経審Y点「総資本売上総利益率」の計算|総資本2期平均と3,000万円みなし措置
売上総利益÷総資本(2期平均)×100で求める、Y評点の8指標のうち寄与度2番目(21.4%)の指標です。総資本2期平均が3,000万円に満たないときの3,000万円みなし措置と、評点への影響を実測で示します。
国土交通省の通知・手引き経審(経営事項審査)のY評点(経営状況)は8つの財務指標から求めます。そのうち「総資本売上総利益率」は、関東地方整備局の手引きが示すY評点への寄与度が21.4%で、純支払利息比率(29.9%)に次いで2番目に大きい指標です。手引きの表では「Ⅹ3」と表記されます。総資本が小さい会社では総資本の2期平均が3,000万円に満たないことがあり、この場合は3,000万円とみなして計算する特有の規定があります。この記事では、算式、みなし措置、上限・下限、評点への影響を国土交通省の通知にもとづいて整理します。
総資本売上総利益率の算式
総資本売上総利益率は、会社の総資本に対して、売上総利益(粗利益)をどれだけ稼げているかを示す指標です。手引きの表4は算式を次のように示しています。
通知は、総資本の額を貸借対照表における負債純資産合計の額と定義したうえで、売上総利益の額を審査対象事業年度における売上総利益の額(個人の場合は完成工事総利益とし、兼業事業を併せて営む場合は兼業事業総利益を含む)と定めています。総資本は基準決算1期分ではなく、基準決算と基準決算の直前の審査基準日における総資本の額の平均(2期平均)を使う点が、純支払利息比率や負債回転期間と異なります。
出典: 国土交通省「経営事項審査の事務取扱いについて」(通知)「5 経営状況について(告示第一の二関係)」(3)総資本売上総利益率について、および関東地方整備局「経営事項審査の手引き」別添資料(令和8年7月改正版)表4より
決算書の金額から求める手順
次の金額を例に、算式へ当てはめます(金額はこの記事の説明用に置いたもので、実在の会社のものではありません)。
| 項目 | 金額 | 計算 |
|---|---|---|
| 前期・総資本(負債純資産合計) | 7,600万円 | 総資本2期平均は(7,600万円+8,400万円)÷2=8,000万円 |
| 当期・総資本(負債純資産合計) | 8,400万円 | |
| 売上総利益 | 5,040万円 | 総資本売上総利益率は5,040万円÷8,000万円×100=63.0% |
| 総資本売上総利益率 | 63.0% |
総資本2期平均が3,000万円以上あるため、次章のみなし措置は関係せず、算出した63.0%をそのまま使います(上限63.6%以内)。
総資本2期平均が3,000万円に満たないときのみなし措置
通知は、総資本の2期平均が3,000万円に満たない場合は、3,000万円とみなすと定めています。総資本が小さい会社ほど、この措置の影響を受けます。
次の例で比較します(金額はこの記事の説明用に置いたもので、実在の会社のものではありません)。
| 項目 | 金額・数値 |
|---|---|
| 前期・総資本 | 2,400万円 |
| 当期・総資本 | 2,600万円 |
| 総資本2期平均(実額) | 2,500万円 |
| 総資本2期平均(みなし後) | 3,000万円 |
| 売上総利益 | 1,500万円 |
| 総資本売上総利益率(みなし措置を適用しない場合) | 1,500万円÷2,500万円×100=60.0% |
| 総資本売上総利益率(みなし措置を適用した実際の値) | 1,500万円÷3,000万円×100=50.0% |
同じ売上総利益1,500万円でも、みなし措置により総資本売上総利益率は60.0%から50.0%へ10ポイント下がります。この例でモデルケースのYを8指標モードへ差し替えて実測すると、みなし措置適用後のY評点は720点でした(P点への影響は次章の実測表を参照)。
上限・下限(6.5%〜63.6%)
通知は、算出した数値に上限と下限を定めています。総資本売上総利益率が63.6%を超える場合は63.6%と、6.5%に満たない場合は6.5%とみなされます。
総資本売上総利益率は数値が大きいほど(少ない総資本で多くの粗利益を稼げているほど)評点に有利です。上限の63.6%がもっとも評点に有利な値、下限の6.5%がもっとも不利な値になります。純支払利息比率や負債回転期間とは有利・不利の向きが逆です。
この数値はY評点の8指標一覧の「上限値63.6・下限値6.5」に対応しています。
1ポイントの差が評点に与える影響(実測)
総資本売上総利益率の係数は、経営状況点数(A)の算式でプラス0.0264です。総資本売上総利益率が1ポイント大きくなるとAが0.0264大きくなり、Aは167.3倍されてY評点になります(0.0264×167.3≒4.4)。
次の表は、他の7指標をY点の計算例のまま据え置き、総資本売上総利益率だけを動かしたときの実測です。P点は、モデルケース(完成工事高3億円・技術職員6名など)のYだけを8指標モードに差し替えて求めました。
| 総資本売上総利益率 | 経営状況点数(A) | Y評点 | モデルケースのP点 |
|---|---|---|---|
| 6.5%(下限) | -0.33 | 528点 | 685点 |
| 15.0% | -0.10 | 566点 | 692点 |
| 25.0% | 0.16 | 610点 | 701点 |
| 35.0% | 0.42 | 653点 | 710点 |
| 45.0% | 0.69 | 698点 | 719点 |
| 55.0% | 0.95 | 742点 | 728点 |
| 63.6%(上限) | 1.18 | 780点 | 735点 |
総資本売上総利益率だけで、Y評点は下限側の528点から上限側の780点まで252点、P点は685点から735点まで50点動きます。1ポイントあたりでは、Y評点でおよそ4.4点前後、P点でおよそ0.9点前後の差です。前章のみなし措置の例(60.0%→50.0%)は10ポイントの差にあたり、Y評点でおよそ44点前後動く計算になります。
上限・下限の外側の値を入れても、評点は上限・下限のところで止まります。エンジンでは0.0%を入れても6.5%と同じ528点、75.0%を入れても63.6%と同じ780点です。
事業年度が12か月に満たない場合
通知は、事業年度の変更、商業登記法の規定に基づく組織変更の登記、他の建設業者を吸収合併した場合などの特殊な事由があり、審査対象年の間に開始する事業年度の月数が12か月に満たないときについて、純支払利息比率で使う売上高・純支払利息の額、総資本売上総利益率の売上総利益の額、売上高経常利益率の経常利益の額、営業キャッシュフローの法人税等の額の5項目を、年間平均完成工事高の算定の要領で求めると定めています。この5項目に、総資本売上総利益率の分母である総資本の額は含まれていません。
この特殊な事由を除き、単に審査対象年の間に開始する事業年度の月数が12か月に満たないときは、純支払利息比率と負債回転期間の2項目は最大値を、それ以外の項目は最小値をとるものとして算定すると定められています。総資本売上総利益率は「その他の項目」にあたり、数値が大きいほど有利な指標なので、この場合は最小値=下限側(6.5%)の不利な値で算定されることになります。
まとめ
- 総資本売上総利益率は、売上総利益÷総資本(2期平均)×100。総資本は貸借対照表の負債純資産合計、売上総利益は個人の場合は完成工事総利益(兼業事業総利益を含む)と読み替える。
- 総資本の2期平均が3,000万円に満たない場合は3,000万円とみなす。分母が実際より大きくなる方向にはたらくため、総資本が小さい会社ほど比率は不利側に振れる。
- 63.6%を超えれば63.6%、6.5%に満たなければ6.5%とみなされる。数値が大きいほど評点に有利(純支払利息比率・負債回転期間とは向きが逆)。
- 寄与度は手引き表4で21.4%と、8指標の中で純支払利息比率(29.9%)に次ぐ大きさ。実測では1ポイントの差はY評点でおよそ4.4点前後、P点でおよそ0.9点前後。
- 事業年度が12か月に満たない場合、特殊事由による年間平均算定の対象に総資本の額は含まれない一方、それ以外の理由で12か月未満のときは最小値(下限6.5%、不利な側)をとる。
Y評点全体の8指標と2段階の計算方法は経審のY点(経営状況)とはで解説しています。寄与度がもっとも大きい純支払利息比率は経審Y点「純支払利息比率」の計算、次に大きい負債回転期間は経審Y点「負債回転期間」の計算、自社の数値でP点全体を試算するには経審P点シミュレーターが使えます。
評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。
よくある質問
- 経審の総資本売上総利益率はどうやって計算しますか?
- 売上総利益÷総資本(2期平均)×100で求めます。総資本は貸借対照表の負債純資産合計の額、売上総利益は個人の場合は完成工事総利益(兼業事業がある場合は兼業事業総利益を含む)と読み替えます(国土交通省の通知)。
- 総資本売上総利益率の総資本は基準決算1期分だけですか?
- いいえ。基準決算と、その直前の審査基準日における総資本の額の平均(2期平均)を使います。基準決算1期分だけを使う自己資本対固定資産比率・自己資本比率とは異なります。
- 総資本2期平均が3,000万円に満たない場合はどうなりますか?
- 3,000万円とみなして計算します。分母(総資本)が実際より大きくなる方向にはたらくため、総資本が小さい会社ほど総資本売上総利益率は不利側に振れます(本サイトの実測例では60.0%が50.0%に下がります)。
- 総資本売上総利益率の上限と下限はいくつですか?
- 上限は63.6%、下限は6.5%です。63.6%を超える場合は63.6%、6.5%に満たない場合は6.5%とみなして評点を計算します(通知、手引き表4)。
- 総資本売上総利益率が1ポイント違うと、点数はどのくらい変わりますか?
- 他の7指標をY点の計算例に据え置いた本サイトのエンジン実測では、Y評点でおよそ4.4点前後、モデルケースのP点でおよそ0.9点前後の差です。下限6.5%と上限63.6%の間ではY評点が252点、P点が50点動きます。
- 事業年度が12か月に満たない場合、総資本売上総利益率はどう扱われますか?
- 事業年度の変更・組織変更・吸収合併などの特殊な事由による年間平均算定の対象(売上高・純支払利息・売上総利益・経常利益・法人税等の5項目)に総資本売上総利益率の売上総利益は含まれますが、分母の総資本は含まれていません。それ以外の理由で12か月に満たない場合は、純支払利息比率・負債回転期間とは異なり最小値(下限6.5%、不利な側)をとるものとして算定すると通知が定めています。個別の当てはめは審査行政庁の取扱いで確認してください。
公開日: 2026-09-26
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専門書で詳しく確認したい場合
広告下記書籍の紹介による報酬の有無は、記事の内容に影響しません。制度の背景や申請実務を書籍でまとめて確認したい方向けです。
本ツールは事業者ご自身が入力・利用する試算です(申請の代行・作成支援は行っていません)。個別のご相談は承っておりません。正式な評点は登録経営状況分析機関・審査行政庁の審査結果が優先します。数値は概算であり、実際の申請前に専門家へご確認ください。算定方法・出典・免責
