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建設工事の労災保険は元請がかける|単独有期事業と一括有期事業の違い

建設工事の労災保険を、元請がまとめてかける理由と、工事ごとにかける単独有期事業・年度でまとめる一括有期事業の違いを、徴収法の条文から整理します。

労働保険徴収法・同法施行規則(e-Gov法令検索)
編集:建設経営ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

下請として工事に入る会社の事務担当は、「この現場の労災保険は自社でかけるのか、元請がかけるのか」を確かめる場面があります。結論から言うと、建設の事業が何次もの請負で行われる場合、法律上は元請だけが事業主になります。この記事は、その根拠の条文と、元請側での保険のかけ方(単独有期事業と一括有期事業)を説明します。保険料の額や個別の手続きは、所轄の労働局・労働基準監督署に確認してください。

下請の労災保険を元請がかける理由

労働保険の保険料の徴収等に関する法律(以下「徴収法」)第8条第1項は、厚生労働省令で定める事業が数次の請負で行われる場合、その事業を一の事業とみなし、元請負人のみを事業主とすると定めています。この省令(施行規則第7条)が定める事業は、労災保険の保険関係が成立している事業のうち建設の事業です。

つまり建設工事では、下請の労働者の労災も、元請が成立させた保険関係で扱われます。下請の会社が、その工事のために別に労災保険の保険関係を成立させる、という扱いにはなりません。

注意:これは労災保険の話です。雇用保険や健康保険・厚生年金保険は、会社ごとの加入が必要です。経審のW点の社会保険加入状況は、こちらを見ます。

同条第2項には例外があります。元請負人と下請負人が申請し、厚生労働大臣の認可を受けた場合は、その下請負人の請負に係る事業について、下請負人が元請負人とみなされます。この認可を受けた下請は、自社の請負分を自社でかけることになります。認可の有無は、工事ごとに元請に確認します。

単独有期事業と一括有期事業の違い

建設工事は、工事の始まりと終わりが決まっている「有期事業」です。元請は、有期事業の労災保険を次のどちらかでかけます。

元請がかける労災保険の2つの型
型かけ方申告の考え方
単独有期事業工事ごとに保険関係を成立させる成立した日から20日以内に概算保険料を納付する(徴収法第15条第2項)
一括有期事業一定の規模以下の工事を、年度でまとめて一つの事業として扱う(徴収法第7条)次の年度の6月1日から起算して40日以内などに、事業の名称・場所・期間・賃金総額を報告する(施行規則第34条)

どちらになるかは、工事の規模などの要件で決まります。元請の会社が選ぶものではなく、要件に当てはまれば一括有期事業として扱われます。

一括有期事業になる条件

徴収法第7条は、二以上の事業が次の要件に当てはまるとき、その全部を一の事業とみなすと定めています。

  • 事業主が同一人であること
  • それぞれの事業が有期事業であること
  • それぞれの事業の規模が、厚生労働省令で定める規模以下であること
  • それぞれの事業が、他のいずれかの事業の全部または一部と同時に行われること
  • そのほか、厚生労働省令で定める要件に当てはまること

施行規則第6条は、この規模と要件を次のように定めています(令和8年10月20日にe-Govで確認)。

施行規則第6条の規模と要件
項目内容
労働保険料の額その事業の労働保険料に相当する額が160万円未満
請負金額立木の伐採以外の事業では、請負金額が1億8千万円未満
事業の種類労災保険の保険関係が成立している建設の事業で、事業の種類が同じであること
事務の取扱い労働保険料の納付の事務が一つの事務所で取り扱われること

金額は法令の改正で変わることがあります。実際に判断するときは、e-Govの最新の条文か所轄の労働局で確認してください。

この規模を超える工事は、単独有期事業として工事ごとに保険関係を成立させます。下請の会社から見ると、請負金額が大きい現場ほど、元請が単独でかけている可能性が高くなります。ただし、どちらで扱われているかは元請に聞かないと分かりません。

申告の時期の違い

単独有期事業は、保険関係が成立した日から20日以内に概算保険料を納付します。一括有期事業は、工事ごとの納付ではなく、年度の終わりに次の事項を報告書にまとめて提出します(施行規則第34条)。

  • 労働保険番号
  • 事業主の氏名または名称・住所または所在地
  • 事業の名称・行われる場所・期間と、その事業に係る賃金総額

提出期限は、次の保険年度の6月1日から起算して40日以内、または保険関係が消滅した日から起算して50日以内です。報告書は所轄の都道府県労働局歳入徴収官に出します。これらの手続きを行うのは元請です。下請の会社が、自社の分を別に申告することはありません。

下請の事務担当が確かめること

下請の立場で、元請に確認しておくと困らない点を整理します。

  • その工事の労災保険は、元請の保険関係で扱われているか(徴収法第8条第1項の原則どおりか)
  • 徴収法第8条第2項の認可を受けた下請として、自社が事業主になる工事ではないか
  • 自社の従業員が、他社の現場でけがをした場合の連絡先と、元請側の労働保険番号
  • 経営者本人や、雇用されない一人親方の扱い(元請の労災保険の対象になるかは、特別加入の有無などで変わるため、労働基準監督署に確認する)

労災保険の給付に上乗せする法定外の補償は、別の保険で備えます。経審のW1で評価される内容は『経審の法定外労災補償制度』で説明しています。

次に知りたいこと

確認した一次資料

上の2件は、同じ法令の条文ページ(e-Gov法令検索)へのリンクです。条番号で該当の条を開いてください。

まとめ

  1. 建設の事業が数次の請負で行われる場合、労災保険は元請だけが事業主になる(徴収法第8条第1項)。
  2. 認可を受けた下請は、例外として自社が事業主になる(同条第2項)。
  3. 元請は、工事ごとの単独有期事業か、年度でまとめる一括有期事業のどちらかでかける。
  4. 一括有期事業の要件は、労働保険料160万円未満・請負金額1億8千万円未満など(施行規則第6条)。
  5. 下請の事務担当は、元請の労働保険番号と、自社が事業主になる工事がないかを確かめる。

当サイトの内容は一般的な法令の整理です。正式な扱いは所轄の労働局・労働基準監督署の案内が優先します。

よくある質問

下請の労災保険は誰がかけますか?
労働保険徴収法第8条第1項により、建設の事業が数次の請負で行われる場合は、元請負人のみが事業主になります。下請の労働者の労災も、元請の保険関係で扱われます。
単独有期事業と一括有期事業は何が違いますか?
単独有期事業は工事ごとに保険関係を成立させ、成立日から20日以内に概算保険料を納付します。一括有期事業は規模が一定以下の工事を年度でまとめ、事業の期間や賃金総額を報告書で報告します。
一括有期事業になる工事の規模はどのくらいですか?
施行規則第6条では、労働保険料に相当する額が160万円未満で、立木の伐採以外の事業では請負金額が1億8千万円未満とされています。金額は改正されることがあるため、最新の条文で確認します。

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