公共工事の一時中止と増加費用|発注者が止める2つの場合・費用負担・中止が長引いたとき
公共工事で発注者が工事を一時中止させる場合と、そのときの増加費用の扱いを、公共工事標準請負契約約款の第20条を中心に整理します。受注者が代金の不払いで止める場合と、中止が長引いて契約を解除できる場合も、同じ約款から確かめます。
公共工事標準請負契約約款公共工事標準請負契約約款の第20条は、発注者が工事を一時中止させる場合を2つ定めています。受注者の責めに帰せない天災等で施工できないときは、発注者に中止させる義務があります(第1項)。それ以外でも、必要と認めれば中止させることができます(第2項)。中止したときは、工期や請負代金額の変更、工事現場の維持などの増加費用の負担が、第3項で定められています。実際に使う契約書は発注機関ごとに異なるため、契約書の該当条を確かめることが前提です。
発注者が中止させる2つの場合
| 項 | 場合 | 発注者の扱い |
|---|---|---|
| 第1項 | 工事用地等の確保ができないとき、または天災等(暴風、豪雨、洪水、地震、火災、騒乱など)で、受注者の責めに帰せないものにより工事目的物等に損害が生じたり、工事現場の状態が変わったりして、受注者が施工できないと認められるとき | 中止の内容を直ちに受注者に通知して、工事の全部または一部を一時中止させなければならない |
| 第2項 | 第1項のほか、発注者が必要があると認めるとき | 中止の内容を受注者に通知して、工事の全部または一部を一時中止させることができる |
どちらも、発注者から受注者への通知が出発点です。中止の範囲は、全部のこともあれば一部のこともあります。
約款は、天災等を「受注者の責めに帰すことができないもの」に限っています。受注者の施工の不備で現場に損害が出た場合は、第1項の場面ではありません。
中止したときの増加費用と工期
第20条第3項は、発注者が前二項で工事を中止させた場合の扱いを、次のように定めています。
- 必要があると認められるときは、工期または請負代金額を変更する
- 受注者が工事の続行に備えて現場を維持したり、労働者や建設機械器具などを保持したりする費用(一時中止に伴う増加費用)を必要としたとき、必要な費用を負担する
- 受注者に損害を及ぼしたときも、必要な費用を負担する
どの費用が「必要」と認められるかは、約款の条文だけでは決まりません。現場の維持にかかった人件費や機械の保持費など、中止に伴って実際に増えた費用を、発注者と確かめて決めます。
工期の変更は、発注者と受注者の協議で定めます。協議開始の日から契約書で決めた日数(約款のひな形では〇日と空欄)以内に協議が整わないときは、発注者が定めて受注者に通知します(第24条第1項)。請負代金額の変更は、内訳書の数量や施工条件が変わった場合などは変更時の価格を基礎に協議し、その他の場合は内訳書の単価を基礎に定めます(第25条第1項)。協議が整わなかったことを理由に、発注者が受注者を不利益に扱ってはならない、とも書かれています(第24条第3項、第25条第2項)。
工期を延ばす場面全般は『設計変更・工期延長の協議』、契約書で事前に見る条項は『公共工事標準請負契約約款の読み方』で扱っています。
受注者が止める場合と、中止が長引いたとき
止めるのは発注者だけではありません。第44条第1項は、発注者が前払金などの支払いを遅らせ、相当の期間を定めて請求しても払わないとき、受注者が工事の全部または一部を一時中止できると定めています。このときは、理由を明示した書面で、直ちに発注者へ通知します。
この場合も、発注者は必要があると認められるときに、工期や請負代金額の変更、または増加費用の負担をします(第44条第2項)。
| 場合 | 約款の書き方 |
|---|---|
| 第20条による中止期間が長い | 中止期間が「工期の十分の〇」(その〇が〇月を超えるときは〇月)を超えたとき、受注者は直ちに契約を解除できる |
| 中止が工事の一部だけ | その一部を除いた他の部分の工事が完了した後、〇月を過ぎても中止が解除されないとき |
〇の部分は約款のひな形では空欄です。実際の割合と月数は、契約書で確かめます。ただし、解除の原因が受注者の責めに帰すべき事由にあるときは、受注者は解除できません(第53条)。
臨機の措置との違い
災害防止のために現場で急いでとる措置は、第27条の「臨機の措置」で、一時中止とは別の規定です。受注者は、必要があるとき臨機の措置をとり、内容を監督員に直ちに通知します。措置に要した費用のうち、受注者が請負代金額の範囲で負担するのが適当でない部分は、発注者が負担します(第27条第4項)。
| 項目 | 一時中止(第20条) | 臨機の措置(第27条) |
|---|---|---|
| 内容 | 工事の施工そのものを止める | 災害防止などのため、現場でとる措置 |
| 決める人 | 発注者が通知して中止させる | 受注者がとる。監督員が請求することもある |
| 費用 | 必要な増加費用を発注者が負担(第3項) | 受注者が負担するのが適当でない部分を発注者が負担(第4項) |
確認した一次資料
- 中央建設業審議会 公共工事標準請負契約約款(令和7年12月2日改正まで記載)第20条(工事の中止)、第24条・第25条(工期・請負代金額の変更方法)、第27条(臨機の措置)、第44条(前払金等の不払に対する工事中止)、第52条・第53条(受注者の解除権)
一次資料の確認日: 2026-10-20。条文は保存した約款の本文で照合しました。個々の工事の契約書は、発注機関の約款や特記事項で内容が異なる場合があります。
まとめ
- 発注者が工事を中止させるのは、受注者の責めに帰せない天災等などで施工できないとき(義務)と、必要と認めるとき(できる)の2つ。
- 中止させたときは、必要があると認められる場合に、工期・請負代金額の変更や、現場維持などの増加費用の負担が行われる。
- 発注者が前払金などを払わないときは、受注者が書面で通知して一時中止できる。
- 中止が長引くと、契約書で定めた割合や月数を超えたときに受注者が解除できる。割合と月数は契約書で確かめる。
次に知りたいことは、工期の延長なら設計変更・工期延長の協議、契約書の見るところなら公共工事標準請負契約約款の読み方、施工中の書面なら工事打合せ簿の使い分けで確認できます。
評点表・算式の転記元は一次資料・出典一覧で確認できます。
よくある質問
- 公共工事で発注者が工事を一時中止させるのは、どんな場合ですか?
- 公共工事標準請負契約約款の第20条は、2つの場合を定めています。工事用地等の確保ができない、または受注者の責めに帰せない天災等で施工できないと認められるときは、発注者が中止させなければなりません(第1項)。それ以外でも、必要があると認めるときは中止させることができます(第2項)。
- 工事が一時中止になったとき、増加費用は発注者が払ってくれますか?
- 約款第20条第3項は、必要があると認められるときは、工期や請負代金額を変更し、受注者が現場を維持したり労働者や建設機械器具などを保持したりする増加費用を必要としたときは、必要な費用を発注者が負担すると定めています。自動的に全額が支払われる書き方ではないため、増えた費用を記録して発注者と確かめます。
- 発注者が代金を払わないとき、受注者が工事を止めてもよいですか?
- 約款第44条第1項は、発注者が前払金などの支払いを遅らせ、相当の期間を定めて請求しても払わないとき、受注者が工事の全部または一部を一時中止できると定めています。理由を明示した書面で、直ちに発注者へ通知します。
- 一時中止が長引いたとき、契約を解除できますか?
- 約款第52条第2号は、第20条による中止期間が工期の十分の〇(その〇が〇月を超えるときは〇月)を超えたとき、受注者が直ちに契約を解除できると定めています。〇の部分は約款のひな形では空欄のため、契約書で確かめます。受注者の責めに帰すべき事由による場合は解除できません(第53条)。
- 一時中止と臨機の措置は、どう違いますか?
- 一時中止(第20条)は、発注者が通知して工事の施工を止めるものです。臨機の措置(第27条)は、災害防止などのため必要があるときに受注者が現場でとる措置で、費用のうち受注者が負担するのが適当でない部分を発注者が負担します(第27条第4項)。
公開日: 2026-10-20
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