建設業のインボイス(適格請求書)と公共工事の請求・支払の事務|記載事項・免税事業者の下請との取引
公共工事の代金請求や下請への支払で、適格請求書(インボイス)をどう扱うかを、国税庁と国土交通省などの公開資料から整理します。請求書の記載事項、免税事業者からの仕入れの経過措置、建設業法上の注意点を示します。税額の計算や申告の助言ではなく、制度の案内です。
国税庁・国土交通省の公開資料の整理請求と支払の事務を担当すると、「請求書に何を書けばインボイスになるのか」「免税事業者の下請に払った分の消費税はどう扱われるのか」「下請に不利な見直しをしてよいのか」の3点が毎年のように出てきます。この記事は、この3点を国税庁の資料と、財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省の共同Q&Aから整理します。公共工事の代金の請求の流れは公共工事の代金の請求と支払で確かめられます。
インボイスの記載事項
国税庁の資料(令和8年5月)によると、インボイスは、税務署長の登録を受けた「インボイス発行事業者」だけが交付できます。書類の名称は問わず、請求書、納品書などでかまいません。記載事項は次の6つです。
- インボイス発行事業者の氏名または名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)と適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
1つの書類だけですべてを満たす必要はありません。請求書と納品書のように、相互の関連が明確な複数の書類を合わせて記載事項を満たすことができます。免税事業者はインボイスを発行できず、発行するには課税事業者になって税務署長の登録を受ける必要があります。
請求する側の確認点
国税庁の資料は、登録した事業者に、買手の求めに応じてインボイスを交付する義務と、写しを保存する義務が生じるとしています。公共工事の請求書の様式や、発注者がインボイスを必要とするかどうかは、確認した資料には書かれていません。発注者が指定する請求書の様式と、契約書・特記仕様書の請求の定めを、発注者に確かめてください。
- 自社の登録番号が、請求書の様式に入っているか。
- 税率ごとの合計額と消費税額の欄があるか。
- 前払金・中間前払金・部分払・完成払の請求ごとに、同じ様式を使うか。請求の種類は公共工事の代金の請求と支払で確認できます。
免税事業者からの仕入れの経過措置
下請や協力会社が免税事業者の場合、その支払は原則として仕入税額控除ができません。ただし経過措置があり、国税庁のQ&Aは、控除できる割合を次のように示しています。
| 期間 | 仕入税額相当額に対する割合 |
|---|---|
| 令和5年10月1日〜令和8年9月30日 | 80% |
| 令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 70% |
| 令和10年10月1日〜令和12年9月30日 | 50% |
| 令和12年10月1日〜令和13年9月30日 | 30% |
適用には、区分記載請求書等と同様の事項(作成者の氏名または名称、取引年月日、取引内容、税率ごとに合計した税込価額、受領者の氏名または名称など)が記載された請求書等と、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨(「80%控除対象」「免」など)を書いた帳簿の保存が要件です。令和8年10月1日以後に開始する課税期間は、一の免税事業者等からの対象となる課税仕入れの合計額(税込み)が1億円を超えると、超えた部分には適用できません。
令和8年10月1日以降の課税仕入れ(免税事業者との取引)は、割合が70%に変わります。工事の支払日と取引日のどちらで割合を判断するかは、国税庁の最新のQ&Aで確かめてください。この記事は税額の計算方法を示すものではなく、個別の判断は税務署や税理士にご確認ください。
下請との取引で守る点
財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省のQ&A(令和4年)は、インボイス制度を理由とした取引条件の見直しについて、売上先の意向で見直す場合、その方法や内容によっては独占禁止法、下請法、建設業法で問題になる可能性があるとしています。
建設業法については、元請負人が自己の取引上の地位を不当に利用して、免税事業者である下請負人と合意することなく下請代金を一方的に減額し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような代金で下請契約を結んだ場合や、契約後に取り決めた下請代金を一方的に減額した場合などで、下請代金が工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たなくなるときは、第19条の3の「不当に低い請負代金の禁止」に違反する行為として問題になる、と整理しています。
- 下請が免税事業者かどうかを確認するのは、控除の計算のためで、代金を下げる理由にはしない。
- 見直しを協議するときは、下請と合意した内容を書面に残す。
- 下請代金の支払期日は下請代金の支払期日で確かめられます。
建設業法の問い合わせ窓口は、同Q&Aの別紙に国土交通省不動産・建設経済局建設業課建設業適正取引推進指導室などが掲載されています。連絡先は最新の案内で確かめてください。
事務担当の確認順
- 自社が適格請求書発行事業者か、登録番号を確かめる。
- 発注者が指定する請求書の様式と、請求の種類ごとの書類を確かめる。
- 下請・協力会社ごとに、登録番号の有無(インボイス発行事業者か)を一覧にする。
- 免税事業者への支払は、経過措置の割合と帳簿の記載を経理担当に伝える。
- 取引条件の見直しをするときは、下請と協議し、合意の内容を書面に残す。
- 資金繰りの組み立ては公共工事の資金繰りと立替額で確認する。
この記事は公開資料の整理で、税務や法律の助言ではありません。実際の取り扱いは、国税庁・国土交通省の案内と、発注者の契約書の定めに従ってください。
確認した一次資料
- 国税庁 インボイス制度 基礎編(令和8年5月)インボイスの記載事項、発行事業者の義務
- 国税庁 インボイスQ&A 免税事業者等からの仕入れに係る経過措置割合の期間、上限額、帳簿・請求書等の要件
- 財務省ほか 免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A(令和4年1月19日・3月8日改正、九州地方整備局掲載)建設業法第19条の3に関する整理
まとめ
- インボイスは登録した事業者だけが交付でき、記載事項は6つ。複数の書類を合わせて満たしてもよい。
- 公共工事の請求書の様式は、発注者の指定を契約書で確かめる。確認した資料には定めがない。
- 免税事業者からの仕入れの控除割合は、令和8年10月1日から70%に変わった。
- 免税事業者であることを理由に下請代金を一方的に下げると、建設業法第19条の3で問題になりうる。
- 見直しは下請と協議し、合意の内容を書面に残す。
評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。
よくある質問
- インボイス(適格請求書)の記載事項は何ですか?
- 国税庁の資料は、発行事業者の氏名または名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した対価の額と適用税率、税率ごとの消費税額等、交付を受ける事業者の氏名または名称の6つとしています。複数の書類を合わせて満たすこともできます。
- 免税事業者の下請への支払は、いつから控除割合が変わりますか?
- 国税庁のQ&Aでは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までが仕入税額相当額の80%、令和8年10月1日から令和10年9月30日までが70%です。割合は課税仕入れを行った時期で判断します。
- 下請が免税事業者であることを理由に代金を下げてもよいですか?
- 共同Q&Aは、元請負人が地位を不当に利用し、合意なく一方的に減額して、免税事業者が負担していた消費税額も払えない代金で契約した場合などで、通常必要と認められる原価に満たなくなるときは、建設業法第19条の3に違反する行為として問題になるとしています。
- 公共工事の請求書の様式はどこで確かめますか?
- 確認した国税庁・国土交通省の資料には公共工事の様式の定めはありません。発注者の契約書・特記仕様書の請求の定めと、発注者の担当部署で確かめてください。
公開日: 2026-10-15
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