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工事の保険を契約前に確認する順番|公共工事標準請負契約約款の火災保険等(第58条)と損害の負担

公共工事の契約で、受注者に求められる工事の保険と、契約保証との違いを説明します。保険がてん補した部分で、損害の負担がどう変わるかも、約款の条文で確かめられます。

国土交通省
編集:建設経営ラボ編集部(合同会社フューチャープロンプト) / 運営方針・出典

公共工事を受注すると、契約書の約款に、工事目的物や工事材料を保険に付す義務が書かれています。これは、発注者に対して契約の履行を保証する「契約保証」とは別の話です。契約のたびに、特記仕様書で保険の指定があるかを見て、保険に入ったら証券を発注者に見せる、という流れになります。ここでは、国土交通省の公共工事標準請負契約約款の条文から、その確認の順番を整理します。保険商品の比較や、どの保険に入るべきかの助言はしません。

要約:約款第58条は、受注者が、工事目的物と工事材料(支給材料を含む)を、設計図書に定めるところにより火災保険、建設工事保険その他の保険に付すと定めています。保険に入ったら、証券を直ちに発注者に提示します。保険でてん補された部分は、約款第28条から第30条の損害の負担の計算から外れます。

工事の保険と契約保証は別のもの

公共工事の契約では、保険に関わる取り決めが2つあります。名前が似ていますが、守るものが違います。

工事の保険と契約保証の違い(公共工事標準請負契約約款の整理)
契約保証(第4条)工事の保険(第58条)
条文の題名契約の保証火災保険等
対象受注者がこの契約を履行すること工事目的物と工事材料(支給材料を含む)
受注者がすること契約の締結と同時に、約款の定める保証のいずれかを付す設計図書に定めるところにより保険に付し、証券を発注者に提示する
保証や保険の種類契約保証金の納付、有価証券等の担保、金融機関等の保証、公共工事履行保証証券、履行保証保険契約の5つを約款第4条第1項が列挙火災保険、建設工事保険その他の保険(これに準ずるものを含む)

契約保証の種類と免除の条件は『公共工事の契約保証の種類と免除の条件』で説明しています。このページは、もう一方の工事の保険を扱います。

約款第58条が受注者に求めていること

第58条は3つの項から成り、受注者の動きは時系列に並んでいます。

  1. 保険に付す(第1項):工事目的物と工事材料(支給材料を含む)などを、設計図書に定めるところにより、火災保険、建設工事保険その他の保険(これに準ずるものを含む)に付します。
  2. 証券を見せる(第2項):保険契約を結んだら、その証券またはこれに代わるものを、直ちに発注者に提示します。
  3. 別の保険に付したとき(第3項):第1項の保険以外の保険に付したときは、直ちにその旨を発注者に通知します。

保険の種類や補償の範囲は、約款では決まっていません。「設計図書に定めるところにより」とあるため、どの保険で、何を対象にするかは、工事ごとの設計図書(特記仕様書など)が基準です。約款は保険会社や商品名を指定していません。

保険があると、損害の負担はどう変わるか

約款は、工事目的物の引渡し前に生じた損害の負担を、損害の原因ごとに定めています。どの条文にも、第58条第1項で付した保険等でてん補された部分は、発注者に請求する額の計算から除く、という書き方が入っています。

損害の負担と保険の関係(約款第28条〜第30条の整理)
条損害の種類原則の負担保険との関係
第28条引渡し前に、工事目的物・工事材料に生じた損害など、工事の施工に関して生じた損害(次の2条の損害を除く)受注者が費用を負担。発注者の責めに帰すべき事由による分は発注者が負担保険等でてん補された部分は、発注者の負担の対象から除く
第29条工事の施工について第三者に及ぼした損害受注者が賠償。発注者の責めに帰すべき事由による分は発注者が負担。通常避けられない騒音・振動・地盤沈下などは発注者が負担保険等でてん補された部分は、発注者の負担の対象から除く(第1項)
第30条引渡し前に、天災などの不可抗力で工事目的物・仮設物・搬入済みの材料や機械器具に生じた損害受注者は直ちに発注者へ通知。確認された損害の合計額のうち、請負代金額の100分の1を超える額を発注者が負担(災害応急対策・災害復旧の工事は全額を発注者が負担)保険等でてん補された部分は、損害の範囲から除く(第2項)

第30条の100分の1を超える額という線は、保険に入っていてもいなくても、損害の確認のあとで計算します。保険でてん補される部分は、先にその損害から除かれます。

この表は約款の標準の書き方です。個別の契約では、約款の条項が修正されていたり、設計図書に追加の基準が書かれていたりします。実際の負担は、手元の契約書と設計図書で確かめてください。

契約前に確認する順番

契約書を受け取ってから保険の手配に動くと、証券の提示が遅れることがあります。約款の流れに沿うと、次の順に確認できます。

  1. 設計図書に保険の指定があるか:特記仕様書などで、保険の種類、対象、保険金額、期間が指定されているかを見ます。指定が見つからないときは、発注機関の担当者に書面で確かめます。
  2. 対象が合っているか:約款の対象は、工事目的物と工事材料(支給材料を含む)などです。仮設物や建設機械器具、第三者への賠償を、設計図書がどう扱っているかも見ます。
  3. 手持ちの保険の確認:すでに会社が入っている保険がある場合は、設計図書の指定を満たすかを、保険証券の内容と照らして見ます。分からない点は保険会社に問い合わせ、足りない分だけを追加で手配します。
  4. 証券を直ちに提示する:保険契約を結んだら、証券またはこれに代わるものを、直ちに発注者に提示します。提示の宛先と方法は、監督員や契約担当に確かめておきます。
  5. 別の保険に付したときの通知:設計図書の保険以外の保険を付けたときは、直ちに発注者へ通知します。
  6. 下請に出す部分:下請に出す工事の保険を、元請と下請のどちらが手配するかは、約款には書かれていません。下請契約と元請の指示で決めます。

どの保険に入るか、保険金額をいくらにするかは、事業の規模や工事の内容によって変わります。加入先の保険会社に確かめてください。このサイトでは個別の助言をしません。

民間工事の場合

この約款は公共工事向けの標準です。民間工事では、契約書の条項そのものを確かめます。保険の取り決めが入っているか、入っていれば誰が加入するのか、損害の負担の線がどこにあるかは、契約ごとに違うからです。契約書の保険や損害の条項を、この表と同じ観点(対象、証券の提示、損害の負担)で見ると、抜けを見つけやすくなります。

次に知りたいこと

確認した一次資料

まとめ

  1. 工事の保険(約款第58条)と契約保証(第4条)は、別の取り決め。
  2. 保険の種類と対象は、設計図書に定めるところによる。約款は商品名を指定しない。
  3. 保険に入ったら、証券を直ちに発注者に提示する。別の保険に付したときも直ちに通知する。
  4. 保険でてん補された部分は、約款第28条から第30条の損害の負担から除かれる。

個別の契約で必要な保険は、契約書と設計図書、発注機関の担当者に確かめてください。約款は改正されることがあるため、契約時点の版も確認してください。評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。

よくある質問

公共工事で、工事の保険に入る必要はありますか?
公共工事標準請負契約約款第58条は、受注者が工事目的物と工事材料(支給材料を含む)を、設計図書に定めるところにより火災保険、建設工事保険その他の保険に付すと定めています。どの保険かは工事ごとの設計図書で確かめます。
工事の保険と契約保証は同じですか?
別のものです。契約保証(約款第4条)は受注者が契約を履行することの保証で、工事の保険(第58条)は工事目的物と工事材料を対象にします。
保険に入ったら、何をすればよいですか?
保険契約を結んだら、その証券またはこれに代わるものを、直ちに発注者に提示します(約款第58条第2項)。設計図書の保険以外の保険に付したときは、直ちにその旨を通知します。
約款は、どの保険会社や商品に入るよう決めていますか?
決めていません。「火災保険、建設工事保険その他の保険(これに準ずるものを含む)」とあるだけで、種類や補償の範囲は設計図書に定めるところによります。
保険に入っていると、損害の負担はどうなりますか?
約款第28条から第30条は、第58条第1項で付した保険等でてん補された部分を、発注者が負担する額の計算から除いています。
不可抗力で工事目的物が壊れたとき、発注者はいくら負担しますか?
約款第30条は、確認された損害の合計額のうち請負代金額の100分の1を超える額を発注者が負担するとしています。災害応急対策・災害復旧の工事は、損害合計額を発注者が負担します。保険でてん補された部分は除きます。

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