建設業法の実務

資材高騰の「おそれ情報」の通知と契約変更協議|建設業法第20条の2(令和6年12月13日施行)

契約を結ぶ前に、資材や労務の高騰・不足のおそれを注文者へ通知する決まりと、契約後の変更協議の流れを、国土交通省の資料から整理します。通知する事象、根拠にする資料、通知の方法、誠実に協議しているとみなされない例を確認できます。

おそれ情報の通知・変更協議
編集:建設経営ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

令和6年の建設業法改正で、建設業者は、資材の高騰や不足などで工期や請負代金に影響が出るおそれがあると認めたとき、請負契約を結ぶまでに注文者へ通知する義務を負いました(第20条の2第2項、令和6年12月13日施行)。通知した建設業者は、契約後に実際に事象が起きたとき、注文者へ変更協議を申し出られます。この記事は国土交通省の資料にもとづく制度の整理で、個別の契約の判断ではありません。実際の工事では、契約書と発注者の案内を優先してください。

通知と協議の流れ(国土交通省の資料より)
時期誰が何をするか根拠の条文
契約前受注者が、資材高騰などのおそれを注文者へ通知する(義務)第20条の2第2項
契約時価格変動に基づく請負代金や工事内容の変更方法を、契約書に記載する第19条第1項第8号
契約後通知した事象が発生したら、受注者が変更協議を申し出る第20条の2第3項
協議注文者は、正当な理由がない限り、誠実に協議に応じるよう努める(公共工事の発注者は応じる義務)第20条の2第4項

通知の対象になる事象

国土交通省は、国土交通省令で定める通知の対象を次の2つと説明しています。どちらも、天災などの自然的または人為的な事象により生じるものです。

  • 主要な資機材の供給の不足・遅延、または資機材の価格の高騰。
  • 特定の建設工事の種類における労務の供給の不足、または価格の高騰。

契約の時点でまだ起きていない自然的事象は、事前に予測するのが難しいため、発生の見込みを合理的に説明できる場合を除き、通知が義務づけられる情報とは想定しにくいと同資料に書かれています。通知は「何でも書く」ものではなく、見込みを説明できる事象に限るという整理です。

通知の方法と根拠にする資料

国土交通省の資料は、通知の根拠として、受注者の通常の事業活動で把握できる、一定の客観性を持つ統計資料などを挙げています。例は、国や業界団体の統計資料、報道記事、下請業者や資材業者の記者発表です。

通知は、書面またはメールなどの電磁的方法で、見積書を渡すタイミングなどに行います。期限は契約を締結するまでです。通知には、事象の状況を把握するために必要な情報を添えます。

契約書には、価格変動に基づく請負代金や工事内容の変更方法を書く必要があります。国土交通省の資料は、「契約変更を認めない」契約も、契約書の法定記載事項としては認められないと示しています。

契約後の変更協議と誠実に応じない例

通知をした建設業者は、契約後に通知した事象が起きたとき、契約書の「変更方法」にしたがって、工期や請負代金の変更協議を申し出られます。注文者は、申出に根拠がない場合などの正当な理由がない限り、誠実に応じるよう努めなければなりません。公共工事の発注者には、応じる義務があります。

国土交通省の資料は、誠実に協議に応じていないと思われる例を3つ示しています。

  • 協議の開始自体を、正当な理由なく拒む。
  • 協議の申出のあと、合理的な期間を超えて、あえて開始を遅らせる。
  • 受注者の主張を一方的に否定する、または十分に聞かずに協議を打ち切る。

同資料は、事前の通知がなかったことだけでは、注文者が協議を拒む理由にならないとも書いています。通知は協議を円滑にするための仕組みで、通知しなかった場合に協議の道が閉ざされるわけではありません。

公共工事での運用例(福岡市)

福岡市は、おそれ情報の通知を、全ての建設工事を対象として取り扱っています。落札者は、落札の決定から請負契約の締結までに、市の様式の通知書を提出します。通知の対象となる事象が発生するおそれが認められない場合は、提出は不要です。

同市の案内には、通知書を出していなくても、請負契約の規定にもとづいて受注者から変更協議を申し出られること、通知書を出していないことが受注者に不利に働かないことも書かれています。通知書の様式や提出先は発注者ごとに異なるため、自治体の公式ページで確認します。

契約前に準備する3点

  • 見積りの前に、資材や労務の価格・供給の動きを、公的な統計や報道で確認し、根拠となる資料を保存しておく。
  • 契約書に、価格変動があったときの変更方法の条項があるかを確認する。無ければ、契約の相手と条項の追加を話し合う。
  • 発注者が通知書の様式を定めているか、公告や契約条件で確認する。

下請との契約でも、同じ考え方が当てはまります。元請として下請に見積りを求めるときの注意は、『労務費の基準と見積りの決まり』を参照してください。契約書に書く事項は『建設工事の請負契約書の記載事項』にまとめています。

確認した一次資料

確認日:2026年10月22日。運用や様式は改正されることがあるため、契約前に国土交通省と発注者の最新の案内を確認してください。

次に知りたいこと

まとめ

  • 建設業者は、資材高騰などのおそれを認めたとき、契約を結ぶまでに注文者へ通知する義務がある(第20条の2第2項、令和6年12月13日施行)。
  • 通知の対象は、主要な資機材の不足・遅延・高騰と、特定の工種の労務の不足・高騰。根拠は統計資料や報道などの客観的な資料。
  • 契約書には価格変動に基づく変更方法を書く。通知した事象が起きたら、受注者は変更協議を申し出られる。
  • 注文者は誠実に協議に応じるよう努める。公共工事の発注者は応じる義務があり、事前の通知がないだけでは拒めない。

よくある質問

おそれ情報の通知とは何ですか?
建設業者が、主要な資材の供給の著しい減少や価格の高騰など、工期や請負代金に影響するおそれがあると認めたとき、請負契約を結ぶまでに注文者へ、状況の把握に必要な情報とあわせて知らせることです。建設業法第20条の2第2項で、令和6年12月13日に施行されました。
どんな事象を通知しますか?
国土交通省の資料では、主要な資機材の供給の不足・遅延または価格の高騰と、特定の建設工事の種類における労務の供給の不足または価格の高騰です。契約時にまだ起きていない自然的事象は、発生の見込みを合理的に説明できる場合を除き、通知が義務づけられる情報とは想定しにくいとされています。
通知の根拠には何を使えますか?
国土交通省の資料は、受注者の通常の事業活動で把握できる、一定の客観性を持つ統計資料などを根拠にするとし、国や業界団体の統計資料、報道記事、下請業者や資材業者の記者発表を例に挙げています。通知は書面またはメールなどで、見積書を渡すタイミングなどに行います。
通知しなかった場合、変更協議はできませんか?
国土交通省の資料は、事前の通知がなかったことだけでは、注文者が協議を拒む理由にならないとしています。福岡市の案内も、通知書を出していなくても、請負契約の規定にもとづいて変更協議を申し出られ、出していないことが受注者に不利に働かないと書いています。
注文者は協議に必ず応じなければなりませんか?
民間の注文者は、申出に根拠がない場合などの正当な理由がない限り、誠実に応じるよう努めなければなりません。国土交通省の資料では、公共工事の発注者には応じる義務があるとされています。
誠実に協議に応じていないとされるのはどんな場合ですか?
国土交通省の資料は、協議の開始自体を正当な理由なく拒む、申出のあと合理的な期間を超えて開始を遅らせる、受注者の主張を一方的に否定するか十分に聞かずに打ち切る、の3つを例に挙げています。
契約書に変更方法を書く必要がありますか?
あります。価格等の変動に基づく請負代金や工事内容の変更方法は契約書の法定記載事項で、国土交通省の資料は、契約変更を認めない契約も法定記載事項としては認められないと示しています。

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