一括下請負(丸投げ)の禁止とは|公共工事は全面禁止・実質的関与の5項目・経審の完成工事高への影響
建設業法第22条が禁じる一括下請負の範囲、公共工事では発注者の承諾でも例外にならない点、元請が自ら行うべき「実質的関与」の5項目、違反したときの監督処分と経審の完成工事高への影響を、国土交通省の資料から整理します。
建設業法第22条・入札契約適正化法第14条元請として受けた工事を下請に出すとき、「どこまで出してよいか」は事務担当が必ず確認する点です。建設業法第22条は、請け負った工事を一括して他人に請け負わせること(一括下請負、いわゆる丸投げ)を禁止しています。この記事は、公共工事で何が禁止され、元請が何を自分で行えば一括下請負にならないのかを、国土交通省の資料で整理します。
建設業法第22条が禁じていること
建設業法第22条は、次の2つを禁止しています。
- 第1項:建設業者が、請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせること。
- 第2項:建設業を営む者が、建設業者から、その建設業者が請け負った建設工事を一括して請け負うこと。
第2項は出す側だけでなく受ける側も対象です。国土交通省の資料は、第2項の対象は「建設業を営む者」であり、建設業の許可を受けていない者も含まれるとしています。「いかなる方法をもってするかを問わず」は、契約を分割したり他人の名義を使ったりしていても、実態が一括下請負なら禁止されるという意味です。一括下請負で発注者が期待したものと同程度以上の工事ができた場合でも、発注者の信頼を裏切る点は変わらず、第22条違反になるとされています。
公共工事は発注者の承諾でも例外にならない
第22条第3項は、多数の者が利用する施設・工作物の重要な工事として政令で定めるもの以外の工事で、元請があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、第1項・第2項を適用しないとしています。政令で定めるものは、建設業法施行令第6条の4で、共同住宅を新築する建設工事です。
一方、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入札契約適正化法)第14条は、公共工事については建設業法第22条第3項を適用しないと定めています。そのため、公共工事は発注者が承諾しても例外にならず、全面的に禁止されます。
| 工事の種類 | 一括下請負 | 根拠 |
|---|---|---|
| 公共工事(入札契約適正化法の対象) | 全面禁止。発注者の承諾による例外なし | 入札契約適正化法第14条 |
| 民間の共同住宅の新築工事 | 禁止。発注者の承諾による例外なし | 建設業法第22条第3項、施行令第6条の4 |
| 上記以外の民間工事 | 原則禁止。事前に発注者の書面による承諾があれば適用除外 | 建設業法第22条第3項 |
民間工事で承諾を得る場合も、国土交通省の資料は次の点を挙げています。承諾が必要なのは工事の最初の注文者である発注者で、一括下請負に付する以前に書面で受けます。下請が請け負った工事を一括して再下請に出すときも、必要なのは発注者の書面による承諾で、その下請に注文した元請の承諾ではありません。承諾を得ていても、元請は建設業法上の責任を果たし、工事現場に主任技術者または監理技術者を置く必要があります。
一括下請負に当たる場合
国土交通省の資料は、元請がその下請工事の施工に実質的に関与することなく、次のどちらかに当たるときを一括下請負としています。
- 請け負った工事の全部、またはその主たる部分について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合。
- 請け負った工事の一部分で、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工事について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合。
資料にある具体例は次のとおりです。
- 電気配線の改修工事で、電気工事のすべてを1社に下請に出し、それに伴う内装仕上工事だけを自社または他社が施工する(①の「主たる部分」の例)。
- 戸建住宅10戸の新築を請け負い、そのうち1戸を1社に下請に出す(②の独立して機能する工作物の例)。
- 道路改修2キロメートルを請け負い、そのうち500メートル分を、施工技術上分割する特段の理由がないのに1社に下請に出す(②の例)。
判断は、元請が請け負った工事1件ごとに行い、1件の範囲は原則として請負契約単位です。「主たる部分」に当たるかは、下請に付した工事の質と量から個別に判断するとされています。
実質的関与:元請が自ら行う5項目
「実質的に関与」とは、元請が自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導などを行うことです。発注者から直接工事を請け負った建設業者は、次の5項目をすべて行う必要があると資料に書かれています。
| 項目 | 元請が行う内容(資料の記載) |
|---|---|
| 施工計画の作成 | 請け負った工事全体の施工計画書等の作成、下請の施工要領書等の確認、設計変更等に応じた施工計画書等の修正 |
| 工程管理 | 工事全体の進捗確認、下請間の工程調整 |
| 品質管理 | 工事全体に関する下請からの施工報告の確認、必要に応じた立会確認 |
| 安全管理 | 安全確保のための協議組織の設置・運営、作業場所の巡視など、労働安全衛生法に基づく措置 |
| 技術的指導 | 主任技術者の配置等の法令遵守や職務遂行の確認、現場作業に係る実地の総合的な技術指導 |
資料は、工事現場に主任技術者または監理技術者を置いているだけでは、これらを行ったことにならないとしています。現場に元請との間に直接的かつ恒常的な雇用関係を有する適格な技術者が置かれない場合も、実質的に関与しているとはいえないとされています。
なお、元請が請け負った工事と同一の種類の工事について、単一の業者と下請契約を結ぶ場合は、資料が別に求める事項があります。請け負った範囲の現場作業に係る実地の技術指導、注文者との協議、下請からの協議事項への判断・対応の3つです。具体的な下請の組み方がこれに当たるかは、許可行政庁や発注者に確認してください。
下請の体制を書類で把握する方法は『施工体制台帳と再下請負通知書』、下請代金の支払期日は『下請代金の支払期日』にまとめています。
違反したときの監督処分と経審への影響
建設業法第28条第1項第4号は、第22条第1項・第2項に違反した建設業者に、国土交通大臣または都道府県知事が必要な指示をできるとし、同条第3項は、1年以内の期間を定めて営業の全部または一部の停止を命じられるとしています。国土交通省の資料は、一括下請負の禁止に違反した建設業者には監督処分で厳正に対処し、行為の態様や情状を勘案しつつ、再発防止の観点から原則として営業停止の処分を行うとしています。
公共工事については、一括下請負と疑うに足りる事実があったとき、発注者は、受注者が許可を受けた大臣・知事と、営業が行われる区域を管轄する都道府県知事に、その事実を通知することとされています。
経営事項審査(経審)への影響も資料に書かれています。一括下請負を行った建設業者は、その工事を実質的に行っていると認められないため、経審における完成工事高に、その工事の金額を含めることは認められません。完成工事高は経審のX1の算定の基礎になるため、一括下請負に当たる工事を完成工事高に入れていないかも、決算変更届と経審の前に確かめる点になります。
確認した一次資料
- e-Gov法令検索 建設業法 第22条・第28条一括下請負の禁止、発注者の書面承諾による適用除外、指示と営業停止
- e-Gov法令検索 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律 第14条公共工事には建設業法第22条第3項を適用しない
- e-Gov法令検索 建設業法施行令 第6条の4承諾による適用除外の対象外となる工事は共同住宅の新築
- 国土交通省 別紙2 一括下請負の禁止について一括下請負の範囲、実質的関与の5項目、発注者の承諾、監督処分、完成工事高の扱い
確認日:2026年10月15日(法令はe-Gov法令検索の取得日時点)。国土交通省の資料は通知の別紙で、改正があれば取扱いが変わる可能性があります。
まとめ
- 建設業法第22条は、請け負った工事を一括して他人に請け負わせること(第1項)と、一括して請け負うこと(第2項)の両方を禁止している。
- 公共工事は入札契約適正化法第14条により、発注者の承諾による例外がなく全面禁止。民間の共同住宅の新築も例外なし。
- 工事の全部・主たる部分、または独立して機能する部分を、自らは施工せず一括して出すと一括下請負になる。判断は請負契約1件ごと。
- 元請は施工計画、工程、品質、安全、技術的指導の5項目を自ら行う必要があり、技術者を現場に置くだけでは足りない。
- 違反は原則営業停止の監督処分の対象で、その工事の金額は経審の完成工事高に含められない。
この記事は公開情報の整理で、個別の契約に対する判断や、申請・届出の代行・個別の相談は行いません。具体的な取扱いは、許可行政庁や発注者の案内で確認してください。正式な評点は審査結果が優先します。評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。
よくある質問
- 公共工事で発注者が承諾すれば一括下請負は認められますか?
- 認められません。建設業法第22条第3項は発注者の書面承諾による適用除外を定めますが、入札契約適正化法第14条は公共工事にこの規定を適用しないとしており、公共工事は全面的に禁止されます。
- どんな場合が一括下請負に当たりますか?
- 国土交通省の資料では、元請が実質的に関与せず、請け負った工事の全部またはその主たる部分、あるいは他の部分から独立して機能する部分を、自らは施工せず一括して他の業者に請け負わせる場合です。判断は請負契約1件ごとに行います。
- 実質的に関与とは何をすることですか?
- 元請が自ら、工事全体の施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導を行うことです。国土交通省の資料は、現場に技術者を置くだけでは行ったことにならないとしています。
- 一括下請負をするとどうなりますか?
- 建設業法第28条により指示や1年以内の営業停止の対象になり、国土交通省の資料は原則として営業停止の処分を行うとしています。また、その工事の金額は経営事項審査の完成工事高に含められません。
- 民間工事なら一括下請負は常に承諾で認められますか?
- 共同住宅の新築工事は承諾でも認められません。それ以外の民間工事は、元請があらかじめ発注者の書面による承諾を得れば適用除外になりますが、承諾後も主任技術者または監理技術者を現場に置く必要があります。
公開日: 2026-10-15
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