態で判断される。

ファクタリングで資金が入ることと、経営事項審査の自己資本や評点が上がることは別の話です。この記事は、ファクタリングが経審の点数に与える影響を扱いません。

状況別の選び方

状況別に最初に確かめる手段
状況最初に確かめる手段確認する点
公共工事の着工資金が足りない前払金保証発注者が前払金を採用しているか、割合と対象金額
工期の途中で出来高ぶんを前倒ししたい地域建設業経営強化融資制度発注者が債権譲渡を承諾するか、取扱機関
入金のずれが毎月起きる銀行の当座貸越極度額、金利、更新の条件
設備と運転資金をまとめて借りたい日本政策金融公庫返済期間、担保・保証人、使える特例
上のどれも間に合わないファクタリング貸金業に当たる条項がないか、買取代金と手数料の差

確認した一次資料

まとめ

  1. 前払金保証は借入ではなく、発注者が払う前払金の保証。着工資金の前提になる。
  2. 公共工事の出来高に応じた融資は、発注者が債権譲渡を承諾する地域建設業経営強化融資制度で、令和13年3月末まで延長されている。
  3. 公庫の小規模事業者向け一般貸付は、運転資金で4,800万円まで・返済5年以内(特に必要な場合7年以内)。
  4. ファクタリングは入金を早める手段。手数料がかかり、契約の中身によっては貸金業に当たるおそれがある。ほかの手段が間に合わないときの選択肢にとどめる。

入札参加資格の等級と受注できる工事の規模は入札参加資格ランクの目安で確認できます。

評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。

よくある質問

前払金保証は借入ですか?
借入ではありません。発注者が着工資金として払う前払金について、請負人が工事を続けられなくなったときに発注者の払い過ぎを保証事業会社が弁済する仕組みで、保証料は請負人が保証会社に支払います(国土交通省建設業課の資料)。
地域建設業経営強化融資制度は今も使えますか?
国土交通省のページによると、令和8年1月30日に令和13年3月31日までの延長が通知されています。利用には、公共工事の発注者が工事請負代金債権の譲渡を承諾していることが必要です。
ファクタリングは借入になりますか?
金融庁は、法的には債権の売買(債権譲渡)契約だと説明しています。ただし、売掛先から回収できないとき売主が買い戻す、または売主の資金で支払う定めがあるなど、経済的に貸付けと同様の機能を持つ取引は貸金業に当たるおそれがあるとしています。

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